これで定期考査も入試も大丈夫!社会科の正しい勉強法

社会科を「暗記教科だ!」なんていう人は、もういないかと思いきや、世間的にはまだまだ暗記教科扱いのようで…

まぁ、暗記教科か否かはともかく、重要な用語を理解して記憶しないと始まらないものであることは確か。

まずは、その正しい勉強の仕方を理解して、効率よく得点をアップしちゃいましょう!

目次

あなたは、間違った勉強法をしていない?

寺田

正しい勉強法を知る前に、今のあなたの勉強法を点検してみましょう。

日本の学校教育は、前近代的な根性論がまかり通っていて、力になったかどうかより、「がんばっているように見えるかどうか」が重視されている節があります。これは、学習者からすると、「がんばっているのに成果が出ない」という最悪な結果を招き、学習へのモチベーションがダダ下がりになりかねません。

もし、あなたが次に挙げる勉強法をつかっているなら、後で紹介するやり方に変えるだけで成績アップしちゃいますよ…。

  • 難しい言葉、憶えにくい言葉は、何度も紙に書いて憶える。
  • 難しい言葉、憶えにくい言葉は、何度も声に出して憶える。
  • 教科書の大事な部分に蛍光ペンなどで線を引く。
  • 授業中に先生が黒板に書いていることを、必死で書き写す。

こういう勉強法は、「勉強した気分」は得やすいのですが、理解して記憶するという観点からすると、ちょっと残念な勉強法なのです。

何度も連続して書くのはなぜ無駄か?

実は目で見ている言葉を書き写す作業は、単なる手の運動でしかなく、記憶を強くする効果は期待できません。

これは「何度も声に出す」のも同じ。
時々、「五感(というか目と口と耳)を使っているので効果的」という、もっともらしい話を耳にしますが、心理学研究などでそれが効果的だとする結果を見たことがありません。(私が知らないだけかも知れませんので、ご存じの方はお知らせください!)

憶えるべき言葉が目に入っている限り、脳はそれを憶えようとしません。そして、見て書く作業は脳に負荷がかかりません。脳みそに負荷がかからない作業は記憶に残らないのです。

難しい言葉や漢字の構成を確認するために書くのであれば(同じように、言葉の響きが難しかったり馴染みのないものだったりして、それを口に出すことも!)分かりますが、そうでない言葉は「想い出す練習」をしない限り、しかも一定時間を空けて想い出すようにしない限り記憶には定着しないと考えるのが正解です。

教科書にマーカーを引くのは、なぜダメか?

教科書にマーカーを引く作業に学習効果がないということではありません。テキストを読みながら、何が大切かを考えることには意味があります。ただ、

  1. それが記憶に定着することはない
    ⇒マーカーを引いて注意を向けた部分は、勉強直後であれば想い出しやすいのですが、時間が経てば忘れます。
  2. マーカーを引かなかった部分の学習効果が下がる
    ⇒言葉の断片(用語・フレーズなど)に意識が向いてしまい、全体の流れやロジックが壊れてしまいます。

昭和の時代の短答式の、用語の正しい記憶を問う問題なら、これでよかったかも知れません。
しかし、平成の後半からは文章で記述させる問題も増え、言葉の意味、言葉の使われる文脈を正しく理解していないと答えられないようになっています。

そこには到底対応できません。

正しい勉強法ってどんなのだろう?

次に「正しい勉強法の原理」を知っておきましょう。何事も原理を理解した上で、具体的な方法を学ぶことが重要です。

押さえておくべき学習の原理

原理1.理解:ストーリーとして十分に理解すべし

中学生くん

社会科って、重要語句と数字を憶えれば点が取れますよね?

そう思ってしまうかも知れませんね。
実際、中学生に話を聞くと、「社会の教科書を2度以上読む人」をほとんど見かけません。ですが、残念ながら、単語や数字のような断片的な情報は記憶に残りづらいものですし、そもそも「●●について説明しなさい」という問題に対処できません。

社会科って、自分の社会につながる歴史(時間の流れ)と、自分の生活と結びついている(支え合っている)世界を知ることで、よりよい社会を作るための教科です。
重要そうな言葉(例えば、テキストのゴシック体部分など)を単純暗記で頭に入れても、社会の理解にはなりませんし、もちろん記述式の問題は解けません。

社会科学習の基本は「教科書に書かれていることを十分に理解すること」から始まるものと理解し、教科書の文章を丁寧に何度も読みましょう。何度も読むこと。内容が十分に腑に落ちて分かったと言えるまで読むこと。
何度も読んでいくうちに、徐々に前後の関係とか、ストーリー的なつながりとか、いわゆる「文脈」と呼ばれるものが、自分の中に入ってくるものです。

原理2.理解:既知と未知を結びつけるべし

記憶というのは、あなたの中にすでにある知識(既有知識)と結びつくことで、あなたの知識になります。逆に、まったく既有知識と無関係に単語や概念を単純暗記しようとすると、恐ろしく大変ですし、すぐに忘れてしまいます。

もちろん、小中学校での社会科で新しい単元を学ぶ場合、基本的に「未知」の話。
ですが、まったく何も知らない話は少ないはずなのです。

  • ニュースで見たことがある。
  • 小学校の社会で出てきた。
  • 漫画で読んだ。
  • 地理で学んだ。

などなど…

何でもいいので、「既知」の情報と結びつけて理解する工夫をしましょう。

原理3.理解:分かると分からないを区別すべし

教科書であれ参考書であれ、新出の用語(人名や事件名など)でない限り、それほど難しい概念や用語は使われません。
だから、つい教科書を読むと「分かった気がする」で流してしまいがちです。

  • 教科書を読んで、説明の意味は分からないけど、腑に落ちて「分からない」と感じたこと。
  • テスト問題を解いてみて、問われてみると「分からない」と感じたこと。

そういう、自分の「分からない」を発見することはとても重要です。こういう自分の理解の状態を理解する能力をメタ認知的能力と呼びますが、この能力こそが、最終的な学力を決めると考えられるからです。

知らなかったことは、理解して憶えれば問題がなくなりますが、「分からない」ことは、分かるように努力しなければなりません。
特に公民の政治・経済の原理などは、抽象的過ぎてよく分からない話も多いはずです。知らない言葉がなかったからといって安心せず、「これっていったいどういうこと?」といちいち確認する癖をつけたいところです。

原理4.記憶:何度も繰り返し想い出そう!

日本の教育では、記憶のための勉強法として都市伝説的な方法が重視されます。
これについては冒頭で紹介したとおりです。

そして、正しい記憶学習というのは、次のような要素を採用する必要があります。

  • 想い出した回数で強くなる。ただし、間をあけず連続して想い出したものは「1回」と同じ。
  • 何度か想い出す場合、1回ごとの間隔は5分以上あける。
  • 少なくとも数回は、正しく想い出せる状態が必要。
  • 想い出した後に、正解を確認して「なるほど!」という状態を創ると効果的。
  • さらに数日以上、間をあけて想い出す作業ができると、さらに記憶が強くなる。

このような方法を上手に組み込んでこそ、労力を最小限にしながらも効果の高い学習になるのです。

原理4.積み上げ:[基礎+基本]⇒標準⇒応用の順に1つ1つ完成させよう

これはあらゆる技能の修得に共通するステップといっていいでしょう。いきなり過去問とか、テスト対策プリントから取り組まないこと。
教科書を十分に理解したら、短答式の問題(問題集の「基礎問題」など)に取り組み、それが終わったら基本問題へ・・・という具合です。

ただし、1つポイントがあって、ある単元の基礎問題(短答式問題)を一通り終えたら、そのまま基本問題に進み、教科書レベルのストーリー、文脈の中でどのような問いが出されるのかを体験しておきたいところです。基礎から基本までは、ある単元を一気にやります。これを一応、ブロック型トレーニングと呼んでおきます。
それに対して、標準問題、応用問題は、1つの単元について一気に進めず、標準問題について試験範囲の単元全体をすべてこなし、その後に応用問題も同様にすべてこなす、というパターンがお薦めです。

一気にやらないのは、「直前に学んだ知識が記憶に残っているタイミングでの学習は負荷が小さくなり、学習効果が低くなる可能性がある」からです。

原理5.ペース:時間をおいて取り組もう!

原理4にも紹介したことですが、一気に勉強を進めようとしないこと。
反復することが重要であることは確かですが、記憶の強化のためには、数日以上の間をあけて取り組み、壊れかけた(忘れかけた)記憶を再構築するような作業が必要なのです。
なので、用語や語句を暗記する段階では5分以上の間隔を開けて反復する必要がありますし、問題集のやり直し(間違った問題のやり直し)は数日ほどあけた方がいいのです。

具体的な学習の方法を知ろう!

では、ここからは具体的な取り組み方の解説です。
ここで解説する学習メソッドは「Uプロセス学習」理論と呼ぶものです。
あらゆる学習、練習はすべて、下の図に示されるUのプロセスをたどって成就していくものと考えられます。

図の左側が入力のフェーズ、右側が出力のフェーズを表しており、上半分が意識的な処理、下半分が無心の取り組みを表しています。
具体的な作業を当てはめると、以下の図のようになります。

これをさらに詳しく見ていきましょう。

1.概観のフェーズ:意識的な入力作業

学習全体のとっかかりです。予習段階といういい方もできますし、小中学校の学習であれば「授業を受ける」のがここかも知れません。
最近の反転学習は、これを予習として取り組ませようというわけですね。

具体的な取り組み

授業を受けた週末に、その週の範囲をまとめて学習する。
教科書をゆっくり黙読しながら、暗記したいところをチェックペンで消していく。
不明な部分があれば先生に質問して解消しておく。

取り組みのポイント

  • 学習内容を確認すことが重要。全体を軽く流す感覚で問題なし。
  • 分からないことを、分かろうとする必要はない。
  • 自分の知っていることと結びつけられれば結びつける。
  • 知らないこと(初めて学ぶこと)や、分からないと感じたことを確認する。

補足

授業中のノートのとり方も超大事です。
スマホでパシャッとやるのはダメなのかという議論はありますが、そもそも、先生が書いた黒板の文字を書き取るだけでは何の学習効果もありません。そこが議論にならないのが、日本らしい精神論・根性論です。
これについては、以下の2つの記事も参考にどうぞ。

2.精緻化のフェーズ:丁寧な反復入力

丁寧に何度も教科書や資料を読み直し、緻密な理解、ストーリーとして(つまり断片的な用語の暗記ではなく)記憶していきます。

具体的な取り組み

まずは何度か黙読します。音読したとき、つっかからずスムーズに読めたらOKです。
その後、チェックペンで消した箇所を思い出しながら教科書を黙読します。憶えていなくても、想い出そうと努力をする必要はありません(1秒だけ「なんだっけ?」と考える)。すぐにチェックシートをずらして言葉を確認して、そのまま読み進めます。

すべてチェックシートで隠した状態で、スムーズに読めるようになったら終了です。いったん、その学習を止めて、他の教科に移り、他の教科の学習を終えた後に(後日でもOK)、今、読んだ内容を、教科書を読まずに(参照せずに)ノートに整理しながら書き出していきます。

ノートは必ずしも綺麗に書く必要はありませんが、内容を整理するつもりで書いてください。そのためにも、模範となるノートまとめの方法を知っておくといいですね。
ことのばでは、こちらのテキストを渡して、「どのようにまとめたら、内容が理解しやすいか」を学ばせています。

取り組みのポイント

  • チェックペンで消した言葉を想い出す作業は、フェーズとしては3番目の反復出力に相当するものなのですが、試験範囲がそれほど多くない学習では、②の反復入力と合体させて問題ありません。
  • ノート作りに慣れてきたら、そのノートを「試験対策・マイ社会科テキスト」にしてしまって、問題集を解いて新たに知ったことや、理解が深まったことなどを色ペンを使って書き足すようにするといいですね!

3.体当たり的演習のフェーズ:スピード重視の反復出力

上記、チェックペンも本来ここに入る作業です。
ポイントは正解を導くために問題を解くのではなく、学んだはずのことを想い出しやすくする回路作りのためにやるということ。
なので、思い出せないことを、一生懸命に「なんだっけ…?」と想い出す必要はありません。時間の無駄ですし、学習効果が下がります。
一生懸命に思い出そうとすることが、学習効果を下げる理由はこちらの記事をどうぞ。

具体的な取り組み

ことのばでは、こちらの問題集を使っています。が、実際、どこの出版社のものでも大差はありません。

こういった問題集の「基礎・基本」レベルの問題(基本的な用語(人名・年代・地名など)を問う問題)や、一問一答的な問題集をスピーディーにこなします。
1ページ毎に答え合わせをして、間違えていたり、思い出せていなかったものにはチェックを入れた上で、付箋を貼っておきましょう。これは後で再テストをするためです。

間違えた問題と思い出せなかった問題は、答え合わせの時に、該当箇所のノートやテキストで丁寧に学習し直し、答えと問題のつながり(関係)を理解してください。
その上で、必ずその日のうちに(少し時間をおいて)再テストしましょう。この「思い出した後に、再確認する」ことは脳科学的に見て、記憶を強くする上で非常に重要な作業と考えられています。

基礎・基本の問題が終わったら、標準レベルの問題で同じように取り組みます。
時間をかけて考え込まず、とにかく想い出す回数を増やすことと、様々なストーリー(問われ方)を読み、体験することを重視します。標準問題で知らないことや、「こう考えるのか!」という発見があれば、まとめノートに書き足しておきましょう!

取り組みのポイント

  • とにかくスピード重視です。ただし、分からない問題、思い出せそうにない問題も、1秒だけ「何だっけ?」と考えてください。
  • 貼った付箋は、3日以上あけて解き直して正解できたら剥がします。正解ができなかった問題は、また3日以上あけてチャレンジ!

4.活用・応用のフェーズ:丁寧な意識的出力

ここでは、標準問題までに身につけた個々の用語や概念を組み合わせながら、何かの事象について解説したり、違う角度で語られているストーリーに知識を適用したりといった力を高めます。
テストでどれだけ高得点が取れるかは、このフェーズの問題をどれだけこなせたかにかかっています。

具体的な取り組み

問題集の「応用」「発展」あるいは「定期テスト対策」、「ハイレベル問題集」などを使います。
ただし、先ほどと違い、丁寧に時間をかけて問題に取り組む必要があります。そして、間違えた問題については、単に答えを確認して憶えてしまうのではなく、

  • なぜ、そのような答えになるのか? どこに着目したらよかったのか?
  • その問題に答えるために、問題文や図表のどこに着目したらよかったのか? そして、なぜそこに着目すべきだったのか?

そういったことを1つ1つ丁寧にクリアしていきましょう。
ケアレスミスレベルの間違いや、単に知らなかったという問題は気にする必要はないのですが(とはいえ、2, 3日後に再挑戦してスムーズに思い出せるようにしましょう!)、「分からなかった」という問題はノートに問題文や図表ごと書き写し、解く際の着眼点や、関連する事象を書き込みながら、知識を構造化していきましょう。

取り組みのポイント

  • 答えの単純暗記はNG。あくまで、問題の解き方、記憶していた事象の結びつけ方など、考え方をマスターしてください。
  • どんどんノートに書き込みをしていき、あなただけの「社会科完全攻略・虎の巻!」を完成させましょう!

ここまでで解説した取り組みで、社会科のテスト対策は十分です。
もちろん、これをやったからといって、すぐに満点が取れるということではありません。もともと持っていた知識の厚さが違えば、同じ事をやっても記憶への定着のレベルが違います。

ですが、少なくとも「がんばったのに、頭に残らない」ということはなくなります。それこそが、科学的学習法の効用といっていいでしょう。
そして、そういう学習を積み上げることで、やがて、社会科が得意教科になっていくはずです。

さらに一歩上を目指そう!

ですが、さらにハイレベルな知性を手に入れたい人、難関私立を目指したいという人は、このレベルで満足してはいけません。

  • 似たような産業構造を持った町が世界中にあるが、何か共通する背景があるのだろうか?(類似・相似の現象を探す)
  • 他の時代/社会に似た事件・動きはなかったか?(類似・相似の現象を探す)
  • なぜ○○は、××をしたのか?(原因、因果関係、意図を考える)
  • ○○が××した結果、何が起こったのか?(後世にどのような影響をもたらしたか?)

こういった「思考・論理教科としての社会」という側面から勉強してみてください。
これはさすがに一人では難しいので、先生に指導してもらったり、書籍を読んだりして、自分の思考力を試す、あるいはフィードバックを受け取る作業が必要ですね。

ということで、いささか長くなりましたが、社会科学習について解説してみました。

ぜひ、がんばった分、点数が伸びる学習、そして、社会を見る目、考える力が育つ社会科学習を楽しんでください!

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この記事を書いた人

フォーカス・リーディング主宰者

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