学校教育に「正式な教科書」として電子書籍導入、確定?

ここ数日、新聞やテレビのニュースでも、
いよいよ2020年に電子書籍が正式な教科書として
導入されることになりそうだという話が採り上げられています。
 
2020年というのは、こりゃまた急いだもんだな…という印象です。
 
恐らく産業界からの強い要請があって、結論ありきで議論が
進んだのだろうと思います。
 
 
電子書籍については、専門家からも賛否両論があります。
 
まず、金銭的コストがすごく大きいこと。
 
なにしろ、「正式な教科書」ですよ。
憲法で「無償」とうたっている部分です。
 
税金で全部買うんでしょうかね?
 
しかも、紙の書籍なら毎年使い捨てられますし、
なくしたり、破れたり、汚れたりといったトラブルがあっても
簡単に買い直せます。
 
タブレットが壊れたら? なくしたら?
そうじゃなくても、そもそも小学校6年間の使用に
耐えられるようなタブレットなんてあるの?
 
ソフトウェアのアップデートはどうなるの?
 
なにしろ、iPadですら、発表からまだ6年ですよ!
それがすでに第4世代です。
 
たいして使わない大人であれば、
まだ初代iPadを使っている人もいるでしょうけど、
毎日使う教科書になると…
 
さてさて。(´・ω・`)
 
 
学習効果のことも、これまでに書いたとおり。
審議会のみなさんは「素晴らしい効果が期待できる」と
当然言ってしまいますが、実際には誰にも分かりません。
 
これはもう、水素水の効果と50歩49歩。

[blogcard url=”https://www.kotonoba.jp/column/table-in-school/”]

もちろん、使い方次第ってことは分かっていますよ。えぇ。

[blogcard url=”https://www.kotonoba.jp/reading-literachy/think-about-e-reader/”]

問題は、それを公立学校でやれるのかってことですよ。
 
「使い方次第」ってことは、「使い手の力量に依存する」ということ。
 
美しい理念で学校教育を壊したと言われる
「ゆとり教育」の二の舞にならなければいいのですが。
 
 
こういう公的な意志決定、しかも大きなコストを伴う決定の場合、
 
「採用することで、計り知れないメリットがあり、
 コストの分を差し引いてあまりある」
 
ことが確実でなければなりません。
 
今回の場合、
 
「採用することで得られるメリットは不確実であり、
 コストだけが確定している」
 
という状況。
 
それがまかり通ってしまうのは、ある意味で
資本主義社会の政治的意志決定の宿命。

いわゆる「鉄の三角形」(政官財の癒着、結託)です。
 
残念なことですが、
もう既定路線で動き出している以上、
その意志決定から未来の子ども達を救うべく、
私たちは動いていかなければなりません。

 
 
幸いなことに、というべきか、
私塾が電子書籍、ICT教育に熱心になってきています。
これはGood News。
 
なぜなら、塾は生徒の成績を上げるために必死ですから。
少なくとも、公立学校よりはまともに使いこなすことが
期待できます。
 
福岡でナンバーワンの学習塾が、現在、ICT導入に向けて
動いているというニュースも、ちらほら耳に入ってきています。
 
うち(ことのば)でも採用しているICT大手「すらら」と
”エビデンスで教育効果を測定せよ!”という言説で有名な
中室先生がコラボして研究なさっていたり。
 
中室先生の著書を、昨年末に「今年読んで良かった本」として
ご紹介したことがあります。

[blogcard url=”https://www.kotonoba.jp/column/good-books-for-me-in-2015/#i-3″]

 
とにかく教育界全体が、ICTをどう効果的に活用していくのか、
本気モードで取り組んでいかないと、
一部の利権に群がる人達だけがおいしい思いをして、
教育が荒廃していくという結果になりかねません。
 
それは何としてでも阻止せねば、ですよ。
 
教育研究の世界でも、どんどんICTに関する論文や
実践報告が出てきています。
 
ただ、まだ爆発的な影響力を持つレベルのものは出ておらず、
試行錯誤、試作品の段階です。
 
しかも「学習教材」と「教科書」では、取り扱い方も
全然違いますからね。
 
教科書の場合は、電子黒板も含めて
 
「授業の中で、どう効果的に使いこなすか」
 
です。
 
教材単体のものとは勝手が違います。
 
私も「読書」という側面から、電子メディアとの効果的な
使い方を模索していこうと(やっと本気で)考えているところです。
 
なにしろ、私もこの国の一員。
未来を創る力と責任を、私たちももっていますからね!

この間違った決定の責任は自分(註:経営者)にあるが、高い授業料を払って得た教訓を最大限に引き出す責任は全員にある。
『ビジョナリーカンパニー2』 p.124より

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