今朝の新聞は大手から地方紙まで、「新学習指導要領」が大きく採り上げられています。
今回の改定プランでは、ひとまず「5教科(英数国理社)」という枠組みは維持されており、教科の枠組みの範囲内での微調整、試行錯誤といった印象です。
今回の目玉というか、子どもの学びに関わる身として非常に気になっているのは、この2つ。
- 小学生の英語
- 全教科でのアクティブ・ラーニングの導入
ま、私じゃなくても誰でもそうですよね。(^▽^)
1.小学生の英語
これまで5、6年生に「外国語活動」というかたちで35時間配当されていたものが、3、4年生に前倒しされ、5、6年生は「外国語」という教科が必修になります。
これについて西日本新聞社の朝刊には、こんな不安を煽る話が掲載されています。
ある教育委員会の担当者は「英語力は間違いなく上がる」と期待するが、英語指導に不安を持つ小学校の教員は多く、英検準1級以上相当の資格を持つ中学校の教員も3割にとどまる。
この状態で「間違いなく上がる」と期待できる神経が、私にはとうてい理解できません。(苦笑)
紙に書いたら願いが叶う…みたいな話ではないんですから…。理念とプログラムはともかく、実戦部隊がスキル・力不足の現状で、どうこの厳しい戦に挑もうというのか気になります。
これについては、文科省も十分に認識しているようで、同紙の記事はこんな話でしめくくられています。
文科省は研修の実施や教材の整備を進めており、同省幹部は「こうした施策がすべての教員に行き届くかが鍵だ」と話す。
これまでの教育改革で、行き届いたことがあったのか、残念ながら私には分かりません。
ただ、ゆとり教育の失敗の最大の原因は、その方向性や理念にあったのではなく、「現場の先生の裁量、力量にゆだねた」ことにあったはずで、それと同じ轍を踏まないことを祈るばかりです。
ちなみに、現在、高校の英語授業は「原則英語でおこなう」ことになっています。
2013年度施行の高等学校新学習指導要領で、「英語の授業は英語で行うことを基本とする」と明示されているんです。実は!
確かに、高校の教育委員会主催の英語科研修では、積極的に「英語で英語の授業」の実践報告がなされていますが、実際に英語で英語の授業をしている高校は皆無だと断言していいでしょう。
それなのに、ですよ!
2020年度からは「中学校では英語による授業を基本とする」となっているんですって!(爆)
高校で実施できていないものが、中学校で実施できると、本気で考えているんでしょうかね?(^-^;
しかも、必須の英単語数も中高とも激増です。
※こうなってくると、学校の先生の自主的取り組みでなんとかなる話ではなくなってしまいます。
※後ほど、同じ文言の繰り返しあり。
電子教科書の導入、電子黒板の導入とセットで何が起こるのか・・・ドキドキの展開です。
2.アクティブ・ラーニング
今回の新学習指導要領は、英語以外の教科については必修科目の微調整はあるものの、基本的に従来のものと、そう大きく変わるものではありません。
それよりも何よりも、この「アクティブ・ラーニングの導入」こそが目玉と言っていいしょう。
これが本当に定着したら、どれだけ教育が変わるか、そのメリットは計り知れません。
答えが1つとは限らない問題。
正解が存在するかどうかも分からない問題。
そこに主体的、能動的に、自らの頭を使って取り組んでいく生徒を育てるってんです!
ただ、実施してみれば分かることですが、これはなかなか大変です。
2-1.授業のやり方を根本から変える必要性
当たり前ですが、これまでの授業のやり方ではダメだという宣言が出されたわけです。
さらにいうと、「知識・理解」を否定したのではなく、「そこを増強した上で、さらに能動的に考えさせよ」ということなのです。
ただでさえ「授業時数が足りない!」とか悲鳴を上げている先生方には、もう死んでいただくしか道がありません。
授業時数が足りないってのは、単にやり方が悪いだけってことに、まず気が付かないとね。
2-2.「考えさせる」ための前提を整える必要性
当たり前ですが「調べる」にせよ「まとめる」にせよ「考える」にせよ、そういう能力、スキルがないと成立しません。
そして残念ながら、そこはこれまでの学校教育が置き去りにしてきた部分です。
単純に「アクティブ・ラーニングのフォーマット」をお上が用意して、それに型通りに授業を載せていってしまうと、単なるザワザワした授業、底の浅い考えたふりの授業が出来上がってしまいます。
※繰り返し
2020年度に導入がスタートして、一体全体、いつ頃、それが日本全国に浸透していくのか? さらに次の新学習指導要領改訂の前に完成するのか? あるいは失敗して次ぎで放棄されるのか? 気になるところです。
このアクティブ・ラーニングへの疑念については、こちらの記事をどうぞ。
[blogcard url=”https://www.kotonoba.jp/column/guilt-of-active-learning/”]
3.寺田的まとめ
これまでの「学習指導要領改訂」の歴史は、単に「洋服を着替える」だけの歴史だったと、私は認識しています。
もちろん、一部に、その精神を受け止め、先進的な取り組みをする先生方もおられます。
でも、全体が変わったことなんか一度もないし、文科省や教育委員会が、そのためにトップダウンのそしりを顧みずに改革を断行したこともありません。
ですので、2020年からの教育がどう変わるかと言われれば、
- 生徒はメディアを通じて伝わるお上からの通達と、現場の先生の狭間で「どうなるの、おれたち?」という不安を増大することになる。
これはまぁ、間違いありません。
- 先生達は、予算措置もなく、仕事の負荷を減らすような措置もないまま、効果があるのかないのか分からない研修を強要され、まともなトレーニングの機会もないままに「新しい指導要領にしたがった授業をしなさい」と、形だけ整えさせられ、仕事上の負荷が激増することになる。
これも経験上、間違いありません。
- 高校受験、大学受験では、新しい理念にしたがった入試に対応できる塾・予備校、あるいはカリスマ講師がクローズアップされる。しかし、新しい理念に基づいた入試が本当に実現するのか、続けられるのかは不明。
生徒も保護者も一番気になるのがここなのですが、これはどうなるんでしょうね?(^-^;
残念ながら想像できません。
これまでの大学入試におけるユニーク入試、小論文入試の例から考えると、「次第にフェードアウト」というのがオチだろうとは思いますが…。
ということで、まったく救いもなければ、意味のある結論もないままに終わるとしていますが、教育に携わる心ある人達(親御さんもね!)は、ぜひ子ども達の明るい未来のためにも、文科省の理念を汲んで、価値ある教育を子ども達に与えていけるよう準備を進めていきましょう!