ことのば・子ども速読講座の1つの大きなテーマは「子どもにたくさん本を読ませよう!」ということ。
はっきり言って、自己満足の速読も、受験のための学習テクニックも、あまり興味がありません。
それが、子どもの人生にとって、ほとんど意味がないことを知っているから。
教育というからには、その子のもっている「よさ」をしっかり引き出せて、その子ならではの輝き方ができるような支援をしたい。そう常々考えています。
もともと「教育=education」とは、ラテン語の「ex(外に)・ducere(引き出す)」という言葉から生まれたものなんです。
だから高校教師時代から一貫して、「どうしたら生涯、役に立つ力を育めるか」ということをテーマにしてしています。もちろん、効率的・効果的な学習テクニックを否定するつもりはありません。それで目の前の壁をクリアすることも必要なことですからね。
さて、そんなスタンスで「子どもの読書と学習」を支援しているわけですが、対象は小学校4年生以上。
それ以前の保育園、幼稚園時代からの習慣、文化をどう育んでいけばいいかという部分については、残念ながら手薄です。
もちろん、小学校1・2年生の国語教室をしていたこともありますし、自分の子育て経験などから語れることがないわけではありません。それでも教育者として自信を持って語れるほどではないわけで…。
そんな私が最近、人にお勧めしている本があります。
それがこの本。
☆『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』(松永 暢史著)
著者は「音読」「作文」「子育て」というキーワードで本を量産なさっている方。教育に関するコンサルタントとして活動をなさっているようです。
内容はあまり科学的といえず、感覚頼みの曖昧な表現で押しきっている印象は否めません。
それでも「ここまで音読と読書にこだわって語れるのか」と驚くほど、具体的な本の読ませ方を、これまた具体的な書名をもって語っています。
- 保育園・幼稚園時代、あるいはそれ以前の「読み聞かせ」はどうあるべきか?
- 読み聞かせをしようと思っても、子どもが興味を持たないときはどうしたらいいか?
- 自宅の「読書環境」をどう整えたらいいのか?
- あらゆる教科・科目の基本となる読解力につながるような読み方は、どうしたら養われるか?
- 家事が忙しくて本を読んでやれない時はどうしたらいいか?
などなど、「読書」というシンプルなテーマで、よくぞここまで説得力高く文章を展開できるものだと感心するかありません。(笑)
そして、ここまで説得力高い文章(しかし科学的というワケではなく…)を書くだけの経験値も情報量も、私にはありません。参りました。
これはひとえに、著者の松永氏みずからが語っているように、それだけたくさんの本を読み、言葉と情報をストックしてきたからこそできる芸当でしょう。
科学的なデータ(根拠)に基づいた学術的な研究について知りたいという人には向きませんが、子どもに本を読ませたいので、具体的に何をどうさせたらいいか教えて欲しいという方にはお勧めです。
☆『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』(松永 暢史著)
現実にどうかは分かりませんが、生徒に関するデータを記録・把握していらっしゃらないのだろうと推察します。
コンサルティングで関わった中で特に目覚ましい成果の上がった子ども達の例をベースにした「成功事例集」という位置づけでしょうか。もっと定量分析的な視点でデータの把握をなさっていれば、さらに具体的で説得力の高い内容になったのかも知れません。
ノウハウ書の著者にはざっくり言うと「コンサルタント」「実務家(実践者)」「教育者」「研究者」という4類型があります。コンサルタントの書く本というのは、そういうものだという認識も必要だと思います。