「文章が読める」は子どもたち本人と私たち日本社会の未来を救う

読んでよく分からない、難しい文章を読んでイラッときて、読むのをやめた。
小難しい話がよく分からないので「漫画で分かる」を買ってきた。
ネットで見つけたTwitterやブログのすごい記事に踊らされて欺された。
 
大人でも子どもでも、ありがちなことかも知れません。
でも、これでは玉石混淆の情報氾濫から身を守れません。知的な仕事は選択できそうにありません。
 
文章、情報を的確に読み解き、その意図、真偽、構造をくみ取る力がなければ、未来への道はどんどん狭くなっていきます。
でも、読解能力、情報分析能力は誰でも、何歳からでもやり直せるし、高める事ができます。
 
高い読解力・読書力は未来への選択肢を広く、豊かにしてくれる。── そう確信しているからこそ、私は「読解」と「読書」、そして「作文」にこだわっています。

リテラシーの大イベント in USA

今、アメリカのNew Orleansに来ています。
 
Location of New Orleans
こんな場所です。ミシシッピ川下流、メキシコ湾岸にある町。
 
目的はInternational Literacy Association(ILA/国際リテラシー協会)の年次カンファレンスに参加すること。

〝リテラシー〟への熱気が凄い!

4日間にわたり、様々なイベントが開催されるのですが、初日は朝7時から始まった受付で長蛇の列。

 
初日(現地時間10/10)は朝8時から夕方4時まで、みっちりと分科会でした。
私が参加した分科会は「Balanced Literacy: Reading and Writing Instruction in Elementary School(バランスの取れたリテラシー:小学校における読解および作文指導)」というタイトルでしたが、全米から小学校の先生らが200人以上参加しています。

《分科会のお部屋の様子:休憩時間》
 
こういう分科会が9つありましたが、とても熱気に溢れ、意欲的に発言、質問します。そして何より、皆さんそれぞれ、日頃から指導法を学んでいらっしゃることが伝わってくる発言が多く、感心するばかりでした。

2日目のオープニングはホールでプレゼンテーション。
その中にはクリントン元大統領のお嬢さんで、ベストセラー作家(絵本作家)であるChelsea Clinton氏も。
Ms.Chelsea Clinton
 
2日目のその後は、研究者が中心となって開発されている読解教材や作文教材の案内を兼ねて、学習法のポイント指導が、いくつものブースで行われています。
アメリカという国は、教育の研究者がちゃんとビジネスをやっていて、ちゃんと研究の成果が現場に降りてきているんですね。もちろん、それはビジネスだけではなく、日常的なブログやTwitterでの発信を通じて、どんどんシェアしています。

この記事のトップにある画像は、協賛企業のブースに展示されている「レベル別読解練習テキスト」のラック。

 
このILAも「研究と現場をつなぐ」ことを標榜しています。研究者達も、しっかりと現場を持っていますし。
そしてILAは、世界中の子どもたちは「読む権利」を持っていて、それこそが子どもたちの未来を作るのであり、良好なリテラシーとリテラシーを育む環境を与えるのは大人の責任だということを主張(というか体現)しています。

日本の読書/読解研究

私は日本読書学会という学会にも所属していますが、残念ながらそういう活動がありません。
 
アメリカでは、移民をはじめとする様々な人種、貧困・・・そのような状況の中で「言葉の教育」が豊かに育ってきたのだろうと推測しています。ひるがえって日本では(先日の記事でも書いたことですが)「とりあえずフリガナさえあれば読める」という状況も手伝って、読書指導も作文指導も、それほど注目を浴びることがなかったわけです。
 
研究者の先生方や現場の先生方は、日々、熱心に研究されていることは間違いないのですが、それが現場に降りてこない。ビジネスとして展開されない。なので残念なことに「知る人ぞ知る」レベルで終わっています。
 
そもそも、研究や実践の内容が「Not Balanced」になっているように感じています。

  • 作文指導と読解指導のバランス
  • 精読指導と速読指導のバランス
  • 一斉授業と個別学習のバランス
  • 物語テキストと説明的文章テキストのバランス

まさに、今回私が参加して学んだ「Balanced Literacy」の悪い例を見ているような気分にさせられます。
 
具体的な問題にフォーカスした研究はされているのですが、大局的な「指導法」とか「読解法」「作文法」といった研究が全然見当たりません。現場の学校の先生が熱心に学んでいるという話も聞きません。
この状況を変えないことには、日本の読解レベルも、PISAの読解スコアも、知的レベルも上がらないよねーなんて、ちょっと恐ろしく感じています。そして、何かそれを変える方法ってないものかねーなんて考えているところです。
 
そんなこんなで、私は3年前から九州大学大学院(現在、博士課程1年)に入学して読書研究に取り組んでいますが、文献はほぼ英語です。日本の論文がない。(苦笑)
ことのばでの指導も、アメリカの研究や指導書、ワークブックを取り寄せて、日本の子どもたちの現状に当てはめながら指導している状況です。
 
今、私の研究の一番のネックは英語力が低すぎること。(苦笑)
吸収するスピードが日本語の10分の1くらいの感じで、自分でもイライラします。
 
でも、ご縁をいただく皆さん、とりわけ子どもたちの未来を作るためと考えると、ゆっくり構えてもいられません。
 
ひとまず、ILAカンファレンスの残り2日間、可能な限りのものを吸収し、文献を大量に手に入れて日本に戻ろうと思います。日本に戻ったら英語学習を加速せねばです。

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この記事を書いた人

フォーカス・リーディング主宰者

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