子どもに速読をさせちゃだめ!

塾と連携しているところはいうまでもなく、速読教室でも小学生をターゲットにしたところは結構あります。
 
これってどうだろな~と、元中学校教師としては考え込んでしまいます。(--;

宣伝文句を冷静に考えてみたら…

2006年、都内にある某教室が子ども向けの初級講座なるものをスタートさせました。
 
そこに小学校4年生の子どもが、有名なタレントさんが書いた自伝的な小説を読んだ記録が掲載されています。初回が750文字/分ぐらいで、数回の受講で2400文字/分になったと。
 
これってすごいことなの?と、思わず考え込んでしまいます。
 
その本は、戦時中の話も含めて、昭和の時代の話です。そんな現代の子どもとかけ離れた世界で起こる物語を、すらすらと読めるのでしょうか。
 
知らない世界が描かれた小説を、もともと700文字/分で読んでしまっているわけです。
そして、それが短期間で3倍になった…
 
これを素直に喜んでいいのでしょうかね?
 
  
前に「小学生は修得が早い?」というタイトルで記事を書いたことがありますが、まさにその「落とし穴」にはまっている感じがします。
 
きちんと読めていないのに、読めたことにして、適当な読み方をしている可能性はないでしょうか?
 
そもそも読書を楽しむということ自体がしっかりとできあがっていない子どもに、速読をさせようというのが発想として間違っていると思うのです。
 
※2016年追記:このあたりのことは大学生の読解力事情を考えると…(汗)

そもそもの「読書力」は大丈夫?

私の講座にも中学1年生が通ってくれたことがありました(2002年の話です)。
 
その子はすごい伸びでした。
しかし結論から言うと、まったく役に立ってないんです。
 
そもそも読書経験が不足していて「読める」という状態が自分で分かっていないから、「ただ早く目で追っていって、なんとなく読んでいる感じ」で測定してしまいます。
 
そういう子どもは、ゆっくり読ませて、どれくらい理解出来ているか確認しないといけません。うちに通ってくれた子も、やっぱりそもそもの読書力が不足していて、ゆっくり読んでも速く読んでも、やっぱり「読めていない」という状態でした

大人とは違う視点で読書を考えなければ!

大人としては、「子どものうちに速読を身につけさせると、あとあと役に立つだろう」と考えてしまいがちです。
 
しかし、考えなければいけないのは、大人と子どもとでは「読書」という行為の意味合いが違うということです。
 
大人の読書は、「情報の収集」、「知識の獲得」などというように「目的」があって、そのために手段という意味合いが強いものです。逆に「読書そのものが目的」となるような「暇つぶしの読書」など楽しみのでは速読を使いませんよね。
 
ひるがえって子ども達、とりわけ小中学生の読書というのはどうでしょう?
 
子ども達は、まさに言葉を獲得し論理的思考力を付けるため、言葉を味わい感性を耕すために読書をするという側面が非常に強いのです。
 
「側面が強い」というよりも、そのような「読書力を付けるための読書」こそ、子ども時代にしっかりと積み重ねておかなければならないと思うのです。国語力があらゆる学力の基礎である、という言い方をしますよね。
 
確かに、子ども達というのは大人では考えられないような能力をはっきすることがあります。よく耳にする「右脳」を活用した読書みたいな感じです。
 
しかし、そのような能力があったとしても、それは読書力とは別物です。そのような「右脳」、「左脳」という言い方をするなら、子ども時代にしっかりと身につけるべきは「左脳」をしっかりと使った論理力、文脈読解力であり、「言(こと)の葉=言葉」を豊かにし、感性を耕していくことが必要なのです。まぁ、実際の読書というのは、左右両脳を活用するものであって、右脳とか左脳とかいうこと自体があほくさいのですが。
 
「大人顔負けの、半端ではない読書量をこなしている子ども」であれば、速読は意味があるかも知れません。しかし、大人と同じ視点で考えて、いたずらに「勉強の効率が上がる」とか「試験で時間に余裕ができる」などという考え方はして欲しくないと思います。
 
前頭前野をしっかりと使いながら、文字をしっかりと読み取り、場面をイメージしながら読む、論理的に考えながら読む、そういう読書力を鍛えるための読書をしっかりと積み重ねて欲しいものです。子どもをお持ちのお父さん、お母さん、そして学校や塾の先生、ぜひセンセーショナリズム、商業主義に走らず、冷静に子どもの教育という視点で考えてくださいね。
 
以上、元中学校進路指導主事の寺田のつぶやきでした。

追伸 on 2016.05.30

現在、日本にはいくつもの流派が子ども向けの速読を展開しています。
大きな流派は3つ、小さな流派(関東圏中心)が1つ。
 
実はそのいずれも、私のところに「速読をさせたら国語の成績が下がった」とか、そもそも「速読がマスターさせられない」「読み方が雑になっただけだった」といった内容の相談を持ちかけてきています。
2つはトップが、1つは九州の営業部長さんが。
 
それらに対するアンチテーゼのために、ことのばは「子どものための正しい速読」を研究開発・普及させるために活動しています。

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