日本人は、なぜ英語を学ぶのに苦労するのか?そしてその対策とは?

ずいぶん昔(2008年4月)のNewsweek日本版に「ビジネス英語の科学」という記事がありました。
 
それが、ちょっとオモシロイ内容でしたので、今さらながらシェアしてみたいと思います。
 
名古屋大学教授木下先生らが、スペイン人など印欧語族の母語話者日本人が英語を聞いたときの脳の状態を光トポグラフィーで比較したそうです。
 
その結果、

両グループの英語力はTOEIC800点前後とほぼ同じはずなのに、リスニング時の脳血流量は日本人が有意に多かった。つまり、同じように英語を聞いて理解できても、脳にかかる「認知負担」は日本人の方が大きく、その結果、自分の意見をまとめたり、反論を考える余力が少ないと考えられる。

日本人は欧米人と、英語を学んだり話したりする時に使う脳(角回)の使い方が違うんですね。
 
「英語力」としては同じレベルでも、英語を使い続けると、印欧語族の皆さんと比べて余計に脳を使うことになり疲れ果て、とっさの切り返しができなかったり、思っていることがまとまらなかったりするのだそうです。
 
この記事には、その対策についても言及されています。

注目されるテーマの一つが、「とっさに言葉が出ない」という問題を解消するため、外国語を操る際の脳の負荷を減らす方法だ。

そしてその方法とは

繰り返し練習して処理を自動化すること。

なのだそうです!
 
音読を繰り返して自動化する?
 
いえいえ、そんな簡単な話ではありません。

ただし、むやみに繰り返しても効果は薄い。たとえば適切な冠詞を瞬時に選ぶ心的プロセスを自動化するには、まず「the」と「a」の選択一つで意味が変わる例文を用意する。そして、「例文を言うたびにその意味をイメージする訓練が肝要だ」とココーディア大学(カナダ)のノーマン・セガロウィッツ教授(心理言語学)は言う。
「何も考えずに機械的に反復しても、せいぜい発音が自動化されるだけだ」

これは示唆に富むアドバイスですね。
 
日本人は、脳の文法処理回路が英語と違うため「自動化」できない。
だから、それを丁寧に、意識的作業として反復トレーニングをおこない、自動的=無意識レベルで処理できるようにするというわけです。
 
スポーツでも、最初は意識的に、丁寧に体の使い方を確認していきます。
それを少しずつリズム良く、スムーズ、スピーディーにこなしていきながら、完全自動化していきます。
 
野球の「バッティング」であれば、

  • 1.フォームの確認(説明を受ける)
  • 2.鏡の前などで、自分のフォームを確認しながら、ゆっくりとスイング
  • 3.徐々にスムーズにおこなうようにし、最終的には無心に反復
  • 4.時々、フォームの乱れなどをコーチにチェックしてもらう
  • 5.一定の、ゆっくりの球を投げてもらい、フォームを確認しながらトスバッティング
  • 6.一定の球筋で投げてもらいフリーバッティング
  • 7.自由に球を投げてもらってフリーバッティング
  • 8.そこで乱れが出たら修正・スイング確認(素振り)⇒やり直し

という感じです。
違うところがあれば指摘してください!一応、1年間だけですが野球部の顧問をしていたので、だいたい合っていると思うのですが…(笑)
 
英語でも同じような手順が必要、と考えていいでしょう。

  • 1.単語、語順(文法事項)などの確認(説明を受ける)
  • 2.モデルリーディングを聞きながら、ゆっくりと音読
  • 3.徐々にスムーズに読んでいき、最終的には無心に反復
  • 4.語順と意味をチェックできる簡単なテスト
  • 5.少しだけ負荷のかかるテキストを使って、語順と意味を確認しながら、ゆっくり反復音読
  • 6.同じような、あるいはさらに少し負荷のかかるレベルのテキストを使って、スムーズ・スピーディーに反復音読
  • 7.様々なパターンで出力テスト
  • 8.そこでスムーズに出てこない文・部分があれば、重点的にやり直し

実際、この形式で作られた「ことのば」オリジナル英語教材を使った指導によって、「英語が苦手!」という子ども達が短期間で劇的に成績アップしています。

  • 中2の2学期まで30点以上を取ったことがない生徒が4時間×9日間の指導で中1からのすべての英文を完全暗誦。3学期の考査では80点以上をゲット。
  • 中2の2学期中間まで60点台しか取ったことがなかった生徒が、2時間×2日の指導で、期末考査で80点台をゲット。

というような例は、「よくあること」なんです。
 
英語はスポーツだ!

と思ってやったら英語は難しくないんですよ。(^^*

ちなみに英語を母国語とする人が日本語(その他のアジア言語)を修得するのにも苦労します。
1973年の調査という非常に古いデータですが、「米国国務省研修生が習得するのにかかった時間」を見ると、ヨーロッパ言語(フランス語、スペイン語など)は700時間程度なのに対して、日本語などアジア言語は2700時間以上必要としています。
もし「逆もまた真なり」だとすると、日本人の英語学習時間は圧倒的に不足しているってことかも知れませんね!

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この記事を書いた人

フォーカス・リーディング主宰者

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