学校の勉強が定着するだけじゃなく、より強化される「つながりノート」のヒミツ

今日のテーマ
ただキレイに書き写すだけのノートは無駄
「つながり」作りこそが学力向上の鍵!

「ただ教科書を音読し、先生の書いた黒板を丸写しし、教科書の重要語句を単純暗記するような学習じゃだめだ」

この問題意識は、私が教師になりたての頃、1990年代に社会全体で共有されていたはず。
それが明確に示されたのが教育指導要領の大改訂でした。

新聞などでも、「どうしたら、第2のビル・ゲイツが出てくるのか?」といった切り口で、「創造性・独創性を育む教育」について語られることが多かったことを記憶しています。

当時の教育委員会の先生方は「この改訂は、明治初期の教育勅語、戦後の教育改革に次ぐ、第3の教育改革です」と力説なさっていましたっけ。
いかにして高い情報処理力をつけさせるか、高い論理思考力を付けさせるか、そこが日本の教育の課題だってことは、もうこの30年来の日本教育の課題であり続けたのですが…。
残念ながら、それは改善されることなく30年が経とうとしています。

College is a place where a professor’s lecture notes go straight to the students’ lecture notes, without passing through the brains of either.
▼寺田のてきとー訳
大学とは、教授のノートが学生らのノートにダイレクトにコピーされるところだ。しかも誰の脳みそも経由せずにね。
──Mark Twain
Mark Twain

マーク・トウェインといえば、『トム・ソーヤーの冒険』や『ハックルベリー・フィン』などの物語と、シニカルな名言で有名です。
当時のアメリカの高等教育も、こんな感じだったのか…と、ちょっと感慨深さもありますが、当のアメリカは最先端の教育理論とメディアを採用して、どんどん進化していっています。

ノートの効果的なとり方についても、様々な形で研究され、提案されています。

目次

効果的なノートのとり方ってどんなの?

ちなみに、ノートについての研究の中で「効果の上がらないノート」というのも明らかになっておりまして、

  • 単に先生が書いた黒板を書き写すようなノートに学習効果はない
  • ノートを丁寧にまとめても学習効果は期待できない
  • 書いたノートを眺めて復習しても記憶は強化されない

こういったことが分かっています。

そして「学習効果が高いノート作り」についても、様々に研究され、現場で活かせる形で具体的に提案されています。
例えば、こちらはアメリカの教育界では非常にポピュラーな「リトリーバル・プラクティス」について教育研究者が解説しているサイトのブログ。

ここでは、効果的なノートとして「つながりノート」と呼ばれるものを推奨しています。

学習効果が高い「つながりノート」とは?

Ask students to dedicate a specific notebook as their Connection Notebook at the beginning of the semester (or provide one for them) and have them to bring it to class every day.
生徒には、学期の初めに「つながりノート」として特別なノートを用意させましょう(提供してもいいですね)。そしてそれを毎日、授業に持ってくるように指示します。
Approximately once a week, ask students to take out their Connection Notebook and write a one-paragraph response to a “connection prompt” at the end of class. For example:
そしておよそ1週間に一度くらい、つながりノートを取り出させ、授業の終わりに次のような「つなげよう質問」に答える形で1パラグラフで書き取らせます。
・How does what you learned today connect to something you’ve learned in another class?
・今日学んだことは、他の授業で前に学んだこととどう関係しますか?
・Have you ever encountered something you learned today in a TV show, movie, song, or book?
・今日学んだことは、過去にみたテレビ番組や映画、聞いた歌、読んだ本とつながることがありますか?
・Have you ever experienced something you learned today in your life outside of school?
・今日学んだことは、過去に学校以外の生活の中で経験したことがありますか?

ポイントは、次の3点に集約されます。

  • 思い出して書くこと
  • 新たに学んだことと、過去に学んだこと、自分の経験などをむすびつけること
  • ある程度、時間をおいて取り組ませること(その日その日ではなく、週1回)

ノートのとり方が変わると、頭の使い方が変わります。
ここで提案されているノート法は、最先端の認知科学・脳科学の知見から非常に高い効果が期待される(そして実際に効果を上げている)ものなのです。

黒板丸写しノートに効果はある?

これに対して、日本の教育は未だにマーク・トウェインが揶揄して語った150年前のアメリカと同じところにいるようです。

小学校の教育は未だに「先生が書いた黒板(板書)を丁寧に書き写す」ことを大事にしており、むしろ積極的にそういう古い(そして効果がない)やり方を推奨しています。

確かに小学校の3, 4年生までであれば、鉛筆を使いこなせていない子どもも多く、素早く整理して書くようなことはできません。でも、だからといって先生が書いた黒板を、何も考えずに書き写させるだけの作業に何か積極的な意味を見出すことは困難です。

せめて、上記のように自分の考えを書かせたり、過去の体験と結びつけて考えさせたりといった、能動的な学習や工夫の余地はないものでしょうかね。

工夫してノートを取りなさい、という指示は少しずつ練習していかなければならないかも知れませんが、その前段階として、上記の「つなげよう質問(Connection Prompt)」のような形で、既有知識・体験と結びつけていくような体験をさせることは、とてもお手軽ですし、学習効果の観点からも有意義です。

ちょっと試してみたくなりますよね。(^^)

ことのば式社会科リトリーバルノート

ちなみに、ことのばの中学校社会のノートまとめでは、ここまでのレベルではありませんが、教科書で学んだこと、先生が語ってくれたこと、資料集や問題集に書かれていたこと、過去に別単元で学んだことなどを盛り込みながら書かせるようにしています。

これも同じ原理(理屈)から考案したものです。

テスト前などにノートを作らせるだけで頭が整理されますので、お勧めですよ。

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