■放送
■ご挨拶
おはようございます。塾に頼らず「学ぶ力」が育つEdu cafeラジオ、寺田正嗣です。
元中学・高校教師、大学非常勤講師であり、現在は社会人の速読・読書指導、学習法指導をしている寺田が、塾に頼らず、親は静かに笑顔で見守るだけで、子どもが自分から勉強を楽しんでやる、やった分だけ学力が伸びるそんなお話を、毎日ゆるりとお届けしていきます。
第2回目の本放送では、第1回目でお話した「漢字は書いても憶えられないよ、書かずに憶えちゃおう!」というお話を中心にお届けします。
■本編
改めまして、おうちでできる学び方コーチ、寺田正嗣です。
ちょっと想像してみて欲しいんですよ。
子どもがね、「本を読む」ことに苦手意識を持たず、興味を持ったことは本を読む。
どんどん本を読んで、分からない言葉があれば辞書を引いて調べて、どんどん世界を広げていく。
そしたら、勉強がどれだけ楽に、楽しくなるだろうって。
そして、大人になったときに、どれだけ世界が広がっているだろうって。
さて、そういうわけで「漢字」のお話なのですよ。漢字が読める、苦手意識を持たないっていうのは、実は「本を読む」ことの大前提にもなっています。
そして今回の「書かずに憶える」ていう話はですね、漢字だけの話に留まらないんですよね。「書いて憶える」というのは、もう何というか日本人のDNAにすり込まれているんじゃないかっていうくらい、「書いて憶える」ことを大事にしていますよ。はい。
私が住んでいる地域の中学校の英語と国語の先生なんぞね、伝統的に、長期休暇の宿題は「ノート30ページ分、英文を写してきなさい」とか「漢字でノートを埋め尽くしてきなさい」みたいな宿題を出すんですよ。
これはね、ズバリ言いますと「体罰」です。はい。体罰。
だって、書くのって苦痛でしょ? 何の喜びもないだけじゃなくて、指が痛い。勉強している手応えもない。実際、書いた割りに記憶に残ってなくてテストで正解できない。
「がんばったのに成果がでない」となれば、もう自己効力感も何もあったもんじゃありません。
自信を失いますよね。ほんと、肉体的・精神的体罰ですよ。
先生たちも、ちょっとまともな感性を持っていたら「なんで、これだけ書かせているのにテストで取れないんだろう」って疑問に思いますね? でも、誰も疑問に思わない。
そこが怖いですよね。
それはいいとして、書かないとしたら、どうやって漢字を憶えるのってなりますよね?
ここでまずポイントが3つあります。
1つめ。小学校3年生くらいまでは、苦痛を感じなければ書いていい。九九も2年生でやりますが、このくらいの年齢までは、どうやら機械的な反復作業に苦痛を感じないっぽいんですよ。そして、知らない漢字、知らないパーツ(へんとかつくりですね)と出会うから書いて形を確認する意味があるんです。
2つめ。書かないとしたら何するのって思うと思うのですよ。まず、見る・読むことで「なるほど、この漢字はこう読むのか」とか「こんな漢字があるんだ」って確認していきます。もし授業で勉強した漢字ならここは省略していいところです。
そして重要なのはここからなんですよ。「見る」「読む」だけでは憶えられないんです。何回読んでも、眺めても、やっぱりダメ。一度、見て確認したら、あとで漢字を隠して思い出す作業をしなくちゃならないんです。ちなみに「書く」ことには意味がないわけですが、最悪なのは「見ながら書く」ことです。まさに漢字書き取りの宿題そのものですが。必ず隠して思い出すこと。隠していれば、まぁ書いても悪くない。ただ、書いても書かなくても効果に変わりはありません。だったら書かないでスピードを上げた方がいいよねっていう発想です。ということで、見て確認したら必ず、あとで思い出して、さらに、正しい文字を確認すること。
3つめ。2つ目の作業でとりあえず憶えたかなってなります。そしたら最後の確認作業だけは書きましょう。これは2の作業からちょっと時間をおいた方がいいんです。
なんでかっていうと「指に指令を出して漢字を書く」っていうのは、脳にとってすごいストレスなんです。それで憶えたつもりの漢字でも、書こうと思ったら出てこないとか、あれ?どうだったっけ?となることがある。そういうあやふやなところを発見するために書く。書けなかったり、一瞬でも思い出すのに迷ったりしたら、すぐに答えを確認して、また後で書く。この「後で書く」ってのは、できれば30分以上経ってからが理想です。
ポイント、理解できました?
ここでおさらいしましょうね。まず、10秒差し上げますので思い出してみてください。
(時計の音)
はい。思い出せましたか? じゃ、確認してみましょう。
1つめは小学校3年生くらいまでは、書くことが苦痛でないなら書かせていい。
2つめは、憶えたい漢字を一度眺めたら、漢字を隠して思い出すこと。思い出せなかったら正解を確認して、他の漢字の確認が終わってから、また隠して思い出すこと。
3つめは、ひととおり勉強が終わってからでも、テスト前でもいいので、2つめの作業で憶えたって思ってからちょっと時間が経ったタイミングで「書いてテストする」こと。
今、あなたにも「説明を聞いて確認する」「自分で思い出してみる」「正解を確認する」っていう作業をしてもらいました。
この手順を漢字でもやるよっていうことなんです。
この「手順」というのが、実は効果的な学習を考える上でとっても重要なんですよ。
ちなみにですね、昨年の秋に、小学校6年生の男子の勉強の指導をしたんですが、漢字が大の苦手だったんです。
でも、卒業前に小学校の漢字を完成させておかないとまずいなってことで、この書かない勉強法を提案して、漢字検定を受けさせることにしました。
最初は小学校5年生のレベルを受けさせて自信を持たせようと思っていたんですが、10月くらいから勉強を始めたらスイスイ進んじゃって、11月にはもう5年生の漢字が完成レベルになってしまったんですよ。
基本的に書かないから本人もストレスがなくてどんどん進められるんですね。
それで12月になって漢検に申し込もうってなったとき「上の級を受ける」って言いだして、そこから急きょ、小6のレベル、漢字検定5級ですね、のテキストを買ってきて勉強させることにしました。結果は190点で合格。その後も中学入学前から4級に向けて勉強を開始したそうです。
ここで重要なポイントがあります。
前回ご紹介した小3の子もそうだったんですが、「書く」ことが苦痛で、しかも憶えられないから「自分には能力がないんだ」って自信を持てなくなってしまうんです。小6の子も「漢字苦手、大嫌い」で、勉強する気すらなくしてたわけです。
でも書かないで、思い出す練習をすると、気楽にやれる。漢検だと1ヶ月あればテキストが1冊終わるんですよ。そんなに必死にやらなくても。まだ勉強したことない学年の漢字でも。
しかもストレスなく憶えられる。自信もつくよねって話なんです。
ちなみに、うちは2人の息子がおりますが、二人とも小学校4年生で漢字検定3級、中学校卒業レベルの漢字ですね、に合格しています。どちらも3ヶ月くらいしか準備してません。二人とも「え?書かなくていいの?」って最初は戸惑ってましたが、習ってない漢字がどんどん憶えられて楽しかったみたいです。
このやり方は誰にでも効果があるし、英語とか理科・社会でも同じやり方で勉強が捗りますので、ぜひお子さんに試させてみてください。
もう少し詳しいやり方を教えて欲しいって場合は、私が運営する「ことのば.jp」のサイトに、どんなテキストを使えばいいかとか、どんなふうに進めるかとか解説したブログの記事があるので、そちらを参考にしてみてください。
■終わりに
ということで、第2回目となる今回は「漢字の勉強って、実は書かない方がいいんだよ」っていうお話させていただきました。
お聞きくださり、本当にありがとうございました。
明日は、「勉強しなさい!」からの親子バトルをどう回避するかっていうお話をさせていただこうと思います。
そしてもし、これをお聞きのあなたが、お子さんの勉強について何かお困り事や悩み事があるようでしたら、ぜひコメント欄で自由に質問、相談してください。
いただいたご質問とご相談には、科学的な知見と私なりの指導経験を元にお答えしていきたいと思っています。
そして、もしこれは役に立ちそうだなってお感じいただけたようでしたら、ぜひチャンネルのフォローやSNSでのシェアもお願いいたします。
では、今日もお互い、実り多い一日を過ごしましょう。