あの小っちゃな本屋には気をつけろ…本屋の皮を被った狼だからな!的な…

「今度、天神のはずれにできた小っちゃな本屋には気をつけろ。
 なんつっても、あれは本屋の皮を被った狼だからな!
 あいつの視野に入っちまったが最後、間違いなく食われてしまうぞ。」

そんなグリム童話もどきの怪談話を聞いたのは、残暑が一気に引いた9月終盤のことでした。
 
近づいたら食われる? ── まさか!(笑)
 
でもね、昨晩、その狼に出会ったんですよ。
 
もうね。
その恐怖ったら、ありゃしませんよ!
 
赤ずきんちゃんのおばあさんよろしく、一呑みですよ!一呑み!
 
 
 
そうなんです。
 
私自身、書店のお手伝いを2年間ほど(ボランティアで)やってきおりました。
今の本業は「読書講座」ですが、いつか商店街内に「ユニークで小粋な、図書館かサロンのような書店」を開きたいと思っているんです。
 
その、この秋に福岡に進出してきた狼ライクな本屋についても、当然、私の耳には入ってきておりました。
「どうやら、かなりユニークらしい」と。
 
「へー、ユニークなんだね。ふーん。」
 
友人である元NHKアナウンサー矢野香さんから「講演会を東京と福岡でプロデュースしてもらった」という話とセットで書店(店主?)情報を(うらやましくも)聞いたときだって、「そんなの眼中にないね」テイストでさらっと流した私です。
 
そう。狼の視野に入らない距離で。
ちょっとライバル心の種火を灯しながら遠巻きに。
 
えぇ、もちろん、「狼に食われちまう」なんていうホラー話、信じちゃいませんでしたよ。
えぇ。当時はね。

「ユニークな本屋」を作るなんて簡単、、、だよね?

書店は「衰退産業」とか「しょっぱい商売」なんて言われます。
 
事実、書店数は2001年の20,939店から15年弱で13,488店(2015/5/1現在)へ15年間で6,905店舗に減少しています。
約3割も減った計算です。(日本著者販促センター調べ
 
昔ながらの小さな書店は、ブラジルのうっそうと生い茂った密林に迷い込んだかのごとく、行く道を見失い、朽ちていくのです。
 
ですが、2年ほど非常勤書店員として働いた身、そして15年間「読書」「本」と関わってきた身から言わせてもらえば、衰退しているんじゃなくて、まだ発展していないんですよ。
 
営業努力もマーケティングもせずに、法律と制度・システムに守られてきた業界が、ボーダーレスとネットの荒波にあらがえるはずもありません。
 
逆に言えば、ビジネスセンスさえあれば勝てる
 
本の魅力を伝えて、お客様の「本とのご縁」を演出して。
時にはコンセプトで「お祭り」を演出して。
あーやって、こーやって…妄想が膨らみます。
 
「ユニークな書店を作って勝ち残る」なんて簡単だよ。
 
本屋はしょっぱい商売になったのではなく、今まさに「おいしくなる」途上なんです。
 
ユニークな書店がなんぼのもんじゃい。
かかってこいや。
えぇ、かかって来てくださいませ。(やや震え声で)

狼書店との偶然かつ偵察的出会いへ

その狼野郎の情報が目に飛び込んできたのは数日前。
いや、正確には「ライティング講座」のニュースが飛び込んできたのは、です。
 
ブログを日刊で書くようになり、また仲間のブログの文章やホームページのコピーの添削などをしている関係で、文章法の本を10冊ばかり読み直している最中でしたので「アンテナが立っている」状態だったんです。
 
お? ライティング講座? しかも狼書店主催?
 
ですが、主夫業をしている私は、この2年、夜の講座、他人の講座には一切参加していません。
「子育てが大事」ですから、どんなに魅力的に見えても行かない「掟」を作っておりました。
 
ま、今回は仕事に役に立ちそうだし、夜7時には終わるし参加してみようか。
 
その30秒後には妻にLINEで「土曜日、帰りが遅くなるけどいい?」と、お伺いを立てている私がおりました。
 
今回は「文章講座だからね」「ユニークな狼とやらを見といても損はないだろ」という上から目線的言い訳を胸に秘めて、いざ講座へ。
 
16時に自分の速読講座が終わって、17時からの文章講座へ。
なんという無茶ぶりか。(笑)

そして狼とのリアル遭遇… いや、ぱくっとね。もう。ぱくっと。

渋滞によるバスの遅延で2分遅れて講座会場、つまりは狼書店に到着。
 
裏道?
 
ラブホ街?
 
看板これだけ?
 
ビルの2階?
 
あれかしら。
狼さんって、結構、エピクロスチックな隠遁生活愛好者的草食系?w

 
 
そして、そのすべての認識が、
そして、クールな装いの中に秘めた勝手なライバル心が、
そして、書店経営なんてちょろいぜ的な自負心が、
そして、「見に来てやったぜ」的な上から目線が、
 
そのすべてが、書店のドアをくぐった瞬間にフリーズしたんです。
 
フリーズ。
 
そして、頭からガブリ。
丸かじり(かじられ)。
 
 
書店なのに何で書棚が少ないの?
 
書店なのに窓際にコタツが?
しかも、お客さん本を読まずにPCで仕事?
 
なんでテーブルセット?
しかも、高校生が自習室代わりに?
 
なんでソフトクリームの3D看板?
 
なんでドリンクメニュー?
 
なんでクリアなサウンドが響くスピーカーシステム?
 
なんで壁に巨大なスクリーンとプロジェクター?
 
なんで「秘本」とか書いて表紙も中身も見れない本が山積み?
 
なんで? なんで? なんで? なんで?
 
ここは書店・・・ですよね?
 
受付の前で並んでいるときも、文章講座の最中も、ずーっと落ち着かず書店をきょろきょろしていたら、書店員(?)の女性に「どうかなさいまいたか?」って職務質問されてしまいましたよ。えぇ。

私が自分の掟をやぶって狼書店に行くことになったワケ

「文章講座に行ってみよう」と思ったのは、単に「ちょうど文章指導の勉強をやり直していたから」であって、主体性を持って決めたことでした。
 
「夜の、他人の講座には絶対に行かない」という掟(禁)を破ったのも「仕事上、必要だと思った」からでした。
 
でも、そんなクールな理由は「うそっぱち」だった!
 
違う! それがこの狼の策略だったんだ!。ひーっ!
 
 
文章講座の説明なんて、長すぎて読みたくないレベルだったので、さらっと速読して流しただけでした。
 
それでも心の中に深くパイルが打ち込まれていたわけです。
横浜の某大手マンションベンダーが手がけたピサの斜塔のような「届かないパイル」ではなく、「しっかり深く刺さるパイル」が。
 
ちらっと視野に入った瞬間に、猫がまたたびに誘い込まれるように、「よし、行こう!」と催眠術をかけられてしまっていたわけですよ。
 
恐るべし狼。
恐るべしABC理論。
恐るべしギャップ演出。
 
ぱくっと頭から丸かじりされた結果、「本屋なんか楽勝だぜ」的な自負心は、私の中の本屋の概念とセットで消し飛んでしまいました。
 
そして、同時に「こんな書店を作るぞ!」と、頭の中に、狼書店とは全然違うコンセプトを描いている自分がおりました。
 
そう。全然違う。
 
だって、同じコンセプトで戦ったら、絶対に勝てる気がしないんですもん。

マーケティングとコンセプト設計の手本、本屋の未来像がここに!

小説なんて全然読みもしないくせに「この秘本も買ってみようかしら…」と思ってしまいそうになるレター。
 
元小論文講師の自負心が霧消し、素直に指導受けたくなる文章コンテンツ。
 
何より、恐らくは「本を買いに来た」ことすら忘れさせて、恐らくは「買いに来た本じゃない本」を大量に買ってしまうはめになるであろう空間作り。
 
私が学びたかったマーケティングも、コンセプト設計も、書店の未来も、すべてがここにある。そんな気分。
 
なんといいますか。
 
自分が「たかが文章講座」に、「たかが書店」に、マーケティングテクニックでもって催眠術をかけられていたということに、軽い目眩を覚えました。
 
まったく新しい夢の国に迷い込んだような、ふわふわ感とワクワク感が同居したような、そんな目眩。
 
週明け、速読講座が終わったら、また行こうと決めている自分がいます。
 
 
ちなみに、その狼野郎の名前は・・・
 
天狼院
 
天をも焦がす狼的存在。
全天でもっとも輝くシリウス。
そして学校、宗教的存在としての院。
 
そっか、美学と意志とコンセプトが一致すると、こんなにも破壊力が生まれるのか。
 
名は体を表す模範に出会った…?
 
またもや狼ガブリ。
 
 
 
福岡(天神・今泉)、東京(池袋)に書店がございます。
 
狼ガブリ的心地を味わってみたい方は、ぜひ足を伸ばしてみてくださいませ。
 
 
 
ただし、そこは「書店の皮を被った狼」であることをお忘れなく。
 
時間に余裕のあるときに行かないと、恐ろしい目に遭いますよ。
 
きっと、ブラジルの密林に迷い込むより、もっと恐ろしいことに…。
 
>>天狼院
 
ちなみに社長の三浦崇典氏がプロデュースしたという本がこちら。
こんな狼な方が本を作ったらどうなるのか?
気になりますよね…。
 
ストックビジネスの教科書

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この記事を書いた人

フォーカス・リーディング主宰者

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