今こそ読書力アップのチャンス!小学生にどんな本を、どう読ませたらいい?

せっかくの長い休み。しかもいつ終わるか分からない休み。
勉強ばかりじゃ疲れてしまいそうだから、本を読ませよう・・・。そうお考えかも知れません。
 
ただ、いつも書いていることですが、ただいたずらに本を読ませても、「読まないよりはマシ」というレベルに過ぎません。

読書量で学力がどう変わるのか…? ⇒ 週1冊以上は読む価値なし?

そもそも、子どもに「本でも読んだらどう?」と勧めるのはいいのですが、一人で読ませて、その子は本当に「読めている」のでしょうか?
 
そうなんですよ。本って、ただ「読みなさい」って言って読ませるだけでは何もプラスにならない可能性が高いのです。
 
読書教育研究でも、静かに、読書に没頭する時間(USSR: Uninterrupted Sustained Silent Reading)は大事だけど、子どもたちに一人で読ませるのは考えものだぞって考えられているんです。そして、ちゃんと子どもたちに、ステップアップのナビゲートを用意した上で静かに読ませるべき(ScSR: Scaffolded Silent Reading)と考えられているのです。
 
では、どういう読み方をさせたらいいのか?
 
日本と世界の読書教育研究をしている私、寺田が正しい「一人読書」への取り組ませ方をご案内いたします!

[toc]

休校のタイミングこそチャンス!なワケ

タイトルで「今こそ読書力アップのチャンス!」と書きました。
学校で授業が進んでいる間って、目の前の宿題とか授業のケアとかに時間を取られてしまって、根本的な問題を置き去りにしがちですよね?

心配ママ

実は、うちの子、問題文とか設問の文章とか読めてないんじゃないの?

と思っても、なかなかそこまでケアできない。
授業もなく時間が有り余っていて、しかもテストや宿題などの課題に追われることもない今こそ、ゆっくり落ち着いて、基本に立ち返った学習に取り組むチャンスなのです。

読解トレーニングよりも読書が先である理由

笑顔ママ

読む力が弱いんだから、
読解トレーニングをさせたらいいかしら?

と考えてしまいそうですが、それはちょっと違います。もちろん、方向性として間違っているわけではないのですが、こちら(↓)の記事に書いたようなことも考えなければならないのです。

[clink url=”https://www.kotonoba.jp/reading-literachy/why-reading-instruction-is-difficult/”]

間違えたから正解を確認して、解き方をなぞって終わり、考え方を解説されて分かった気分で終わり、ではいつまで経っても、今の自分の読解力のレベルを超えていくことができません。──ことのば「なぜ「読解問題をやらせて解説するだけ」では、読解力が育たないのか?」より

 
そう ── 読解問題を解ける子は、そもそもいわゆる読む力がある子です。
まずは読解トレーニングのテキストで問われていることとか、解説に書いてあることが理解できるだけの「読む力(読書力)」が必要になるのです。

読んだ分だけ読書力が高まる読み方とは?

いたずらに本を読ませただけでは読解力も学力も高まりません。読書を読むことが自然と読解力や学力に結びつくだけの「読む力」をつけさせるには、次のような要素を考えつつ取り組ませてみてください。

1.その子の読書力のレベルにあった本を選ぶ

読む本を選ぶ基本は子どもが自分の意志で選ぶことです。

“Students read more, understand more, and are more likely to continue reading when they have the opportunity to choose what they read.”
─ 生徒たちは、自分で読む本を選ぶチャンスを与えられたとき、たくさん読むし、理解も高まるし、長い時間読み続けられるものなのです。
“Every Child, Every Day” by Allington and Gabriel

ただ、子どもの「読みたい」に任せてしまうと、冒頭で示したグラフのような残念なことがおこります。そこで、次のようなことを心がけてみてください。

1-1.たくさんの本の中から選ぶ

学校の学級文庫でも、図書室でもいいのですが、ぜひ大人が付き添って近所の本屋さん、あるいは大型書店や図書館に出掛け、たくさんの書棚をめぐりながら本を選ばせてみてください。
親子で書店を探索するような気持ちで、タイトルや表紙を眺めながら、「こんな本、あるんだねー」「この表紙、かっこいいねー」なんて、気楽に感想を伝え合いながら。きっと子どもの本に向かう好奇心や関心を高められるはず!

1-2.興味・関心を深める、あるいは広げるものを選ぶ

子どもが興味を持っていることを大事にしながら、大人の視点から「こういう本もいいかも!」というものを勧めてみてください。押しつける必要はありませんが、興味を持たせるような語り方を意識したいところで・・・。
「これって、去年、ノーベル賞を受賞した○○さんが子どもの頃に読んだんだってよ」
「この前、テレビ番組で話題にしてた○○って本だよ。一緒に読んでみない?」
── さて、あなたのお子さんは、どういう誘い方に反応するでしょうか?
 
場合によっては、興味を広げるために漫画から入るのもいいかも知れません。授業で学んでいる理科や社会に関するもの、最近ニュースで話題になっているものなどなど…。漫画を入り口にして興味が持てれば、もう1度、本屋にいって「次はこっち(文章主体の書籍)にチャレンジしてみない?」と勧めやすいはずです。

1-3.大人がレベルやジャンルをアドバイスする

読書が苦手な子というのは、「自分に読めていないことに気づかない」という特徴があります。難し過ぎる本になっていないか、選ぶ段階で一緒に見て判断してあげましょう。
もちろん大丈夫と思って買って帰ってみたら、子どもがどうやら読めていないのでは…と気づいたら、一緒に読みながら分からない言葉を辞書・辞典で調べたり、一緒に考えたりして、「一緒に分かる挑戦」の時間にしてしまってください!

ことのばでは難易度を考えて本を勧めています。

1-4.意識的にジャンルを広げる

実は「読書量と読解力」の関わりにおいて、注目すべきポイントがあります。それは

多様なジャンルの本を幅広く読んでいる子どもほど「読解力」が高い
「読解力」向上と読書との関係 by 小林 洋氏

という事実。ベネッセと朝日新聞のコラボでおこなわれた「語彙・読解力調査」のレポートでも、フィクション(小説など)だけでなく、ノンフィクション(新聞や説明的文章)を含めて複数ジャンルを読んでいるかどうかが、読解力を考える上で重要な要素となる語彙力アップの鍵になっていると指摘されています。
読書教育研究が非常に進んでいるアメリカでは、次のようなジャンルの輪Gnere Wheel)を意識して、多ジャンルからバランスよく選書することを勧めています。
こちらのシートは学校の先生が自作して販売していらっしゃる「読書記録シート」で、ジャンルごとに色分けしてシールを貼れるようになっています。

Reading Genre Wheel(クリックして拡大)


ちなみに、読書教育研究では、10ジャンルから選んで選書するよう勧めているものもあります。

  • ミステリー
  • SF
  • 昔話・民話
  • 現実的なフィクション(realistic fiction)
  • 伝記
  • 説明的な書籍
  • 歴史的物語
  • おとぎ話
  • ファンタジー

2.飽きず、疲れずに読める時間を設定する

2-1.適切な時間の長さを見きわめる

設定する時間も気を遣いたいところ。できるだけ長く読めるような集中力を育てたいところではありますが、最初は無理のないレベルからどうぞ。
ちなみに、読書が得意な子は、小学生であっても40分以上でも大丈夫だと言われています。しかし、読書が苦手な子は15分で区切ってOK。「とりあえず、15分間だけ集中して読もう!」と励ましてやってください。
できれば、集中して読めた時間と、読めたページ数を記録して、達成感と記録の伸びを味わわせてやりましょう。

2-2.タイマー(砂時計)を使う

時間を計る場合、キッチンタイマーで計りましょう。
ことのばでは読書が苦手な子どもに読書をさせる際、砂時計を使い、時間の経過が視覚的に分かるようにして、「あと少し、がんばろう!」という気持ちを作らせています。

3.読んでいる姿を観察する

子どもがどういう姿で読んでいるのか観察していると、いろいろ気づくことがあるはずです。

  • 明らかに目が行を追っていないとか…(嫌いなので、適当に読んだことにしようとしているとか?)
  • どこか一箇所で、じーっと固まっているとか…(分からないのか、違う世界に行ってしまっているのか…)
  • 何度も繰り返して読んでいるとか…(理解できていないのかも?)

あまり監視するような状態になるのはお薦めしません。さりげなく傍にいる工夫をしてください。

3-1.横で親も一緒に本を読む

これが何よりお薦めです。「晩ご飯を食べてから、食器を洗い終わったら一緒に読書タイム」など、時間を決めておくことで、無理なく読書に向かう習慣を付けられます。
親が読書を楽しんでいる姿を見せることが、一番の読書教育だとも言われますからね!

3-2.一緒に輪読する

1ページずつでもいいでしょうし、何か段落の切れ目でもいいでしょうし、順番に音読をしていくと読書の楽しみが広がります。
これが家族行事になると、一緒に図書館や書店に本を選びに行くことも楽しみになるはず! そして、子どもがどこで読み間違えるのかとか、抑揚が付いていないとしたら物語が理解できていないのでは?とか、いろいろなことに気づけるようになるでしょう。

4.読みっぱなしにせず、振り返る機会を作る

読書が苦手な子どもと、得意な子どもの一番大きな違いは、「読んでいる最中の自分の理解の状態をモニタリングできているかどうか」(自己モニタリング)だと考えられます。
いわゆるメタ認知スキルというやつですが、これは意識的に反復する中でしか身につきません。また、自然に自己モニタリングできない子も、「今から、こういうことを意識して読むんだよ」とモニタリングするように指示されるとできるようになるものなのです(“Comprehension Monitoring, Memory, and Study Strategies of Good and Poor Readers” by Scott and Mayer)。
 
なので、子どもに自分の理解の状態をモニタリングするような習慣を身につけさせるために、「どういう話なのか?」を考えながら読むような仕掛けを、大人がしてやりたいところです。

4-1.読んだ本について問いかける

一番手軽で効果的と考えられるのは、「読んだ内容について話させる」ことです。
これは読書教育研究の中でも強調されることなのですが、子どもたち同士で本について語り合わさせたり、先生に本の内容を説明させたりといった働きかけと、その時間を確保することが非常に重要なのです。
 
ただし!
 
あまりに問い詰めるような聞き方をしたり、理解できていないことを責めるような口調にならないように注意しましょう。あくまで、子どもが「次はちゃんと語れるように工夫しよう!」と思えるように仕向けたいものです。
Twitterで見かけた「ナイス!」な親子のやりとりがこちら…

[blogcard url=”https://togetter.com/li/1405486″]

ぜひ、ご自分のお子さんにあったやり方を工夫してみてください。(^^)

4-2.読んだ本について簡単な要約を記録代わりに書かせる

読書ノート(記録)を付けさせる一環で、どんな話だったのかを書かせるようにしてみましょう。ただし、これは読書の習慣が付いてから1年くらい待った方がいいかも知れません…。
また、感想文を書かせるにせよ、要約文を書かせるにせよ、フォーマットを与えるとか、書き方の指導をするとか、何らかの指導も必要になります。学校教育にありがちな、指導もしないで「読書感想文を書いてきなさい」という課題を課すのは、子どもを読書嫌いにさせる愚行でしかありません。

本の要約にテンプレートを使って取り組ませる

アメリカでは小学生に「本の要約」をさせるフォーマットを作っている先生も多いものです。
小学校の先生が作って販売している、本の要約ワークのテンプレート

“力”になる読書体験と言葉のトレーニングを並行しよう!

ここまで解説したような形で、「力になる」よう配慮しつつ読書を楽しく続けられるように子どもたちを支援していくことが何より重要です。このコロナ休校の期間を、「読書に親しむ、いい機会」として捉えてみてください。
本屋さんや図書館も、場合によっては行くことができないかも知れませんが、その時は自宅にある本でもいいでしょう。大事なことは、親子で楽しみながら読書体験を積み重ねていくこと。そして、その時に力が付くような支援をしてやること。
 
これで、価値のある読書習慣が身につけば、あとは読書を積み上げていくことが読解力・国語力アップに自然とつながっていくはずです。
 
ちなみに、ことのばでは本を読んだら、5つのカテゴリで種類分けして「読書ポイントカード」にシールを貼らせています。これが15枚いっぱいになったら、図書カード500円券と交換しています。
これも読書応援の仕掛けです。

ことのば特製読書ポイントカード

セットで分析的に読むトレーニングも!

読書と並行して、“読解の前提を作る言葉の分析的な読み方”のトレーニングも、ぜひ少しずつ(負担感を与えないように配慮しつつ)取り組ませてください。
 
こちら(↓)の記事に書いた言葉を分析的に読む力のトレーニングです。

[clink url=”https://www.kotonoba.jp/reading-literachy/language-tech-up/”]

この記事で最後に書いているとおり、紹介しているトレーニングで鍛えられるのは、読解力を作る6つの要素のうちの1つ(2番目のマーカーされた要素)に過ぎません。それでも、このトレーニングに反復して取り組ませることで、読解力が確実にアップしていきます。

  1. 語彙力アップ…語彙・漢字・慣用句などは、それ専用の勉強+他ジャンルの書籍で学ばせる必要があります。
  2. 主語・述語副詞の呼応修飾・被修飾などの文のつながり・構造を的確に捉えるトレーニング
  3. 指示語が示す内容を把握するトレーニング
  4. 接続詞が何と何を、どうつないでいるかを読み取るトレーニング
  5. 文と文章があらわす一貫した意図、イメージ、主張を読み取るトレーニング
  6. 事実と意見の関係、主張と論拠の関係など、論理構成を把握するトレーニング

記事「読解問題、算数の文章問題の苦手をあっさり解消!言葉のセンスを高めるトレーニング」より

 
ということで、長々と読書の基礎力をつけるための読書習慣作りの支援策について書いてみました。
ぜひ、できることから少しずつ取り組んでみてください。
 
このコロナ休校が、お子さんにとって実り多い時間となりますことを、心からお祈りしています!

こちらの記事も、読書力アップにつながる内容が…

[clink url=”https://www.kotonoba.jp/reading-literachy/underlining-is-effective-to-foster-your-reading-comprehension/”]
[clink url=”https://www.kotonoba.jp/reading-literachy/the-method-of-repeated-reading/”]

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この記事を書いた人

フォーカス・リーディング主宰者

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