マシュマロテストと「アリとキリギリス」の子育て術

「アリとキリギリス」という寓話を、あなたもご存知でしょう。
 
ビジネス名著『7つの習慣』第3の習慣「重要事項を優先する」の冒頭に、こんな言葉があります。

もし、常日頃から行っていれば、あなたの私生活の質を著しく向上させる活動がひとつあるとするなら、それは何だろうか。

この第3の習慣は、言ってしまえば「キリギリスをやめて、アリになろう」ということです。
 
寓話として幼少期に学び、そして名著を通じて突きつけられたこの問い。
私たちは常に、その反省の中に身を置いてしまっています。

  • 「よし、健康のために早起きしてジョギングをしよう!」(と思ったのに…)
  • 「よし、ダイエットのためにスイーツの間食をやめよう!」(と思ったのに…)
  • 「よし、将来のために、毎週1冊、本を読もう!」(と思ったのに…)

かつて、思ったのにやらなかったものが、実行困難なほどヘビーだった試しがありません。
単なる怠け心。単なる先延ばし。
単に「未来を見ないふり」で過ごしてきたに過ぎません。
 
あなたは今、「アリ」ですか?「キリギリス」ですか?
 
あなたは、自分の子どもに、どちらになって欲しいと望みますか?
 
そしてもし、親として、子どもが小さなうちに「アリ」の習慣を育んでやることが可能だとしたら、それをしてやりたいと思いませんか?

子どもの「マシュマロテスト」で何が分かるか?

そもそも「マシュマロテスト」とは何か?
ご存知ない方のために、そのテストの内容を紹介しておきましょう。

学生と私たちは、園児たちにとっては厳しいジレンマを突きつけた。報酬一つ(たとえばマシュマロ1個)をただちにもらうのか、一人きりで最長二〇分待って、より多くの報酬(たとえば、マシュマロ2個)をもらうのか、どちらかを選ばせたのだ。

もちろん、マシュマロは報酬の代表であって、実験に際してはその子が一番好きなお菓子を選ばせたそうです。
 
これは単に「子どもの我慢強さ」を試すための研究ではありません。
私たち大人も含めた「自制心」の研究であり、その「意志の力」が何なのか、どうしたら強くすることができるかという教育に関する研究なのです。
 
そして、その実験の結果とその後の追跡調査の結果、驚くべき(あるいは順当な?)結果が判明しています。

四歳か五歳のときに待てる秒数が多いほど、大学進学適性試験の点数が良く、青年期の社会的・認知的機能の評価が高かった。就学前にマシュマロ・テストで長く待てた人は、二七歳から三二歳にかけて、肥満指数が低く、自制心が強く、目標を効果的に追求し、欲求不満やストレスにうまく対処できた。中年期には、一貫して待つことのできた人と、できなかった人では、中毒や肥満と結びついた領域の脳スキャン画像ではっきり違いが見られた。

幼少期のテストで、ある程度の未来が見えるとしたら。
しかも、それを乗り越えて「アリ」の能力を身につけさせられるとしたら。
これは親あるいは教育者として知っておかなければいけないでしょう!

どうやってマシュマロの魅力に打ち勝てばいい?

目の前の誘惑に打ち勝って、未来の、本当に手に入れたい果実を手にするためにはどうしたらいいのか。── その答えは、大人でも子どもでも変わりありません。

対象から気をそらす

1つには「気をそらす戦略」があります。
小さいながら、目の前の誘惑に打ち勝つために、子ども達はいろいろな工夫をしたといいます。

手で目を覆う子、組んだ腕の上に頭を載せて横を向く子、顔を背けてご褒美の方をときおりちらっと見遣って、まだそこにあるのを確認し、待つ価値があることを思い起こす子もいた。小声で自分に語りかける子もいた。かすかに聞こえるささやきからは、「待っていればクッキーが二つもらえるんだよ」というふうに自分に言い聞かせたり、「もしベルを鳴らせば、この一個がもらえるけど、待てばこっちの二個がもらえる」と、選択と結果の付随性を口に出して繰り返して…(以下略)

なんともいじましい努力ですよね。

抽象化してしまう

その発展編とでもいうべき方法も同じような効果があったといいます。

「もし、そうしたくなればの話だけど、このお菓子は本物ではなくてただの写真だというふりをするという手もありますよ。」(中略)本物の報酬と向かい合ったときでも、それが画像だと想像すれば一八分待てた。頭の中に呼び起こした心象が、テーブルの上でむきだしになっている現物に打ち勝ったのだ。

フォーカスを変える

同じマシュマロを目の前にしても、フォーカスを変えることで待つ時間を長くできた、といいます。
 
マシュマロの「もっちりした食感や甘さという特性」にフォーカスして思い浮かべるか、「白くて丸く、ずんぐりしていて柔らかく、食べられる」というような非常動的な情報を思い浮かべるか、そのフォーカスの違いで待てる時間が変わったとのこと。

違うことを想像する

マシュマロから気をそらしてくれるような、何か自分の好きなものについて考えられた子どもは、やはり長く待てたそうです。(ただし、これはある程度、学年が上がってからのようです。)

子どもの「アリ」と「キリギリス」の特性を決める要因は何か?

では、このアリとキリギリスを分ける、自制の力を生むのは何でしょうか?
 
やはりDNAの影響は避けられないようです。
とはいえ、「生まれと育ちを簡単に分離できない」ことは間違いなく、実際、親の子どもへの態度によって、子どもが「アリ」にも「キリギリス」にもなりうると著者は語ります。

ほとんどの傾向はある程度まであらかじめ組み込まれているが、柔軟性も持っているので、可塑性があり、変化する潜在能力も備えているという言うべきだろう。

そして、自制につながる実行機能は「練習を重ねれば、その振る舞いを促す状況的なキューに遭遇したときには自動的に実行されるようになる」といいます。
つまり、親が日常生活の中で、継続的に抑制的な行動をとるように仕向けてやることが肝要だということですね。

子どもに「アリ」の自制心を授ける親の振るまいとは?

何かについて我慢させる、そして後で褒めてやる。そういう躾け方が必要だということは分かります。
 
しかし、実はもっと根本的に子どもの自制につながる力が、母親の振る舞いで育まれていることを指摘しています。
 
「パズルなどの認知的課題に一緒に取り組むときに、母親が幼児とどうかかわるか」を調べ、それがマシュマロ・テストにどう関わるかを研究た結果、次のような結論が得られたとのこと。

子どもの選択と、自由意志があるという感覚を後押しすることで自主性を奨励した母親の子どもは、のちにマシュマロ・テストで成功するのに必要な種類の認知的スキルや注意コントロールスキルがもっとも優れていることがわかった。

その逆もまた然り。「幼児を過剰にコントロールする親は、子どもが自制のスキルを発達させるのを妨げる危険を冒している」のだと。

過剰なコントロールを手放してこそ!

子どもの幸せ、将来の成功を願うなら、母親が口やかましく子どものすることに干渉することを手放さなければなりません。
 
そして、実に面白いのですが、「夢を叶える」系の自己啓発書で語られることが、ある程度科学的な根拠のあることだということもデータとして示されています。
 
例えば「できる!」と思わせること、「将来の自分のイメージ」をリアルに描かせることなどなど。
 
親がこういう方法論を学ぶことで、子どもの生きる力を育み、人生のよき応援団になれるとしたら、やっぱり親自らが学ばない手はありませんよね!
 
今回ご紹介した『マシュマロ・テスト』も、ぜひその1つの教科書として読んでみてください。(^^*

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