子どもに「名作」を読ませる理由

私は、大人向けの読書講座、速読講座でも「古典を読みましょう」とお伝えしています。
 
そして、子どもにも「読書に慣れてきたら、名作を読もう」と言います。
 
子ども達は「えぇーっ」と、ちょっといやな顔をします。
特に「読書ってかったるい」と思っていた子たちは。
 
でも「成長」を考えれば、絶対に古典や名作に挑ませないといけないんです。
読ませるタイミングも十分に配慮しなければなりませんが、いつまでも言葉や表現が平易な「読んで楽しいエンタメ小説」ばかりではダメ。
 
人間、「それってどういうこと?」と立ち止まったり考え込んだりするような負荷がかからなければ、脳みそが働きません。
 
場面をいちいち想像しながら読む。
言葉の意味を慎重に探りながら、時には辞書を引きながら読む。
作者の真意を立ち止まって考え込む。
そうやって、言葉と格闘することを通じてしか、本当の意味での「語彙力」や「言語的センス」は育たないのです。
 
そういえば「読みにくいものこそ学習効果が高い」ということについて、プリンストン大学とインディアナ大学の興味深い共同研究があります。
 
それは「フォント」についての研究。⇒紹介記事

Publishing ideas in a hard-to-read typeface may make concepts harder to learn but easier to retain.
(読みにくい書体で印刷されたアイディアは、概念を理解するのに苦労するが、記憶に残りやすい。)

だから学生さんに配布するテキストのフォントを読みづらいものに変えるだけで、それ以外の支出も労力もなしに学習効果を高められるだろうとしています。
 
確かに、言葉と格闘した経験、「なんだろう?」と主体的に対象に関わろうとすることが、能動的体験の記憶を作るからだと考えれば納得いきます。
気楽に受け止めた情報は、その時「あー、分かるわー」と思っても、するっと頭をすり抜けて記憶から消えていくものですからね。
 
これについて同研究で、このように語られています。

Disfluency, which occurs when something feels hard to do, has been shown to lead people to process information more deeply.
(やりづらいと感じる時に生じるたどたどしさによって、人々が情報をより深く処理するようになることが示されました。)

ある意味で、多くの人が分かっていたことですが、こういう「フォントを変えるだけで学習効果が変わる」という非常にシンプルな実験で示されると、さらに納得感が高くなりますね。
 
かといって、どうでもいいところで無駄な苦労をさせる必要もありません。
 
効率が効果を阻害する場合もあれば、やりようによっては効率よく効果的な学習ができることもあります。
私が提唱している「Uプロセス学習理論」は、誰でもスムーズに学習を進めて行けて、しかも効果的に記憶に残すようなプログラムになっています。
それでも要所要所に「手書き」を入れたり、「高速作業」を入れたりすることで、ストレスなく高負荷な取り組みができるようにしています。
 
子育てでも、教育でもどこをスムーズにさせて、どこで苦労させるか、そんなデザインを明確に持っておきたいものですね。(^^*♪

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