2020年の高大接続改革(入試改革)は頓挫しましたが、この数年間、福岡県立高校の入試でも文章による解答を求める出題、文章を的確に読めないと解けない問題が増えてきています。
そして、これは全国的な傾向でもありますし、大学入試のためというよりも、社会で求められるスキルとして「書き言葉による入出力」が求められてきている結果だと考えるべきでしょう。
これまでも“学力の基本は国語にあり!”ということは、誰しも認めるところでした。そして、これからますます「国語力」抜きにして学力を語ることができない時代になってきます。
逆に、誤解を怖れずに言ってしまえば、小学校時代は、国語力(語彙力/読解力/作文力)さえケアできていれば、わざわざ塾に通わせて無駄な「勉強技術」とか「知識」なんてものを身につけさせる必要はまったくありません。
むしろ、そういうベースとなる部分を置き去りにして、勉強技術を仕込むのに精を出しすぎると後で子どもが苦労することになります。
なぜか?
高校受験にせよ、大学受験にせよ、社会人での実務にせよ、知識やテクニックは、比較的短期間で伸ばすことが可能です。しかし、読解力や作文力・語彙力を中心とした国語力は一朝一夕に身につかず、成績も伸びないからです。
しかも残念ながら、今の学校教育、私塾の教育のいずれも国語力を伸ばすメソッドがほとんどありません。
受験が射程範囲に見えてきて「大事なのは読書習慣です」とか、「最終的には言葉のセンスです」とか、救いのないアドバイスをされて撃沈するパターンもしばしば見られます。
今も昔も、保護者の方からはもちろん、塾の先生方からも、はたまた塾に学習システムを入れているASP本部の方からも、「切実な問題」として相談されるのは「国語指導」の方法論です。
そういうわけで、ことのばで実際に指導して成果の上がっている方法を、
もちろん、私もまだ仮説段階ですし、学術的な研究による裏付けが追いついていないのですが、現段階で手応えのあった(実際に成果が上がった)やり方を「暫定的なまとめ」としてご紹介します。
現状と目指すものによって、やるべきことは様々ですが、どれも「毎日30分」を目途に取り組ませるといいですよ。(^^*
「国語力」という言葉の定義
究極的には「文章を読んで、相手の意図を理解し、それに対して求められるリアクションを言葉もしくは行動で返すことができる力」です。
文部科学省の定義に従えば、その中核にあるのは
考える力,感じる力,想像する力,表す力から成る,言語を中心とした情報を処理・操作する領域
です。
これが実際には「読む」「聞く」という入力と、「書く」「話す」という処理・出力としてとらえられ、学習の現場で語られることになります。
さらに、入力のステップで必要になるのは、
- I-1.語彙力(言葉、漢字)
- I-2.文法・語法といったミクロレベルの読解力(文・文章を理解する力)
- I-3.文章全体の流れや主張など、マクロレベルの読解力(文章を理解する力)
といった要素であり、処理・出力のステップで必要になるのは、
- O-1.論理的思考力(分析力,論理構築力など)、感性・想像力といった理解力
- O-2.伝わる論理と表現を選び、言葉・文字として表現する文章表現力
といったものです。
学習のステップとしては、
- 細かな言葉のつながりをつかむ読解トレーニングをする。【I-2】
- 国語のテキストレベルの短い文章を分析的に読むトレーニングをおこなう。【I-3】
- 並行して幅広いジャンルの本を、たくさん読ませる。【I-3, I-1】
- 論理思考、論理的文章作法(レトリック)を学び、パターンで書く練習をおこなう。【O-2】
- 様々な種類の長文読解問題に取り組み、総合的なトレーニングをおこなう。【O-1】
というステップを踏むと、国語の成績は上がりやすいのです。
とりわけ、小中学校あるいは高校くらいまでなら、徹底的に1と2をおこなうことで国語の成績は簡単に上がります。というのは、結局、語句の係りと受けなどのミクロレベルの読解がスムーズにいかないことが、文章全体の理解(マクロレベルの理解)を阻害する大きな要因であり、そこさえスムーズにいけば、教科書レベルの短文の理解はそれほど難しくないのです。
学校や塾は、この1-4のステップを完全にスルーして、いきなり5に行ってしまうので、なかなか成績が上がりません。もちろん、そのステップを追ったとしても、単に【問題演習⇒答え合わせ】だけを反復し、「分かるようになる過程」をスルーしてしまえば同じです。
というわけで、このことを念頭に置きつつ国語力、国語の成績(点数)アップのための学習法をご紹介しましょう!
超短期的な「国語の定期テストの点数」の上げ方
とりあえず、「国語が苦手」という生徒の点数を短期間で手軽にアップさせるのは意外と簡単です。
国語に苦手意識を持っている生徒は、その苦手意識ゆえ、そして「国語って勉強のやり方が分からない」という思い込みもあって、あまり勉強をせずに試験に臨んでいることが多いからです。
私が国語指導で必ずさせるのは、次の3つのみ。でも、これだけで定期考査の点数が20-30点くらいは簡単に上がります。
国語のテキストの音読
音読の回数
国語が苦手な子は、だいたい教科書を読んでいません。だから、それをケアするだけで成績が上がります。
何回くらい読ませるのか? ── 何回でも、一度も間違えず、スムーズに、抑揚を付けて読めるようになるまで。
文章が数ページを超える場合には、3, 4ページ程度ずつ区切って練習してもいいでしょう。
ちなみに、これは読解力アップに効果が認められたワークでもあります。
音読ワーク中の作業
3回読んだあたりで、接続語と指示語を丸で囲ませます。その上で音読続行。ただし、接続語の前後の文意のつながり、転換などを意識することと、指示語が指している言葉や表現を意識させて。
ちなみに、この作業は上記の研究とは無関係ですが、米国の研究者がプロデュースする教材(“Microcomprehension in Amplify Reading”)をヒントにしています。
漢字のトレーニング
これはまぁ基本ですね。ただ、正しいやり方でやらないと時間が無駄になります。
一連の定期テスト対策としておこなう場合は、音読を3回くらいこなした後で取り組んだ方が楽にこなせます。
漢字の学習法についてはこちらの記事で丁寧に解説していますので、そちらを参考にしてください。
学校指定のワークを使った読解の演習
国語の試験で問われる読解力というのは、かなりのレベルで「技術」として学ぶことができます。それを、学校の(試験範囲に指定されている)ワークの問題を使っておこないます。
文章の理解は、ここまでのワークでできていますので、「設問で問われていること」を正しく理解し、それにふさわしい解答を導くトレーニングに集中できます。
ここで重要なことは、答えを単純丸暗記するのではなく、解き方とそのポイントを理解させること。
だから最初は、スムーズに解けない問題があれば、解説を読みながら「なるほど、だからここを選ぶのか!」という具合に、設問と解説を照らし合わせつつ答えを記入するというくらいでOKなのです。
2回目以降は、解き方のポイントを思い出しながら、答えを探し出し、求められるフォーマットで解答する練習をします。
合計で3-4回繰り返して、すべての問題を躊躇せず正答できるようになれば終了です。
もし、お子さん、生徒さんがどうしても正答にたどり着けないようなら、問題への取り組み方に工夫が必要かも知れません。こちらの記事を参考にしてみてください。
ちなみに読解問題を解く技術は、こちらで学ばせましょう。お薦めですよ
☆ドラえもんの国語おもしろ攻略 読解力がつく
長期的に国語力を上げたい場合
自由自在に読んで書けるようにしたいと思ったら、やはり長期のスパンで考えなければなりません。
小学校3-4年生が始め時です!
とことん本を読ませる
量をこなせばいいというわけではありません。ジャンルに幅を持たせること(小説、名作、歴史、科学、芸術、伝記など)、その子の読書力から少しだけ背伸びをするようなレベルの本を読ませることが重要です。
小学校の4年生になったら集中力アップトレーニングを兼ねて速読トレーニングをさせると、ストレスが減って読書量を飛躍的に増やすことができます。ことのば式の、速読と読書量の増やさせ方については、こちらの書籍をどうぞ。
文章の型、表現の基礎力を強化する
読書と並行して、あるいは3ヶ月ほど本を読んできた後に、文章の型、表現の型を学ばせるためのワークをさせましょう。
いわゆる読解演習の問題集に取り組んでも、結局のところ「読み方」ではなく「読んだ結果」ばかりを試すことになりますので、あまりお勧めしません。
ことのばで使っている教材はこちら。
☆ふくしま式「本当の国語力」が身につく問題集〔小学生版〕
思考力・表現力を強化する
作文力もスポーツと同様、やり方を理解しながら、後は体当たりで量をこなすことで確実にレベルアップが可能です。
下に紹介する「ふくしま式」は、取り組ませ方に一定の配慮が必要ですし、バリエーションをどう作るかという指導も必要ですが、ロジカルな文章の基本パターンを反復練習でマスターさせることが可能です。中学生にもお勧めです!
中期(3-6ヶ月)で国語力の底上げをしたい場合
なんだか短期・長期・中期という区分がばからしく思えますが、要するに「短期ほどターゲットが明確ではなく、長期ほどじっくり取り組む余裕がない(例えば、もう中学2年生になっている!とか)場合」という感じでとらえてください。
3ヶ月程度かけて、先生の話を十分に理解し、吸収できるだけの力を身につけさせたいとか、文章を咀嚼して吸収できるだけの力を付けさせたい、とか。
もちろん、上記の「短期」や「長期」と合わせ技で取り組めると、より効果的です。
言葉の基本トレーニングに取り組ませる
主語と述語、修飾語と被修飾語、係りと受けなどミクロレベルの言葉のつながりを分析的につかむ練習は、中期・長期で考えるなら必須です。
これは完全にことのばオリジナル教材です。このトレーニングを徹底的におこなうことで、国語力、読書力が格段にレベルアップします。
取り組ませ方
1日1ページずつ、動画の解説教材をナビゲーターとして取り組ませてください。絶対に雑にやっつけないように、丁寧に取り組ませたいところです。
名作の朗読を聞かせる
本を読むのが苦手なお子さんとか、「耳からの方が入りやすいかも」という場合にお薦めなのがこちら。
ウォークマンに文学作品の朗読をコピーして、ちょっと早め(1.5倍速から1.75倍速程度)のスピードで再生します。
こちらの記事に紹介されている音声は、芥川龍之介作『河童』の全編を1.7倍速に加工したものです。
早めのスピードにすると集中力が必要になりますし、脳(前頭前野)が活性化しますので、言葉をアタマにインストールするのには有効だと考えられます。(あくまで仮説)
ちなみに文学作品の朗読はこちらで無料で手に入ります。ありがたく活用させてもらいましょう。
あえて「ウォークマン」と名指しをしたのは、再生スピードのコントロールができること、スマホと違って気を散らす要素がないことという2つの条件が揃っているからです。
まとめ
ということで、国語力を高め、国語の成績を上げるためにやるべきことをいくつか紹介してみました。
ちなみに、ことのばの子ども速読講座・読書講座では、これらのことをその子の課題に応じてアレンジしながら取り組ませています。そして、長期的に考えれば、やはり「読書にどう取り組ませるか」をメインに考えるべきだと考えています。
ことのばでの数値目標は「年間150冊」。
とはいえ、もともと読書が苦手な子であれば、そう簡単に実現できませんので、「最初は週1冊、慣れてきたら週2冊」くらいを目標に、少しずつ読書の時間・量を増やしていけるよう導いています。
読書の量を体験させながら、同時に上記で紹介した言葉を緻密に体験させる練習を「車の両輪」と思って取り組ませるようにしてみてください。
半年もすれば「国語は得意教科!」といえるようになっているはずですよ。(^^)