小中学生の英語をどうやって得意教科にするか?

2016年02月03日の日経新聞に、こんなショッキングな記事が掲載されました。

中3英語力 国の目標遠く
文部科学省は2日、英語の「聞く・話す・読む・書く」の4技能をみるため中学3年生を対象に初めておこなった英語力調査の結果を発表した。中学卒業段階で実用英語技能検定(英検)3級程度以上の英語力を持つ生徒の割合を2017年度までに50%にするという政府目標に対し、4技能とも2〜4割にとどまった。意識調査では4割以上が「英語が好きではない」と答えた

ちなみに、同じく高校3年生には「英検準2級程度」を目標としているらしいのですが、これも「読む」・「聞く」で30%前後になっているものの、他の2つは10%台という状態です。

日本人全員に、そんなに高い英語力が必要とも思いませんが、せっかく授業でたくさんの時間を割いて英語を学んでいるわけですから、コミュニケーションのツールとして使いこなせるレベルには到達させて欲しいものですよね。

というわけで、今回は小中学生のための英語の学習法について、その効果的な学び方のポイントを整理してみました。

1.小中学校の英語授業が本格化?−小中学生の英語教育の現状−

1-1.実施時間数・内容

現在、年次進行で実施されている学習指導要領の下では、小学校5,6年生では週1時間、中学校では週4時間の英語授業が実施されています。

1-2.小学校と中学校のギャップ

以前の記事でも紹介したとおり、小学校の英語授業は基本的に「遊び」レベルのものでしかないようです。

「英語って楽しい!」と思わせることでは成功していますが、残念ながら中学校に入って「英語力」につながっているかというと、かなり微妙な状況です。

小学生の英語授業の目標は基本的に「英語でのコミュニケーションを体験する」こと。内容は会話を中心とした簡単なものになっており、特に到達目標は設定されていません。

さらに、学習指導要領では次のような配慮事項が挙げられています。

音声面を中心とし,アルファベットなどの文字や単語の取扱いについては,児童の学習負担に配慮しつつ,音声によるコミュニケーションを補助するものとして用いること。

これに対して中学校では授業時数が3割増えたことに伴い、単語数でいうと、マスターすべき単語数を900語ほどから1200語ほどにレベルアップされています。

しかも、基本「読み」と「書き」が中心の授業とテスト。そりゃ子ども達はギャップに苦しむでしょうね。(^^;

小学校時代に、せめて「語順」を明確に意識したトレーニングや、発音と綴りとの関係を理解するフォニックスを学ばせてもらえると、中学校の先生は本当に楽になるんでしょうけど!

2.英語学習を進める上でのポイント

2-1.英語の前に日本語!!

私の指導した経験からすると、英語が苦手な子どもは基本的に国語もあまり得意ではありません。
文章を感覚的に何となく読んでしまい、分析的に読むのが苦手なんです。

でも、この「分析的に読む」ことが、英語学習の第一歩として非常に重要です。

日本語の短文であれば、「てにをは」のおかげでスムーズに意味を処理できますが、英語は「語順」だけで意味の流れが決まりますよね?

日本語を英訳する場合、日本語の文を分解・分析し、そのつながりを正しく把握した上で、英語の語順に並べ替えなければならないわけです。その最初の部分「日本語の文を分解・分析」する段階で悩んでいれば、当たり前ですが英語への翻訳の前に撃沈します。

例えば、ことのばの英語教室・速読教室では「文の分解」練習をしているのですが、こういう長い文のつながりをスムーズに解析できるかどうか、です。

私は、父がインドから買ってきたたくさんの種類のスパイスを使います。

ちなみに、これを分解して言葉の係りと受けが一目瞭然になるように配置すると、こんなかんじです。

こういう「つながり」をして、日本語を正しく分解できるようになるり、ついでに「主語−述語(動詞)−目的語」のつながりを整理できると、後はこれを英単語に置き換えるだけでいいわけです。

2-2.習うより慣れろ!

英語はあくまで「外国語」です。
よく「ネイティブの子どもが学ぶように学べばいい!」なんて話も耳にするのですが、それは無理な話です。
だって、すでに母国語である日本語、しかも文法体系がまったく違う言葉がインストールされてしまっていますから。それに、英語と触れあう時間、量がまったく足りませんよね。(^^;

だから、私たちはあくまで日本語を通して英語を理解し、修得していく必要があります。
そしてその方法は、基本的にスポーツや楽器、あるいは他の技能(パソコンなど)をマスターするのと同じ方法がいいんです。

まずは「頭で概要を理解する」こと。
いきなり細かなことまで「分かろう」とすると、「分からない!(汗)」というストレスが生まれます。あくまで、ある程度分かったところで、後は体当たりで憶えてしまうのです。
これはたびたび紹介しているUプロセス学習理論の入力のプロセスですね。(下3-1図参照)

もちろん、このとき漫然と機械的に口に出しても意味がありません。英語の語順通りに、日本語の「てにをは」を付けた訳を意識しながら、英語の語順と日本語の意味をリンクさせながら体に染みこませていくようにします。

2-3.「読んで分かる」から「使える」まで一気に!

学習に取り組む際、どうしても「英文を読んで、日本語訳がだいたい頭に思い浮かぶ」で満足しがちです。しかし、これはUプロセスの左下の入り口。つまりまだ「入力の途中」でしかないのです。ここで終わらせるから英語が「分かったつもりで身についてない」状態で終わってしまいます。

単純な全文暗誦を越えて、ある程度自由に使いこなせる(=Uプロセスの右上のフェーズ)というレベルまでやって、学習を終えなければなりません。

3.英語学習の流れ

3-1.Uプロセスでの学習ステップ

Uプロセス学習理論に当てはめるとこういう感じですね。

以下、もう少し具体的にその方法を解説します。

3-2.予習段階

ここでは以下の各要素を確認するだけ。時間も労力もかけません。まして「憶えよう」とか「理解しよう」とかがんばる必要もありません。

  • 英単語…代表的日本語訳、今から学ぶ文脈での意味の確認
  • 英文法…5文型、接続詞などの確認(教科書ガイドなど)
  • 語順…一度、今から学ぶ英文をすべて、日本語訳・語順を意識しつつ、ゆっくりと朗読します。

3-3.徹底反復入力段階

日本語訳・語順を意識しながら、丁寧にテキストを音読していきます。
無理に急いで音読するよりも、いちいち日本語の意味を思い浮かべながらチャンク(言葉の句切り)ごとに音読しましょう。

ある程度、スムーズに音読できるようになったら、モデルリーディング(朗読)にかぶせるようにして音読していきます。(オーバーラッピング)
これがまったくとちらずに、スムーズに読めるようになったら終了してOKです。

3-4.徹底反復出力段階

繰り返しの朗読で、どのくらい入力できているのかを確かめるために、通常の和文を見ながら、一文一文英訳していきます。思い出せない単語はアンダーラインだけ引いて飛ばします。英文の構造がだいたい出てきたらよし、と考えましょう。その上で、一文毎に答え合わせをして、正しい文をインプットし直します。

それができたら、次は習熟度に応じて、いくつかのパターンのテキストを見ながら反復出力(音読)演習をおこないます。

  1. Level 1.英語語順の日本語訳(SVOC順和文英訳音読)
  2. Level 2.ばらばらになった英単語(パズル英文音読)
  3. Level 3.通常の日本語訳(和文英訳音読)
  4. Level 4.最初の一語の日本語(完全想起音読)

3-5.応用出力段階

ここまでで、だいたい英文は暗誦できているはずですが、念のため確認し、もし弱い部分があれば3-3もしくは3-4に戻ります。
確認方法は簡単です。まず、英文を音読し、そのタイムを測定します。次に3-4で使用したテキストを見ながら音読して、そのタイムを測定します。

この2つの音読のタイムを比較して時間がかかっている文(要するに途中でひっかかった文)こそが再トレーニングすべきものですね。

さらに、基本問題集に取り組んでスムーズに解けるかどうかのチェックをおこないます。
その際、単に点数とか正解・不正解ではなく、各問題について次の5段階で評価していきます。

  • Level E.迷った挙げ句、間違った
  • Level D.迷ったけれど、正解した
  • Level C.スムーズに解いて不正解だった(ケアレスミス・勘違い)
  • Level B.やや思い出すのに時間がかかる要素はあったが、ほぼスムーズに解けて正解した
  • Level A.問題なくスムーズに解け正解だった

この評価を見て、何をどこまでやり直すか考えましょう。応用問題で手間取る要素が多いようであれば、3-4で使うテキストを見直すとか、途中でレベルを上げるとか、やり方を考えてもいいかも知れませんね。

4.まとめと提案

このパターントレーニングは小学生の英語から社会人のTOEIC対策(〜800点)まで、まったく同じやり方で学習可能です。

ぜひ、このやり方を基本にして、今使っているテキストの活用法を工夫してみてください。

ことのばでは、オリジナルの英文を使って、小学校卒業までに英検3級に合格させられるようなプログラムを組んでいこうと考えています。

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この記事を書いた人

フォーカス・リーディング主宰者

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