料理のレシピで考える「読んで分かる」ことの意味

先日、息子が家庭科の教科書を読みながら
自分で弁当を作ったという話を書きました。

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教科書のレシピを読んで理解し、
それを実践に移し、さらにそこで得た体験を
反映させて、レシピについての理解を
深めていく・・・
 
これもある種の「読解」を考えるいいきかっけでした。
 
 
「読んで分かる」には、何段階かの階層があります。

1.言葉の意味が分かる。

名詞が指すモノが分かる、
言葉の結びつきが分かる、
文・文章の表す辞書的意味が理解できる、
そんな表面的、言葉上の理解です。
 
料理のレシピでいえば、

  • ニンジンって何?
  • 乱切りってどいう切り方?
  • 中火ってどれくらいの火?

そんなことを理解しているってことですね。
 
ただ、本当に理解できているのかどうかは
次の2,3を確認せざるをえません。
 
例えば教師時代、教科書を生徒に読ませて
 
「読んで、分からないところに線を引こう」
 
といっても、誰もどこにも線を引きません。

  • 知らない言葉はない。
  • 難しい表現、言い回しもない。
  • したがって、読んで「分からない」と感じるところがない。

わけです。
 
結局、本当に分かっているかどうかは、
 
「じゃ、この部分を自分の言葉で説明して!」
 
という形で出力させることになるわけですが、
その時は、当然、教科書に書かれていない言葉を使い、
もともと持っていた知識などを利用しながら
語ることになります。
 
つまり、次の2,3に絡むわけですよね。

2.イメージできる。

これは当然のこととして省略された言葉などを補い、
表面的な言葉の解釈を包み込むイメージを思い描く
という作業です。
 
例えば
 
「乱切りにしたジャガイモを、
 1で炒めた豚肉と一緒に強火で炒めます。」
 
という説明があった場合、実際にその作業もしくは、
それに似た作業をした経験があれば、
リアルな情景が思い浮かぶはずです。
 
場合によっては「おばあちゃんの知恵」レベルの、
ちょっとしたノウハウ、ハウツーがあるかも知れません。
 
今回の息子の料理の場合、
オムレツのレシピが大変でした。
 
かろうじてスクランブルエッグの経験は
ありましたが、

「少し固まって、半熟にちかい状態になったら
 フライパンを前に傾け、
 たまごを奥側によせる。
 フライパンの持ち手の部分を叩き、
 卵をひっくり返し、形を整える。」
 
こんな感じの解説は、「作っている現場を見た経験」すら
ないため、まったくもってチンプンカンプンです。
 
言葉を文字通り表面的に理解することと、
それを体験と結びつけてイメージできることの間には
相当な隔たりがあるってことです。

3.自分の行動、思考に落とし込んで再現できる。

最後の段階が「書かれた内容を実現できる」という
出力の状態です。
 
ソクラテスは
 
「頭で理解したつもりでも、
 行動にそれが生きてこなければ、
 それは知らないのと同じことだ」
 
という旨を語りました。
 
知行合一ですね。
 
ここまで極端な話でなく、
オムレツを作るレベルのことでも、
2の「イメージできる」状態をクリアしてすら
本当にオムレツを作ることができるかどうかは
別問題です。
 
言葉として入力したことを、
自分の体でもって表現することは
完全に別次元の話。
 
そこには、ストレートにオムレツかどうかは別として、
レシピの解説を読んで実戦した経験、
そこでの成功・失敗経験から得たフィードバックが
絶対的に必要です。
 
 
物語を読んで理解するという場合も、
恐らく同じようなことが必要になるでしょうね。
 
そして、抽象的な説明文でも、
何らか似た要素が必要になるはずです。
 
つまり、子ども達に読解力を付けさせるために、
どんな教育、体験が必要かといえば、
 
一つには「読書の体験」です。
 
ですが、もう1つその前提として
体を動かして活動した体験
体験の幅を広げるような活動
例えば旅行であったり、
博物館の見学だったり、
野山を駆けまわることだったり、
友達とケンカをする経験だったり・・・
そういう活動が必要なんですね。
 
そういえば、以前の記事で
こんな言葉を紹介しましたっけ。

「想像力が乏しい者に無理やり読書をさせようとすると、かえって想像力にけがを負わせることがある」
 ── 『読書と豊かな人間性』

ぜひ読解力アップのための前提として、
言葉の体験、体を使う体験を
子ども時代にたっぷりさせてくださいね!

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この記事を書いた人

フォーカス・リーディング主宰者

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