まだ間に合う!中高で夏の定番宿題(?)「税の作文」を攻略せよ!

恐らく、夏休みの宿題として「税の作文」を書かされた経験を持っている方も多いと思います。
 
私も、中学・高校教師だった頃、生徒に書かせたことがあります。
 
あれは国税庁が機械的に送りつけてくるものなんです。
それを生徒に「宿題」として書かせるかどうかは、「先生次第」です。
 
私の場合、自分が主導権を持っている学年では書かせませんでした。
 
だって、論文の書き方の指導もしていないし、税金について指導したわけでもないのに、作文だけ書けっていうのは、無責任ですよね?
 
書かせている学校の先生方も、「とりあえず書かせておくか」というお役所仕事レベルの意識だと思いますよ。
予想では作文に目を通しておらず、「提出したかどうか」で平常点に加算する程度でしょう。
 
 
つまり、あの税の作文には教育的な意味はほとんどないんです。(きっぱり!)
 
 
でも、せっかくやるんだったら、教育的価値を持たせたいと思いますよね?

[toc]

1.税の作文で学ばせたい「論理的に意見を述べる技術」

今回はこういう前提で解説します。

  • 中身は問わない。提出することに意味がある。
  • 税のことはよく分からない。授業でも学んでない。

中2の3学期に論理的文章の基本となる証明問題も勉強することですし、「論理的に語る」ことに慣れておくことは意味があるのではと思います。
中3生であれば、数学の証明問題の復習にもなるでしょうか!

1-1.数学証明問題の論理構造

ここで解説しようと思ったら、過去に数学の証明問題の解説をしていたことを思い出しました!
まずは、こちらの記事をさらっと眺めてくださいませ。

[blogcard url=”https://www.kotonoba.jp/learning-tech/proof-question-in-math/”]

1-2.論理的文章の基本形「証拠列挙」で書く

こちらの記事の中にある、このフォーマットをそのまま利用しちゃいます。
論理的文章の基本ともいえる「いくつかの証拠を列挙して主張する」というパターンです。
 
2triangles-6

2.とりあえず、頭の中のカオスを紙に吐き出す

中学生段階で「税金についての意見」なんて、なかなか持てないと思うんですよ。
いや、持っているかも知れないけど、それほど確固たる根拠があるわけじゃないのでは、と。
 
でも、主張の軸が定まらないと文章が作れません。(汗)
 
そこで、日頃なんとなく感じている「税金にまつわるあれこれ」を書き出していきましょう。
ネットで適当に「税金 問題」とか検索して、気になる言葉をピックアップしてもいいですね。

  • 買い物するとき消費税うぜー。
  • 公立学校って税金だよね?
  • じいちゃんの病院代も税金が入ってるのかな?
  • 僕らの将来は人口も減るし、子どもも減ってるし、なんかヤバイらしい。
  • 国の借金がすごいことになってるらしいけど、日本はギリシャみたいになるの?ならないの?
  • 東北・熊本の震災復興に、もっと国や県はお金を出せないの?

ほんと、気軽に適当に書き出していきましょう。

3.主張の方向を決める

いろいろ知ってることとか、ネットで見つけたことも考慮に入れながら、今回の作文の「主張」を決めます。
 
ここで悩まないように!
「とりあえず提出すればいい!」という方針を堅持しましょう!!
 
ただし、ネットで調べたり、作文用紙とセットで配布された資料に書いてあったことだったり、「知った」程度のことで主張を決めてしまうと、絶対に原稿用紙3枚は埋まりません。
 
あくまで、実感と体験をベースに書けそうな主張を考えましょう。
分かりやすくて、実感を持てるのは「消費税」だろうなと思います。異論は認めません。

  • 政治家は勇気を持って消費税増税を実効しろ!
  • 消費税は子どもの敵だ。廃止して欲しい。

このあたり、本人がどの程度の問題意識と知識を持っているかにかかっています。
気楽に考えましょう。

ここはあくまで「原稿用紙を埋める+論理的主張を学ぶ+最小限の時間と労力で済ませる」ことだけにフォーカスしていることをお忘れなく。

4.根拠を3つ挙げる

根拠として挙げるのは、別に3つである必要はありません。
実際には、多様な視点から根拠を挙げるのが理想ですよ。例えば「税の本来的意味」、「歴史的経緯」、「世代間の負担の公平性」みたいな感じでね。
 
でも、今回はそんな難しいことは考えません。
1200文字を埋めるのには文字数的に3つの証拠くらいが無理なく書けるだろうという程度の理由で3つとしています。
 
挙げるべき根拠は、あくまで自分の体験をベースにしたものにします。調べたことだと、薄っぺらくなってツギハギ感満載になりますので。
「とりあえず出す」とはいえ「論理的で説得力がそれなりにあるように見えなくもない」ものを目指します。

4-1.例えば「消費税増税賛成!」なら

まず「増税賛成」の根拠となる「事実」を述べます。
その事実が本当のことだと主張できる具体的体験や資料を提示しましょう。
 
多少の事実誤認があろうが、事実を間違ってとらえていようが気にするな!
夏休みはもうすぐ終わる。時間がない!

数学の証明なら「AB=CDである」という事実を提示し、「なぜなら平行四辺形の対辺だから」という説明を添えていますね。

根拠1.高齢者を支えるのは家庭じゃ無理だ!
  • 体験
    うちにはじいちゃん、ばあちゃん、ひいばあちゃんの3人の高齢者がいるが、年金と保険のおかげで生活が成り立っている。
    税金、ありがとう!
  • 資料
    年金・保険における国庫負担の割合。高齢者の割合の変化、必要とされる税金の予測など
  • まとめ
    今まで社会を創り、支えてきた高齢者を支えるのは社会の責任だ。これはご恩返しなんだ。
根拠2.高校・大学に行きたいが、親の金は当てにならない!
  • 体験
    今、受験勉強に必死だ。
    うちに兄ちゃんの時は高校の学費が無料だったらしいが、今はお金がかかるらしい。親から「私立にやる金はないわよ!」と言われている。
    友達にも経済的に厳しいから公立しかいけないという人もいる。
  • 資料
    高校、大学の私立と公立の学費の差。
  • まとめ
    これからの社会を担う僕らに投資をして欲しい。その分、しっかり働いて税金を払うぜ!
根拠3.誰かに払ってもらうのではなく、みんなで負担したい!
  • 体験
    買い物のたびに税金が気になる。特に8%に上がってから、明らかにお菓子の値段が上がった。でも、だからこそ税金のことを真剣に考える。
  • 資料
    直接税と間接税の割合、世界各国の消費税事情、消費税による増税効果の試算
  • まとめ
    みんなで公平に負担している実感があり、払っている痛みを実感することは、税金の使い道を真剣に考え、政治参加を促すためにも必要ではないか?

こんな感じでさくっとまとめよう!

5.列挙された事実をひとまとめで言う+反論に備える

数学の証明問題であれば「1,2,3より直角三角形において・・・」とやったように、これら3つの事実からどんなことが言えるかまとめます。
 
さらに、ネットで見つけた「反論」に対して、自分なりに反論を考えるか、その反論への反論をネットで探して置こう。
この「予想される反論への反論」は、意見作文の定番です。

世間的には「消費税増税反対」一色だ。安倍総理も増税延期を表明したばかりだ。
確かに増税で経済が停滞して、さらに税収が悪化するとしたら、それは意に反した結果かも知れない。
しかし、・・・。
また消費税そのものに「逆進的だ」と批判する人達も多い。だが・・・。
負担が増えても、それで自分たちの未来が明るくなると確信できるなら増税に反対する人はいないはずだ・・・

こんな感じで!

6.「書き出し」を考える

証明問題であれば、「△ABCと△DEFにおいて」というふうに着眼点を明確にします。
論理的な文章では、主張を最初に表明するとともに、その主張につながる体験や想いを書きます。
 
例えばこんな感じね。

少し前、ギリシャの財政破綻の話がニュースでしきりに騒がれていた。
ギリシャ人は、自分たちが働かないことも、国家財政が破綻していることも、どうでもいいことと考えているかのような報道があり、びっくりした。
普段、税金のことなど考えない。せいぜい部活の後のジュースやお菓子を買うときに「税金、うぜー」と思うくらいだ。そういう意味では、僕も番組で見たギリシャ人と同じレベルなのかも知れない。だから、消費税が10%に上がるなんていうニュースには「反対だろ」の一点勝負だった。
そんな僕の意識を変えたのは熊本の大震災だ。今、僕の家が地震でなくなったら? そう考えると、震災は他人事でない。地震から4ヶ月経過しても、復興はままならないようだ。国が人々の生活を守り、その分、僕らは税金をしっかり払う。それが筋ではないか?
今や、僕は「消費税増税、大賛成」に変わったのだ。

これだけで字数370文字。改行したら余裕で原稿用紙1枚クリア!
(これはさすがに長すぎだね。)

7.およその内容をフォーマットに埋めていこう

上に示した論理展開のフォーマットに、ここまでの内容をざっくり埋めてみよう。
何を書くかというトピックスを並べる程度でOK。

8.いざ、原稿用紙に清書!

原稿用紙に清書する前に、だいたいの行数を割り振ってみよう。文字数じゃなく、行数で考えるのは、その方が原稿用紙に書きながら、ボリュームを考えやすいから!

  • 導入:12行
  • 根拠1:8行(小計:20行)
  • 根拠2:8行(小計:28行)
  • 根拠3:8行(小計:36行)
  • 説明:12行(小計:48行)
  • 結論:6行(小計:54行)

54行ってのは3枚の原稿用紙60行の9割。
まさに理想的な行数!
 
多少の増減がアルコとを考えると、ほどよいボリュームですね。(^^)
 
ここまでできたら、あとは必死で文字を埋めていくだけです。
がんばれ中学生!

おまけ(または裏技)

実際に指導した中3生が要した時間

ことのばの教室に通う中3生にこの方法で書かせたところ、3時間かからずに書き上げました。
構想からネットでの調査、清書までで。
 
親御さんからも感謝のメールが届きましたよ。(笑)

中高生が書いた実例からヒントをもらう?

過去に受賞した作品を読んでインスピレーションを受けるのもいいことですね。
 
いい? あくまで「インスピレーションを受ける」だけですよ。
その上で、上記の流れで自分流の意見を書いてくださいね。(^^)

[blogcard url=”https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/gakushu/sakubun/chugaku/h27/index.htm”]

本来はね・・・

ま、本当のことを「教育的に」言えば、これをきっかけに夏休みに時間をかけて税金のことを調べて、自分なりに意見を構築していくというのが理想です。
 
でも、それって本当は社会科の授業でやるべきことなんですよね。
 
現実にはそれが完全に欠如しちゃってます。
 
そういう現実があって、しゃーないから、せめて論理構造をなぞって意見を主張する練習になればと思って、こんな「作文のやっつけ方」をご紹介したまでです。
(私も書かせた経験がありますので、その反省も込み込みで!)
 
 
じゃ、中学生諸君の健闘を祈ります!
浮いた時間でしっかり受験勉強に勤しむのだよ。

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この記事を書いた人

フォーカス・リーディング主宰者

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