「国語力」はすべての教科の基本なのか?
昔から「国語力はすべての教科の基本」と語られて来ました。
しかし、理科・数学の成績はいいのに、国語の成績は悪い…という人も、それなりにいますし、国語はいいけど、他教科はダメって人も。
「大事なのは何となく分かるけど、でも結局、関係ないんじゃない?」という気もしてしまいますよね。
というか…
そもそも「国語力」って何なの?
そこが問題だったりします。だって国語力って、漢字やら語彙やら文法やら色々絡みますし、よく分からない「出題者の意図」を読みとる力が求められたりもしますしね…。
「読解力」なら他教科の基礎力になる?
「読解力」と他教科の力はどうなんだろう?
という話も気になりますよね。
もちろん「読解力」も測定の難しい代物ではありますが、試験出題者の意図を読み取るような話にはならないので、国語力よりは分かりやすそうです。
そして、実際に「理科(科学・生物)と読解力の関係」を調べた学者グループがありました。
The Contribution of General Reading Ability to Science Achievement
The Contribution of General Reading Ability to Science Achievement – Reed – 2017 – Reading Research Quarterly – Wiley Online Library
(一般的な読解力が理科の成績に及ぼす影響)
この調査では「読解力」を、次のような構成要素で測定しています。
- 語彙力
- 単語(日本語なら漢字)を読む力
- 接続詞の取り扱い
- 意味解釈
これらの要素で「読解力」を測定して、それと科学ジャンル・生物学ジャンルの学力との相関を調査してみました、というわけです。
読解力と理科の学力には関係あったの?
結果は予想通り…。
読解力が高い生徒は科学・生物の学力も高い
という結果です。まぁ、そうだろうねぇ…という話ですが。
もちろん「因果関係」ではなく「相関関係」です。
理科を教科書や参考書だけで学ぶのであれば、因果関係としてはっきりと見えるはずです。
しかし、普通はレクチャーという形で授業がありますし、実験や探究型学習など、様々な形態の授業もあります。
それでも、やっぱり読解力と理科の学力は相関しているぞ、というわけです。
- 先生が説明する言葉を、スムーズに処理(理解)できる。
- 世の中の(テレビとかマンガとか)科学的な情報を、自然と受け容れられている。
- 知らないことや迷うことを類推・推測する力がある。
などなど、理由は想像できますよね。何が大正解かはわかりませんが。
ともあれ保護者として、あるいは学習指導に携わる身として、心に留め置きたいことは
読解力は科学/生物の学力と相関があるし、
何なら(恐らくは)他の教科も同じだろう
ということです。
やっぱり読解力って大切ですよね…。
しかし、ここで大問題が…
どうやったら読解力が身につくか、国語の先生も含めて、学校や塾の先生にも分かっていない
ということですよ。
これについては「たくさん読んでも読解力にはつながらない」ことだけ、はっきりしています。
(前略)どのような習慣や学習が、読解力を育て、逆に損なう原因になっているか調査したのです。
─新井紀子著『AI vs 教科書を読めない子どもたち』
まずは読解習慣。読書は好きか、苦手か。好きだと答えた場合にはいつごろから好きか、苦手な場合はいつごろから苦手になったか、直近の1ヶ月で何冊読んだか、好きな本のジャンルは文学かノンフィクションかなど、かなり細かく尋ねました。その結果、どの項目も能力値と相関が見あたらなかったのです。
これは子どもであれ、社会人であれ同じ。
私が時々出すグラフですが、国語力ですら読書量と相関性が薄いんですよ。
全然読んでいない子と較べると、1冊でも読んでいる子は国語の成績が大いに高い傾向にあるけど、それ以上は関係がないぞ、と。
PISA(国際読解力テスト)でも、次のような見解を公式に出しています。
Reading a lot is not enough: students who read a lot but who do not understand how to learn effectively perform worse in reading than students who read less but understand what effective learning entails.
── OECD, PISA 2009 Results, volume III: Learning to Learn, 2010 p. 98.
▼寺田のてきとー訳
たくさん読むだけでは十分とは言えない。たくさん読んでいても、効果的な学び方を知らない生徒は、その逆の生徒と較べて成績が芳しくない。
This confirms previous research that while enjoying reading is a necessary step towards becoming a better reader, it is not sufficient if it does not go hand-in-hand with a good understanding of how to use reading to learn effectively.
▼寺田のてきとー訳
このことで、前の調査結果が確かめられたことになる。すなわち、よりレベルの高い読み手を目指す上で、読書を楽しむことが必要でありつつ、効果的な学びを実現するために、どう読んだらいいのかしっかりと理解するということが伴っていなければ、それは不十分だということだ。
── OECD, PISA 2009 Results, volume III: Learning to Learn, 2010 p. 98.
「読み(学び)のためのストラテジーを学べ」と言うわけです。
読書教育研究でも明らかにされていることなのですが、ストラテジー、とりわけ「何かを学ぶための読書」のストラテジーこそが、多読と読解力や学力を結びつけるものであると考えられるのです。
ぜひ、あなたも、あなたのお子さんも「本の科学的な読み方」を、今から鍛えましょう。
問題が起こっても、本を読めばとりあえず何とかなる、そういうような読書・読解力です。
それが恐らくは、不明瞭な未来に備える一番の準備ですし、子どもたちにとって、一番の進路保証になるはずなのです。