子どもたちの読解力をどう高めるのかというのは、相変わらず日本の義務教育の大きな課題です。
そう。「相変わらず」です。
なかなか向上しない。
多分、下がってきたわけではなく、昔から高くなかったんですよ。
理解してなくても機械的な単純暗記、知識再生の試験ばっかりだったから、あまり問題にされなかっただけで。
だから、国語教育の世界にもノウハウがない。
今も相変わらず、「国語力アップには読書しかありません」とか、なんか「髪を黒くしたければワカメを食べてください」レベルの話をする先生が多いのが現状です。
それで読解力が付くんだったら、とっくに読解力は上がってますわ。
でも、むしろたくさん本を読むと国語の成績は下がる傾向が見られる…。『AI vs 教科書の読めない子どもたち』でも「読書量は関係ない」って書かれてます。
なぜ日本の読解力が低いのかってことは、明確な答えなんて出せるわけもありません。
ただ、海外の”Teaching Reading Comprehension”(読解/読書理解指導)の基本書などを読んでいると、「あー、これ足りてないかも…」と思い当たる節がいくつかありまして…
1.主語・述語・目的語などを意識しない?
英語を初めとするヨーロッパ言語は、語順で意味が決まります。なので、語順とか語のつながりをすごく丁寧に整理しながら読みます。
対して日本語は「てにをは」があるために、あまり意識しなくても分かってしまいます。勢い、適当に、感覚的に処理してしまって分かった気分になりがちです。
2.読みのモニタリングをしてない?
海外の読書指導の書籍を読むと、読書力/読解力を決める大きな要素として「理解モニタリング(Comprehension Monitoring)」が挙げられています。
日本でも、もちろん自然体でモニタリングできている子はできているわけです。しかし、1に挙げたように、感覚的に読んでも分かってしまう気がするため、メタ認知的な作業がおろそかになっている可能性があります。
これは代名詞の存在も大きいのかも知れません。
日本では子ども向けの本で代名詞って出てくるんですかね?
欧米でも、小さい子にとって代名詞が出てくると、「これ、誰がしゃべってるの?」みたいな感じで混乱が起こるそうです。文脈を整理する習慣が身につくことで、この混乱が解消されるんですね。
そういえば、日本は主語が省略されることも多いのですが、これもあらためて「この文の主語は何?」と質問すると、混乱する子が多いんです。
3.説明文の読解トレーニングがない
小学校でも説明的な文章は出てきます。
しかし、主語と述語はおろか、主張と事実の区別もしません。論理構造というのも高校を卒業するまで学ぶ機会はないような…(汗)
文脈の整合性を検証するっていう作業について言えば、物語文でも完全にスルーされています。
ちなみに、この「なんとなく読んで文脈をちゃんと読み解かない」問題については、こちらの書籍に詳細に解説されています。(物語文がメインだったような記憶がありますが。)
これらの根本の問題に「とりあえず、フリガナがあれば音読できてしまう」ということもありそうだな…などと感じています。
欧米の言語はつづりと発音がかみ合わないことが多いため、まず「読み(decoding/word reading)」を丁寧にやります。
あと、小学生時代の読書が完全にフィクション一辺倒になっていること。
高校生・大学生の語彙力調査でも「沢山読んでいても、フィクションしか読んでいない学生は語彙も少なく、読解力も低い」ことが分かっています。
こういった問題を解消する上で、効果的なトレーニングは?と考えると、以下の4つが有効だろうと考えています。実際、ことのばではこれをメインに取り組ませて、国語の成績を伸ばしています。
A.文法的な構成を図解化するトレーニング
これは「分けてつなぐ」と呼ぶ教材です。文を文節に分けた後、主語・述語・目的語・副詞(時・場所・程度/状況)に整理して図解するトレーニングです。
B.文と文のつながりを意識するトレーニング
これは市販のテキスト『論理エンジン』で取り組ませている内容ですが、市販のテキストだと、どうしても幅の広い問題に取り組むことになり、「つながりを意識する」ことへのフォーカスが薄れがちです。
なので、先月からこちらもオリジナルテキストを開発しています。
小6,中1の子たちにさせてみたら、思いのほか出来ていなくてびっくりしまして、「よし、強化するぞ!」と慌てているところです。
C.文章が示す状況を明確な図にするトレーニング
これは算数の文章問題を使っています。
ただ、受験向けの文章問題は、なぜか解き方がパターン化されており、ほとんど線分図か、長方形の面積図で描くように指示されています。
このテキストの指示を無視して、イラストや図にするように指示しています。
もっとちゃんとイラストとして描かせる場合もありますし、人やものが移動するような問題などは、こちらの例ほど単純ではありませんが、まぁだいたいこんな感じですね。
D.接続詞、指示語を意識して読むトレーニング
あまり長くない、それでいてそれなりに難しい説明文を読ませて、指示語・接続詞に印を入れさせ、3回くらい重ね読みさせるトレーニングです。
やり方は単純です。
- 1.全体を一読します。
- 2.同じ文章をもう1度読みます。その際、接続詞に○印、指示語に傍線をつけながら読みます。
- 3.接続詞、指示語が何をどう受けているか考えながら(指示語については戦で結ぶのもGood)読み直します。
というような感じで、まぁ3年前と大きくは変わっておりませんが、少しずつ教材と指導法を進化させながら取り組んでおります。
またことのばの事例や海外の指導事例で面白いもの、効果の高いものが見えてきたらご報告しますね。(^^*