読書における『「分からない」が分からない』問題

とてもよくあることなのですが、読書経験のうすい子、「まったく本を読もうとしないので、指導をお願いします」なんて感じで教室につれてこられた子に限って、1ヶ月もたたないうちに、とんでもない速さで読んで「十分理解しています」なんていうことがあります。
 
以前、記事としても書いたことがありますが。

[blogcard url=”https://www.kotonoba.jp/kids-sr/kids-can-get-high-power/”]

「え? それ本当にちゃんと読めてるの?」
「はい、ちゃんと読めてます」
「ほー、そうか。そりゃすごいな。(ま、いいや。)」
 
そんな不毛なやりとりが生まれるんですよ。(笑)
 
その真相や、いかに?
 
そういう子が突然、天才的に速読能力を身につけて、本が読めるようになったのかといえば、まったくそんなことはありません。
単に「自分が読めていないことに気がついていない」だけなんです。
 
だって、もともと「本を読んで理解する」という体験が希薄なわけですよ。
速読トレーニングで「文字に目を通せる」ようになって、「おー、すごい!目が通せる!」=「すごいスピードで読める」になってしまうわけ。
 
「読める」の基準がないんです。

読書における「分かる」の構造

読書で「分かる」という感覚を持つのには、少なくとも3段階の「分かる」を越えなければなりません。

☆ミクロレベルの「分かる」
 ⇑
1.文字・単語の処理のレベル
2.文の処理のレベル
3.談話(文脈)の処理のレベル
 ⇓
☆マクロレベルの「分かる」

1には「文字」とか「語彙」の能力が関わります。
2だと、文法的な読解力、国語の授業レベルの読解経験が関わります。
3になると、文脈の処理、論理構造の把握、社会や時代背景に関する知識など知識や能力が関わります。
 
読書経験がうすい子どもにとって、もともと1のレベルしか経験がなく、アタマの中に文脈ができていく、シーンが形成されるような感覚がないと考えられるわけです。学校の授業や宿題で音読はありますが、音読だってただ声に出しているだけで、その時にシーンがアタマの中に広がっているかというと、そうじゃないわけです。
 
「分からないという感覚が分からない」
 
そして
 
「分かるという感覚も、やっぱり分からない」
 
わけです。
 
そういえば、勉強ができない子は、「自分が勉強ができていない」ことを認識するメタな認知能力が低いので、テストの時「意外とできた」なんて言ってしまいます。逆に勉強ができる子ほど「意外とできなかった」と言いがちです。
 
それと似た部分もありそうですよね。
 
 
では、この状態を抜け出すために、どうしたらいいか?
まだ「経験的に」というレベルですが、以下のようないくつかの作業を通じて、自分の読書を客観的にとらえさせ、「本当に分かる」感覚を作らせており、一定程度成功しています。

1.「理解度」という規準を作らせる

私の速読講座では大人向け、子ども向けに関わらず「理解度」(MAX100%)を記入させるようにしています。
なんとなくやっている作業、無意識に流してしまう作業は、永遠にコントロールできません。 まずは評価軸として「理解度」を設定させ、メタな意識でモニタリングしていくことに慣れさせるのです。
 
誰しも、自分がどれくらいちゃんと読めているかなんて、ほとんど気にしたことがないものなので、はじめのうちはとまどいます。
でも、冷静に自分の内面を観察し、意識して数値化していくうちに、徐々に細やかに評価できるようになっていきます。
 
そして、徐々にそれは「理解度をコントロールする」という感覚につながっていきます。 

2.同じ本を何度も丁寧に読ませて、「分かる」体験をさせる

読書が苦手で、「分からないことが分からない」レベルの子(大人も!)は、そもそも雑に読んでいる可能性が高いわけです。
そこで、読みやすい本、おもしろいと思う本でいいので、まずは丁寧に読ませます。
 
そして同じ本を2回以上(最大数回)読ませます。
 
何度か読み重ねることで、一読では気が付かなかったニュアンスや奥行きが見えるようになっていくものです。読解の2と3のレベルも3度目、4度目になると自然と上がりますし。
 
これが具体的な対策の1つめ。そしてかなり効果的な方法です。

3.とにかくたくさん読ませる

もう「分かった」とか「分かっていない」とか考えず、とにかくたくさん言葉を体験させます。
何事も経験を豊富に積まないと、細かなニュアンスをつかめないものですからね。(^^*
 
ただし、2とセットでおこなう必要がありますね。
質と量を両輪にして少しずつ経験値を上げていくわけです。

4.内容の理解を確認する出力の作業をさせる

学校教育(国語の授業)で、ミクロレベルの読解を試すために、理解を促すような発問をするのはこれ。(^^*
 
マクロレベルの理解を試すには、場面転換や論理構造などを図解させるなど工夫が必要です。
 
ワークをさせたり、問いかけたりすることで、そういう問いを持って本を読めるようになっていきますので、読み方が自然と緻密になっていくものなんです。
 
時間と手間がかかりますし、「あるレベル以上」で効果が上がる方法ですね。
 
 
どれも一朝一夕に改善できるものではありませんが、粘り強く取り組ませていくことで、確実に読書力が上がり「分かる」ようになっていくものです。
ぜひ、親子二人三脚で読書に取り組んでいってください!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

フォーカス・リーディング主宰者

Subscribe
Notify of
guest
0 Comments
Inline Feedbacks
View all comments
目次