「文章が読める」は子どもたち本人と私たち日本社会の未来を救う

読んでよく分からない、難しい文章を読んでイラッときて、読むのをやめた。
小難しい話がよく分からないので「漫画で分かる」を買ってきた。
自分なりに「分かった」と思っていたことと、他の人の意見とか感想に書かれていることが違った。あるいは、レベルが違った。

大人でも子どもでも、ありがちなことかも知れません。
でも、これでは玉石混淆の情報氾濫から身を守れません。知的な仕事は選択できそうにありません。

AIがこれだけ人間の知性と対等な作業をこなせるようになって来ると、少なくともAIに適切な指示を出せるとか、AIが出してきた文章を精査できるとか、そのレベルの「言葉の力」を持っていないとAIの下請け作業しかできなくなります。

文章、情報を的確に読み解き、その意図、真偽、構造をくみ取る力がなければ、未来への道はどんどん狭くなっていきます。人との競争に勝てないだけでなく、AIとの競争に勝てないわけですから。
でも、読解能力、情報分析能力は誰でも、何歳からでもやり直せるし、高める事ができます。

高い読解力・読書力は未来への選択肢を広く、豊かにしてくれる。── そう確信しているからこそ、私は「読解」と「読書」、そして「作文」にこだわっています。

目次

リテラシーの大イベント in USA

コロナが大流行する半年ほど前に、アメリカのNew Orleansに行ってきました。

Location of New Orleans
こんな場所です。ミシシッピ川下流、メキシコ湾岸にある町。

目的はInternational Literacy Association(ILA/国際リテラシー協会)の年次カンファレンスに参加すること。

「リテラシー」への熱気が凄い!

4日間にわたり、様々なイベントが開催されるのですが、初日は朝7時から始まった受付で長蛇の列。

初日(現地時間10/10)は朝8時から夕方4時まで、みっちりと分科会でした。
私が参加した分科会は「Balanced Literacy: Reading and Writing Instruction in Elementary School(バランスの取れたリテラシー:小学校における読解および作文指導)」というタイトルでしたが、全米から小学校の先生らが200人以上参加しています。

《分科会のお部屋の様子:休憩時間》

こういう分科会が9つありましたが、とても熱気に溢れ、意欲的に発言、質問します。そして何より、皆さんそれぞれ、日頃から指導法を学んでいらっしゃることが伝わってくる発言が多く、感心するばかりでした。

2日目のオープニングはホールでプレゼンテーション。
その中にはクリントン元大統領のお嬢さんで、ベストセラー作家(絵本作家)であるChelsea Clinton氏も。
Ms.Chelsea Clinton

2日目のその後は、研究者が中心となって開発している読解教材や作文教材の案内を兼ねて、学習法のポイント指導が、いくつものブースで行われました。
アメリカという国は、教育の研究者がちゃんとビジネスをやっていて、ちゃんと研究の成果が現場に降りてきているんですね。もちろん、それはビジネスだけではなく、日常的なブログやTwitterでの発信を通じて、どんどんシェアしています。

こちらは協賛企業のブースに展示されている「レベル別読解練習テキスト」のラック。
日本ではこういうレベル別のテキストって、一部の問題集でしか見られません。これはうらやましい…。

このILAも「研究と現場をつなぐ」ことを標榜しています。研究者達も、しっかりと現場を持っていますし。
そしてILAは、世界中の子どもたちは「読む権利」を持っていて、それこそが子どもたちの未来を作るのであり、良好なリテラシーとリテラシーを育む環境を与えるのは大人の責任だということを主張(というか体現)しています。

日本の読書/読解研究

私は日本読書学会という学会にも所属していますが、残念ながらそういう活動がありません。

アメリカでは、移民をはじめとする様々な人種、貧困・・・そのような状況の中で「言葉の教育」が豊かに育ってきたのだろうと推測しています。ひるがえって日本では(先日の記事でも書いたことですが)「とりあえずフリガナさえあれば読める」という状況も手伝ってか、読書指導も作文指導も、それほど注目を浴びることがありません。

研究者の先生方や現場の先生方は、日々、熱心に研究されていることは間違いないのですが、それが現場に降りてこない。ビジネスとして展開されない。なので残念なことに「知る人ぞ知る」レベルで終わっています。

そもそも、研究や実践の内容が「Not Balanced」になっているように感じています。

  • 作文指導と読解指導のバランス
  • 精読指導と速読指導のバランス
  • 一斉授業と個別学習のバランス
  • 物語テキストと説明的文章テキストのバランス

まさに、今回私が参加して学んだ「Balanced Literacy」の悪い例を見ているような気分にさせられます。

具体的な問題にフォーカスした研究はされているのですが、大局的な「指導法」とか「読解法」「作文法」といった研究が全然見当たりません。現場の学校の先生が熱心に学んでいるという話もあまり聞きません。
この状況を変えないことには、これからAI時代に求められるだけの読解レベルも、知的レベルも上がらないよねーなんて、ちょっと恐ろしく感じています。そして、何かそれを変える方法ってないものかねーなんて考えているところです。

そんなこんなで、私は九州大学大学院(修士修了+博士課程単位修得満期退学)で読書教育研究に取り組んだわけですが、文献はほぼ英語でした。日本の論文や専門書はそれほど多くありません。
ことのばでの指導も、アメリカの研究や指導書、ワークブックを取り寄せて、日本の子どもたちの現状に当てはめながら指導していました(2025年現在、すでに閉鎖していますが)。

私の研究の一番のネックは英語力が低すぎることでした。(苦笑)
吸収するスピードが日本語の10分の1くらいの感じで、自分でもイライラしていました。
自分の体験でも「日本人が一般教科を英語で学習する」ことのおろかさを実感します。(実際、オールイングリッシュ環境で学ぶ小中学生の学力の低さに驚かされたことが度々…)

今は「研究」の環境からは離れてしまっていますが、細々とでも、子どもたちの読解力向上に役立つ活動を続けていきたいと思います。

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