「読書が好き=国語が得意」とは限らない理由

先日、こんな相談がありました。

「うちの子どもは、本をたくさん読んでいるんですが、あまり国語の成績はよくないんですよ。どうしてなんですかね?」

この相談者の頭の中に、次のような発想があるわけです。

「読書をしている子どもは言葉、理解力が自然と養われている(はず)」
 ⇒「国語の成績がよくなる(はず)」。

 
しかし、実際には「読書をしている子どもは、していない子どもに比べて、国語力が伸びる可能性を秘めている」に過ぎません。必ずしも「読書が好き=国語が得意」とは限らないのです。

そもそも「国語力」って何だろう?

学校教育における「国語力」とはどんなものかを考えてみましょう。
文部科学省の掲げる「国語力」の解説(⇒参考資料)から整理してみますと…

  • 語彙力・漢字の読み書き能力,情緒的言語センス
  • 文法的知識、分析力
  • 文脈分析力,論理構築力などを含む論理的思考力(考える力、文章読解力)

ざっくりこんな感じです。
 
実は、読書によって「身につく(はず)」と期待される力もまったく同じと考えられます。
とりわけ、語彙・言語センスは多くの事例に触れ、言語的体験を積む中でしか養われませんので、多読は非常に有効であると考えられます。

読書では「国語力」は身につかないのか?

問題は学校の国語教育で求められるレベルと、普段読んでいる本のレベルとがずれているところにあると考えられます。
 
とにかく本をたくさん読んでさえいれば、こういう力が自然と身につくというわけではないのです。
 
語彙が耕されるような本を読めば、語彙力が上がる。
イメージが膨らむような本を読めば、イメージ力が上がる。
読解に負荷がかかるような本を丁寧に、分析的に読めば分析力・読解力が上がる。
文脈、文章の流れを意識して読めば文脈分析力(構成把握力)が上がる。
というように…
 
先に「可能性を秘めている」と表現した理由がおわかりいただけるでしょうか。

どうしたら読書力を「国語力」につなぐことができるか?

簡単に言ってしまえば、上記のような読み方、選書が必要になるわけです。
もし、お子さんが「本を読んでいるのに国語の成績がイマイチ」と思ったら、次のことをチェックしてみてください。

  • 読んでいる本が平易な小説(子ども向けエンタメ小説など)に偏っていないか?
    ⇒無理強いは禁物ですが、一緒に図書館や書店に出向いて違うジャンルに目を向けさせ、時には文学作品や学術的文章(説明文)など「難しい」と感じるレベルのものにも挑戦させましょう。
  • すいすいと雑に読み飛ばしていないか?
    ⇒本当に読書力が高くなれば、すいすいと、それでいて質高く読めるようになるわけですが、往々にして「楽しめる程度に読んでいる」可能性があります。
  • 文脈や著者の主張を的確にとらえ整理できているか?
    ⇒お子さんが読んでいる本について感想やあらすじを語らせてみたり、その本について語り合ったりして、どんな読み方ができているか確認しつつ、整理(処理)・出力する習慣を身につけさせましょう。

基本的に、国語力に限らず「力が付く」というのは、丁寧な作業、負荷がかかる作業を地道にこなす中で得られるもの。
そしてもう1つ忘れてならないことは「読書」という「入力作業」だけでなく、「分析・考察する、書く、語る」という「処理・出力(テスト)作業」を意識的にさせる必要があるということです。
 
「読みやすくて、すいすい読めて楽しい」から「自分の知らない世界を知ることができて楽しい」、「考え事をして、自分の世界が広がって(深まって)わくわくする」に「楽しい」の次元を上げてやりたいものですね。

おまけ:文章読解力、国語力の判定に役立つこと

ことのば・子ども速読講座では、次の3つを「国語力」の判定とレベルアップに採用しています。

  • 1.言葉の係りと受けの分析テスト(文の分析テスト)
  • 2.算数の文章題の図解化テスト(言葉の関係、人物・事実関係の把握)
  • 3.早口音読テスト(初見の文章をよどみなく、抑揚を付けてスピーディーに読めるか)

このうち2は算数のテストで確認可能です。
3は学校の宿題で出される音読をさせるときにチェックできますよね。
 
何となく流してしまわないで、子どもさんの国語力、読書力のバロメーターとして意識してみてください。
 
そして、今せっかく本を読んでいるのであれば、土台=伸びる可能性はできているわけですから、あと少し「力になる」作業を無理のない形でさせてみてください!

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この記事を書いた人

フォーカス・リーディング主宰者

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