今日は小学校で読み聞かせをしてきました。
読んだ本は『このよでいちばんはやいのは』という科学系の読み物。
動物の速さから始まって、鳥、魚、乗り物、音、光…と紹介されていきます。
子ども達は「もっと速いものって何だろう?」と考え、「えっ!そんなに速いの?!」と驚き、終始興味津々、前のめりで聞いてくれました。
本の〆には、光より速いものがある、それは人間の想像力だ…と、想像力を働かせることのすごさを子どもたちに伝え、それを豊かにすることの必要性を考えさせる内容になっています。
想像力、「頭(脳みそ)」を鍛えるにはどうしたらいい?
読み聞かせが終わった後、子ども達に発問してみました。
「想像力を豊かにするには、どうしたらいいと思う?」
「勉強!」「読書?」── いろいろ出てきます。
その中で「筋トレ?」と言った子がいました。
たぶん、ウケ狙いのギャグのつもりだったんでしょうけど。
でも、それが正解!
いや、筋トレじゃないね。(笑)
正しくは、体を動かして遊ぶこと、運動すること。
養老孟司さんの本にみる「外遊び」の効用
養老孟司さんの本『バカにならない読書術』にこんなくだりがあります。
じゃあ、どうすれば脳が発達するのか。
残念なことに、それは、具体的にはあまりよくわかっていません。人間の成長というのは、非常に長いスパンで観察しなければわからないからです。
ただし、「識字率」については、わかっていることがあります。
子どもが文字をどれくらい早く覚えるか、ということと一番関係が深い生活習慣は何か。それは外遊びの時間です。
この後に、それがなぜそうなのか説明が続くのですが、長くなるので割愛。
簡単に言えば、体を動かすというのは脳の中で「入力」「演算」「出力」までが繰り返しおこなわれる作業であり、目で見たもの、体に触れたものを認識し、体の使い方をコントロール(身体各部のコミュニケーションを統合)しながら出力につないでいく作業である、と。そうやって脳の処理能力が上がるんだよ、それが言葉を学ぶ力につながるんだよ、と。
ちなみにこの本、子どもを賢い子に育てたい親御さんは必読です!(といっても子育てに役に立つのは第1章=最初の30ページくらいだけですけど。)
ネーパーヴィルの体育実験にみる「朝の運動」の効用
「運動が脳の機能を最善にする」ことを科学的に解説した本があります。
『脳を鍛えるには運動しかない!─最新科学でわかった脳細胞の増やし方─』という、一見すると自己啓発書に見えてしまうタイトルの学術書。
イリノイ州シカゴにあるネーパーヴィルという町の高校生は、世界の約23万人の学生が参加するTIMSS(国際数学・理科教育動向調査)のテストで、数学世界6位、理科世界1位という結果を出しています。
ネーパーヴィルで学力向上のためにおこなわれているのは、なんと体育。
学校の1限目が始まる前に、「0時限」として「学習準備のための体育」と名付けられた授業が、カリキュラムに組み入れられているのです。
本書は、そのネーパーヴィルの取り組みの他、様々な研究データを紹介しながら、運動こそが脳細胞を増やし、学力向上に大きく寄与することを語っています。
いくつか、かいつまんで紹介すると…
- 学期の最後にリテラシーの授業で、リーディング力と理解力のテストをしたところ、朝寝坊を優先して普通の体育にしかでなかった生徒達の成績は10.7%の向上にとどまったが、「0時限」の授業に出た生徒達は17%もの伸びを見せた。
- リテラシーの授業を受ける生徒達は2つのクラスに分けられ、一方は運動の効果がつづいている2時限目に、もう一方は8時限眼に授業を受けた。予想通り、2時限目に授業を受けたクラスは最高の成果を出した。
- フィットネスグラムのうち、BMIと有酸素運動能力の2つが成績を向上させる誘因であると予想される。
- 学習のプロセスで重要なはたらきをする分子を運動が刺激することをはっきりと証明し、運動と認知機能が生物学的に結びついていることを突き止めた。
- 運動の明らかな特徴のひとつは学習効率を向上させることです。
…ということなんですね。
想像力を鍛えるには、運動、そして体験が重要!
想像力を鍛えたかったら、運動を通じて神経、脳を発達させなさい、というわけです。
また私たちは幼少期、「言葉」の獲得過程においても「身体で対象物とかかわるなかで、語の意味する内容をいわば体得」していくと考えられています。(正高信男著『子どもはことばをからだで覚える』)。
本を読み、教科書で学ぶことも、もちろん語彙を増やし想像力を豊かにしてくれるわけですが、その大前提は脳の発達にあり、それは運動、体を使った体験によって作られるわけですね。
そういえば、『読書と豊かな人間性』という本の中にこんな言葉がありました。
「想像力が乏しい者に無理やり読書をさせようとすると、かえって想像力にけがを負わせることがある」
ちょっと文学的に過ぎる表現ではありますが、その本質的な部分は養老孟司氏の本などとあわせて理解しておきたいものです。