講演の音声でも話していますが、「遺伝」が学力やその他の能力に与える影響はとても大きいことが分かっています。
どれくらい大きいかは「だいたい半分」というようなざっくりとしたレベルで語られることが多いのですが、かなりリアルな数字を示している文献と出会ったので、保存資料としてシェアしようと思います。
一卵性双生児のデータなどから行動や性格、知能における遺伝と環境の影響を調べる学問が行動遺伝学で、1960年代から膨大な研究が積み重ねられていますが、それによれば知能における遺伝の影響がきわめて高いことがわかっています。一例を挙げれば、論理的推論能力の遺伝率は68%、一般知能(IQ)の遺伝率は77%です(他の研究もこれとほぼ同じです)。
これがどのような値かは、身長66%、体重74%という遺伝率と比較すればわかるでしょう。背の高い親から背の高い子どもが生まれるように、親が高学歴だと子どもも高学力になるのです。「知能の高い親は社会的に成功してゆたかになり、遺伝によって子どもの成績もいい」と考えれば、経済格差と教育格差の謎はすっきり解決します。
──『「教育と格差」をいい立てるうさんくさいひとたち 週刊プレイボーイ連載』
(⇒参照ページ)
このリアルな数字の学術的なソースとして示されているのがこちらの本。
⇒『遺伝マインド –遺伝子が織り成す行動と文化 (有斐閣Insight)』
まだ読んだことがない本でしたので(不覚!)、さっそくAmazonに注文してみました。
このプレイボーイの連載記事の主張がどうかということは、ここでは考えません。
私が「へー」と思ったのは「遺伝の影響」の話。ここまでリアルな数値で示されるとは…!
ある意味で「遺伝の影響が大きい」ということは、誰もが分かっていたことなんですよね。
だからこそ、(講演でも語ったのですが)自分ができなかったことで、「他人ができているのが、うらやましい、すごいと思う」という「ないものねだり」マインドで、子どもの教育を考えないことです。
その子の「何かが足りない!」という発想ではなく、「ありのままを伸ばす」という発想で、子どもを導いてやりたいものです。