読書と学びを進化させる記憶のSRICE原則

本を読むにせよ、何かを学ぶにせよ「記憶する」ことは非常に重要です。
ただ、大人になると、どうも憶えるのが億劫になる… そんな悩みを持つ方は多いもの。
 
実際、私の主催する速読講座や高速学習講座で最初に書いていただくアンケートでは、「憶えなければならない用語や数字を憶えられない」という悩みが、常に「悩みTop 3」に入ります。
 
基本的な学習方法(手順)については、いくつかの記事ですでに書いています。

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基本的に上記2つの記事でことたりるとは思うのですが、「記憶」に絞って、「外せないポイント」についてご紹介したいと思います。
 
ある意味で「基本のキ」ですので、「あー、そりゃそうだよね」と納得感、というか「そりゃそうだねー」的なデジャビュ感が高いものばかりだと思います。
 
ですが、「あー、それ知ってるわ」で終わらせず、ぜひご自身の学びのチェックに活用して下さいね。(^^*

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効果的に記憶するためのSRICE原則

私は記憶のポイントを5つに整理し「SRICE原則」と呼んでいます。

  • 1.S:separate(分ける)
  • 2.R:repetition(繰り返す)
  • 3.I:impression(印象づけ)
  • 4.C:coding(圧縮&記号化)
  • 5.E:Episode(体験連想)

以下、具体的に見ていきましょう。

1.S:separate(分ける)原則

本を読んだのに、内容を思い出せないという大きな原因の1つに「内容が整理できていない」ことが挙げられます。一気に読むにせよ、ぼちぼち読むにせよ、「今読んでいるところ」と「全体の枠組み」の関係とか、前に読んだ話との関わりとか、そういうものが整理されていないと、読み終わった段階で、すべてがカオス状態になります。

読書では、読みながら次のことをちょっと意識するだけで記憶の残り方は変わります。

  • 章の変わり目を意識するために、ちょっと読むのを止める。
  • そこで、今まで読んだ内容を軽く振り返る。
  • 次の章のタイトルを読み、これまでとこれからの内容のつながりを軽く意識する

これらの作業で30秒くらい時間を取ったとしても、間違いなく大きなリターンが手に入ります。ぜひ丁寧にやってみてください。
ちなみに、ここで重要なことは、分かれ目を明確にして、あらためてつながりを確認すること。「わけて、つなぐ」ですね。(^^*
 
学習の場面では、要所要所でポイントを図解化して整理するなど、視覚的にすっきり整理してみてください。全体の構造がすっきり俯瞰できる状態になり、自分の理解が曖昧なところが浮かび上がりますよ。

2.R:repetition(繰り返す)

繰り返すといっても、「読む作業(=入力作業)」を何回繰り返しても、出力できる状態にはなかなか至りません。
 
何度も、次の展開を思い出しながら読むとか、全体の中の位置づけを意識しながら読むとか、そういう作業を意識しないとダメ。
 
もし何らか学習としておこなっているなら、このリピート作業は「思い出す作業を繰り返す」ことを重視してください。
 
負荷の小さな作業で構いません。4択とか。穴埋めとか。徐々に負荷の大きなものにしていくのが理想ですね。

冒頭に「読む作業を何回繰り返しても…」と書いてはいますが、「理解」を完全な状態にするための重ね読みは非常に重要です。
資格試験にせよ、学校の定期テストにせよ、まずは何度も読む。声に出して読みながら録音し、それを倍速再生で何度も聞く。そういう作業は重要です。
ただその時、漫然と読んでしまわず、先の展開を思い出しながら読む、全体の流れと細部のリンクを意識しながら読むなど「想起」を意識した読み方を心がける必要があります。
最終的には、見出しを見ただけで、あるいはページを開いただけですべての内容がふわっと浮かび上がるという状態(字面を眺めたらすべてが分かってしまう状態)になったところで入力完了とします。

3.I:Impression(印象づけ)

学習法について学んだことがある方は、「感情が動くと記憶に残りやすい」ということを聞いたことがあると思います。とはいえ、何でもかんでも感情と結びつけるのは現実的ではありません。
 
あくまで、憶えづらい部分などを、次のCodingとセットにして憶えやすくするのが順当な使い方です。とりあえず「好奇心全開でコンテンツに向かう」ということが一番でしょうか。

このImpression原則について、読書でできることは限られていますが、学習では「ノートの工夫」がもっとも重要な要素になるでしょう。ただしこれは「4.Coding・5.Episodeとセット」で考えることになります。
ノートまとめの際に、色を使う、イラストを入れる、コメントを書き込むなどが考えられますね!
ちなみにTony Buzan氏が開発した「マインドマップ」はこの原則を完璧に押さえたノート法といっていいでしょう。興味がある方はこちらをどうぞ。⇒『勉強が楽しくなるノート術』

4.C:Coding(圧縮&記号化)

1の「separate原則」は、情報を整理して樹形図にしてしまうようなイメージです。実はこれ、「記憶する要素の数を減らす」という意味もあるのです。
 
例えば、バラバラに動物10種類を憶えるのは大変ですが、草食系、肉食系、はねるタイプ、走るタイプ…など
ざっくりと分類しておいて、その中にどんな動物がいるかイメージするととても楽に憶えられます。
 
イメージにならないものは、それにレッテルを貼ったり、誰でもやっているコトとしては語呂合わせなんかもありますね。
 
これらはすべて「Coding」の1つの技法です。

世界史で習う「ギリシャ3大悲劇作家」の憶え方を例に解説します。
ギリシア語の名前が覚えにくい上に、脈絡なく3人の名前をセットで覚えなければならないため、かなり難儀します。これを憶えるために語呂合わせを作るんですね。
 
「アイス(を)祖父へ売り、悲劇が!」
 
暑い夏の日。孫がおじいちゃんにアイスクリームを差し出すシーン。
じいちゃん「おー、ありがとよ(にこっ)」
まご「じーちゃん、金ちょーだい!」
じいちゃん「(何?金取る気か?…激しい動揺)」
(それでも冷静を装って「ありがとよ、これ代金な」)
じいちゃん「ぱくっ。うん、うまいな…うっ!!!」
(心の動揺と、冷たすぎるアイスで心臓が…そして悲劇!)
 
そんなストーリーで印象づけて憶えたあと、
・アイス→アイスキュロス
・祖父→ソフォクレス
・へ売り→エウリピデス
・悲劇→ギリシャ悲劇
と展開するわけです。

5.E:Episode(体験連想)

これは3と似たような使い方をしますが、情報を自分の体験と結びつけると憶えやすいという記憶の性質を利用するわけです。
 
声に出したり、色を塗ったりすることで体験として情報を刻み込むというのも1つのテクニックですね!
 
声に出して「音」として身体で覚えられると、それは情報の圧縮(Coding)の効果もあります。英単語はスペルを1文字ずつ憶えると大変ですが、発音を憶えておいて、その音から綴りを展開できると楽勝です。

つまるところ記憶するためには…

ここでご紹介したことは「気をつけるべきポイント」というレベルのものに過ぎません。
 
記憶というのは「がんばったから憶えられる」というものでないことは、恐らくあなたも実感として分かっていると思います。
 
こういうことを意識しつつ、あくまでトータルの学習プロセスを最適化していくことでしか学習の効果は高まりません。でも、それを意識していくことで、記憶の仕方がうまくなっていきますし、そうやって知識のデータベースが増えていくと、それが知識の受け皿(スキーマ)になり、加速度的に記憶が楽になっていくのも真実。
 
ぜひ、忘れることを恐れて必死にならず、学習・読書を楽しみながら何度も憶え直していきましょう!

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この記事を書いた人

フォーカス・リーディング主宰者

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