小中学生の速読は入試に有利になるか?

子ども速読

ある学習塾の先生(教室長さん)から、
小中学生時代に速読をマスターさせると、
入試に有利になるのか?
 
そんな相談を受けました。

寺田

まー、そんなもん、人それぞれじゃないっすかね?

いやはや、そうとしか言いようがないんですが、
それじゃすっきりしないってことでしたので、
一応、断言しておきました。

寺田

基本的にプラスの効果はあまりありません。
ただし、注意しないとマイナスの効果が出てしまうことがありますよ!

なぜ、速読が入試では役に立たないのか?

「役に立っていない」と断言する理由

まず「なぜ役に立たないのか」の前に、
本当に役に立っていないのか?というお話。

速読導入の学習塾の状況

一つには速読を取り巻く状況を見れば分かります。
 
マクロで「学習塾の入試状況」で眺めたとき、
速読を導入した塾の入試の成績が、
他塾と比べて明らかに上がったとか、
高いという事実が見当たらないのです。
 
そもそも、今、多くの学習塾に導入されている
速読のシステムは、もともと学習塾FCの
連合体が運営母体となっていました。
 
最初は、
「速読で成績アップして売り上げもアップだー!」
と勇んでいたはずですが、
10年経っても何も変わらず…
 
結局、速読修得させるノウハウがないし、
速読修得したことになっている生徒も
成績が上がらないし(むしろ落ちる子が出たくらい)、
 
「こりゃだめじゃん。
 速読の売り上げが低迷してるから、
 よその学習塾にシステムを売って、
 そっちで儲けよう!」
 
となって、全国に展開し始めたというのが
本当のところです。

速読コースを受けた子どものお話

ミクロで「子どもの成績」を眺めたとき、
確かに速読できる子は速読できます。
 
ですが、それでどれくらい成績が上がったのかは、
誰にも確かめようがありません。
 
それに、その「身につけた」という速読が、
学習や試験に活きているかというと、
これまた不明です。
 
むしろ、先の速読FC(本部および加盟店)からは、
 
「速読マスターした子も、
 学習のスピードが上がってないし、
 成績も上がっていない。
 これはどういうことでしょうか?」
 
そんな相談を何件もいただいています。
 
実際のところ、どうなんでしょうね?

なぜ、速読は役に立たない?

次は、なぜ役に立たないのかというお話。
 
そもそも、読書の理解とはどういうものか?
そして、読書のスピードは何で決まるか?
そんなことを考えなければなりません。

読書スピード(速読)は何で決まるか?

読書スピード(または速読)は次の式で表すことが可能です。

読書スピード(速読)=スキーマ×心身のコントロール×フォーカス

この「スキーマ(認知の枠組み)」の部分は、さらにいくつかの要素から
成り立っていて、

スキーマ=言語的処理力+文法力・語彙力
     +文脈把握力
     +社会的(背景的)知識
     +その領域の前提知識

心理学の世界では

読書スピードは視覚的能力ではなく、
情報処理の心理的能力で決まる
とされています。
 
つまり、速読をマスターしたから文章が速く読めて、
入試に有利になるというのは幻想に過ぎず、
結局、勉強した成果が出てくるってことなんです。
 
ただ、もちろん「効果ゼロ」というわけではありません。

読書スピードにおける「心身のコントロール」の価値

掛け算のもう1つの項にある「心身のコントロール」も
重要な部分です。
 
実は読書スピードは読書力と相関関係にある的な
書き方をしたのですが、ある部分で頭打ちになります。
 
それが視野、眼、集中力の使い方なのです。
簡単に読める文章も、難しい文章も同じように読んでいるとしたら、
それは無駄だよね、と。
 
楽に読めるところを楽に流し、難しい部分に時間をかければ
同じ時間でも理解が増す可能性があります。
 
また、試験というストレスのかかる場で、
いつも通りの平常心を発揮できるだけの
瞑想トレーニングなどを積んでいれば、
他の子よりもスムーズに解けるかも知れません。

ま、問題は速読のトレーニングで、
試験などのストレスとプレッシャーがかかる状況でも
平常心を維持できるだけのトレーニングができているかですが。
 
コンピューターの画面をぼーっと眺めるような
トレーニングでは、それは望むべくもありませんね…

読書スピードにおける「フォーカス」の重大さ

入試で速読に価値がないという最大の理由が、
最後の要素「フォーカス」にあります。
 
私が社会人向けに指導する速読技術は
「フォーカス・リーディング」と言いますが、
読書スピードの一番の鍵を握るのは
フォーカス
です。
 
同じだけのスキーマと心身のコントロール技術があっても、
分析的な眼で読めばスピードは遅くなります。
 
速読トレーニングの時は、無目的に気楽に読んでいますよね?
 
それと同じスピードは入試では発揮しようがないのです。

速い人は正確に読めている?!

スキーマが豊富で、読書も勉強もたっぷりしてきた人は、
どんな難解な文章でも、気楽に読めてしまいます。
 
その時、ストレスを感じていないワケなので、
フォーカスも「気楽に流れをとる」状態になっており、
非常にスピードが速くなります。
 
そして、スキーマのお陰で理解も高い。
 
社会人ですと、ビジネス書の単行本を
1冊5分で読めてしまう人がいますが、
そういう人は速いだけでなく、理解も高いのです。
 
子どもの速読でも、もし「速くて成績がいい」
という子どもがいたとしたら、それは
ひとえに読書量、勉強量の賜なのです。

でも勉強には役に立つのでは?

速読教室が語りがちな嘘として有名なのものに

速く読めれば、何度も勉強できるので効果が上がりやすい

というものがあります。
 
残念ながら速読というのは、自分のスキーマに
反応させて流していく読み方なので、理解できない
ことは何回読んでも理解できません。
 
それに「記憶」とか「理解」というのは、意識を働かせ、
負荷のかかる状態で学習しないと意味がありません。
 
その最たるものが「思い出す作業(retrieval practice)」です。
 
あとは、指導者が速読技術とフォーカスを使いこなして、
学習効果を高められるような学習ストラテジーのノウハウを
持っているかどうかにかかっています。
 
残念ながら、速読すらマスターしていない指導者では、
速読を活用したストラテジーなど期待できないでしょうが…
 
 
てなわけで、速読は入試に有利とはまったく言えない!
というお話でした。

追伸:速読で成績が下がる…?

本来なら分析的に、分からないところを
分かるように考えながら読むことにこそ、
子どもの頃の読書の価値があります。
 
速読はそれをさーっと読み流してしまい、
分かった気分にさせる効果があります。
 
ま、だからこそ読書が苦手な子には
本が身近になっていいのですが。
 
ただ、その後に、本当の意味で力が付くような
読書に仕向けてやらないと、雑な読書のまま
小中学校を終えてしまいます。
 
その結果、これまでよく相談で受けたのが
 
「速読コンクールで上位に入ったけど、
 国語と算数の成績は下がり気味」
 
というもの。
 
何か本末転倒ですよね。(^^;
 
 
よろしければ、こちらの記事も参考にしてください。



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