子どもは速読の修得が早い、は本当か?

子ども達は、時に大人には信じられないような力を発揮することがあります。
 
まさにおそれと自己の限界、正しい・正しくないという固定観念を持たないが故の無茶?
 
速読でもそうです。
子どもは修得が早いし、到達レベルが高いと言われています。
 
 
でも、そこは眉につばして考えなければならないところ。
 
 
ある受講生の方から相談を受けました。
実は同じ質問を何度も受けたことがあるんですが…。
 
その質問とは、

「某教室に通っているのですが、どうしても2000文字を越えられません。
 そして何が問題なのか、何をしたらいいのか指導をしてもらえません。
 周りの大人の受講生も同じような状態です。
 子どもはどんどん伸びているのですが・・・。
 やはり子ども達のような成果を上げることは難しいのでしょうか?
 大人が同じような成果を上げようとすると、何が必要なのでしょうか?」

というようなものでした。
 
某教室というのは、実はインストラクターが速読できないという教室なんです。
そこの先生方、かなり多くの方から相談を受けてきましたので間違いありません。(笑)
 
だから受講生が壁にぶつかっていてもアドバイスができないんですね。(^^;
 
速読ができる人なら根掘り葉掘り聞き、カウンセリングをおこなうことで何かアドバイスができるはずなのですが。
 
あるいは目の動きを見せてさしあげることで、目指す方向を明確にしてやることもできますし。
ちなみにその教室では、引用中にもあるように、ことごとく大人は挫折しているそうです。

ちなみに、そこの本部のトップからは「修得者がでないのでクチコミがおこらず、うちの未来がやばいので指導してください」と依頼を受けました…。

自分たち大人はできない。でも、子ども達の例を見せられて「ほら、できるようになっている人もいるでしょう?」といわれると、ぐうの音も出ないんですね。
 
しかし、なぜ子ども達は修得できるのに、大人は修得できないのか。気になりますよね?
 
なぜ子どもはできるのか。これは明確に調査したわけでも、研究したわけでも、そのような資料があるわけでもありません。
子どもの国語指導、速読指導に携わっている身として、、2つの仮説を立てて考えています。

◇仮説1◇子どもにはリミッターがないからできちゃう説

子どもの脳は大人のようなリミッターがないから、驚くような成果が上げられるのではないか?
 
私たちは、たくさんの経験をしながら、いつの間にか「自分にできること」と「できないこと」を自分の中で色分けしてしまっています。あるいは失敗したときのことを心配して、最初から能力の発揮を制限していたり・・・。
 
フォーカス・リーディングの集中講座でも、このリミッターを外す作業を大事にしています。
イメージトレーニングで達成イメージを描くとか。
とことん鎮まりを深めて、リミッターが発動しにくい状態を作るとか。
 
少しでも否定的なイメージを作ったり、言葉を口にしたりすると、とたんに脳は「どうせできないよね」と、リミッターを発動してしまいます。
 
考えてみたら、大人でもそういう子どものように無邪気に変化を楽しんだり、挑戦を楽しんだりできる人は、軽々と自分の壁を越えていきます。
 
読書・速読でいうと、子ども達は読書というもの、あるいは「理解する」という行為に、自分なりの規格、「かくあるべき」論を持っていないが故に、今までと全く違う理解(速読ならではの理解)を受け入れられるのではないかという気がしています。

◇仮説2◇子どもの読書は「そもそも適当」説

子どもは「本を理解する」ということに明確なイメージがないため、本当は読めていないのに、読めたと申告しているだけなのではないだろうか?
 
上の1と関連がありますね。
たとえば小学生が読む本って、ジャンル的にはすごく限られているんですね。小説だったり伝記だったり、そんな「読み物系」が中心です。
 
そういうものって、「楽しければいい」という非常におおざっぱな目的というか感覚で読んでしまっているような気がします。(というか、間違いありません!)

だから、いくらたくさん本を読んでも国語力が上がらないんですよ。(苦笑)
むしろ、数が多くなるほど国語力が下がる傾向が見られます。

また、小学生の頃というのは、まだ大人に要求されるような理解力・読解力が育っていません。
論理的な文章を読解する能力だったり、表現の細部を味わう能力だったり。そういう能力は、中学・高校の学習や読書の経験を踏まえて養われていくものと考えていいでしょう。

つまり「無目的的なおおざっぱな読書」を「明確な理解の基準なし」でおこなっている可能性があるわけです。
 
これなら速く読める可能性がありますよね!(笑)
 
1とも関連があるのですが、子ども達の読書スピードがすごく伸びているとしても、そして「ちゃんと読んでますよ」と本人が言ったとしても、実は「本当は読めていない」可能性が十分にあります。
 
最初の話に戻りますと、大人を指導する力のない教室では、子どもを指導する力もないのですが、子ども達は「ほらできるでしょ?」と言われれば「確かにできる」と思いこんでしまっている可能性があるわけです。
 
一度、「じゃぁ国語の試験を、そのスピードで読んで、解いてみて」と言ってみればわかりますね。
 
本当に子どもの力を伸ばしてやろうと思ったら、いたずらにスピードを追求するのではなく、取り組み方を正してやることこそ、指導者の正しいあり方ではないでしょうかね?
 
ほかにも、「脳が柔らかいため、潜在能力が開花しているのではないか」という仮説も立てられないこともないのですが、それが可能なのは小学校2~3年生ぐらいまでだろうと思います。そして、その頃までは「言葉」と「文字」の処理が未成熟ですので、速読はおろか読書にもなりませんので、絶対に速読をさせるべきではありませんが!
 
少なくとも、読書にしっかりと取り組む(つまり速読にも取り組んでみようかと思う)年齢の子どもにはその仮説は成立しないだろう、ということです。

関東を中心に幼稚園・小学校低学年向けの速読を展開しようとしているところがあります。そこからも相談を受けましたが「絶対にやめた方がいい」とアドバイスしておきました。が、効果がないことは分かっていても、商売だからやる、とおっしゃってました。

 
 
さて、上の2つの仮説を見て「じゃぁやっぱり子どもが速読できているというのもインチキか」と思ってしまうことは簡単です。
 
でも、実際、魔法のような速読を修得できる子ども達も実在します。
 
そして、塾・速読教室のスタンスとしてどうあるべきかということと、速読に取り組むものとしてのスタンスとしてどうあるべきかということは別問題です。
 
教室としては「本当に実践で役に立つ能力」を育てるというスタンスが必要なのは当然です。
 
が、取り組む側は夢は大きく持っていいんです。
人間の脳の可能性を信じることはすばらしいことだと思うんです。
ただしそれは大きな目標として、遠くに見ておくべきことです。
 
大事なことは、足下をしっかりと見つめながら、確かな足取りで歩いていくことです。(それをきちんと導くのが教室の勤めですよね。一緒に煽っている教室が多いのが問題です。)
 
最初から「右脳活性化」とか「天才になる!」とか「才能開花は幼少の頃に!」みたいな妄想にとりつかれていると、足下の段差につまずいてしまいます。
 
ぜひ、子どもの読書力、学力、生き方といった広い視野、長いスパンで、子どもの教育のことを考えてみてください。

p.s.
子どもについての仮説を考えると、私たち大人がなぜ修得できないのか、どうしたら修得に近づくことができるのか、ヒントが見えてきますよね。
今の読書とは違う理解を手に入れるという心のゆとり、自分の可能性を純粋に信じる気持ち。
まずは「かくあるべし」とか「どうせこの程度」というリミッターをはずすところから取り組んでみましょうか!

※この記事は2006年6月にoffice-srr.comで公開した記事を、2016年5月にkotonoba.jpにて一部加筆修正した上で公開しています。

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