【書評】『子育ては言葉の教育から』(外山滋比古著)

今日は「言葉」と「子育て」について語ったエッセイをご紹介。
 
大ベストセラー書『思考の整理学』で有名な外山滋比古氏による子育て論です。
 
外山氏といえば、どちらかといえば社会人にとって有益な読書論や思考法、メモ法などについて語る方という印象です。代表作といえば『思考の整理学』『読みの整理学』『忘却の整理学』など「整理学シリーズ」を挙げる方が多いでしょう。
 
   
 
実際、氏の著書をざっと総覧すると、そのほとんどが「発想法」と「言葉(文章)」に関するもの。
 
「子育て」について語るのは意外な印象があります。

言葉の研究者&幼稚園の園長として語る子育ての箴言

まず、外山氏は英文学者としてイギリスの子育て事情にも通じています。
その道の専門家ではありませんが、日本の子育てを相対化し、客観視できる眼を持っていらっしゃいます。
 
さらにお茶の水女子大学教授時代に5年間、付属幼稚園の園長もお務めでした。
氏が常に「言葉の発達と教育」についてアンテナを張って幼稚園の活動や保護者の子育ての様子を、分析的に見ていたであろうことは想像に難くありません。
 
「さすが!」と思えるユニークな視点の提示で、日常の子育てに埋没している私たちにピリッと刺激のある話が展開されています。

「学ぶ」ための本ではなく、「自分を振り返る鏡」として使う本

外山氏の著作はほとんどの本がそうですが、ロジックが非常に雑。
普遍性のあるエビデンスを踏まえず、体験と思索をベースに語ります。
 
それでもその言葉が多くの人に説得力を持って響くのは、使われる比喩がユニークでありながら的確なこと。そして、個人的体験から出発しつつも、広い視野と深い洞察を経て鋭い普遍性に行き着いているからでしょう。
 
とはいえ、あくまで個人的な見解、気ままに書かれたエッセイ。(1980年代の出版。)
 
氏が日常の中で感じた「問題点」を謙虚に受け止め、でもストレートに受け容れ過ぎず、「自分の子育てはどうなっているだろう?」と我が身を振り返る鏡として利用するよう心がけたいところです。

第一部 子育てはことばの教育から

最初の章では、氏の感じる「子育てにおける言葉」にまつわる問題点が語られます。
 
「母のことばで子どもを育てるという考えがしっかりしていない」という主張も、インターナショナルスクールの流行や、all Englishの保育園の登場など、母語の教育をそっちのけで英語に走る母親が増えた時代には、はっとさせられる話かも知れません。
 
しかし、そういう分かりやすい主張にとどまりません。
 
母親の話す言葉のスピード、声の大きさ、阿吽の呼吸的に子どもの意図を察しすぎることなど、私たちの多くが意識していないであろう部分にスポットライトを当てていきます。
 
このあたり、ヨーロッパ言語、あるいはそれら言語圏での母語教育の実態を知っているからこそ持てる視点で、とても新鮮にはっとさせられます。

第二部 こどもの質問に答えていますか

第二部は、子どもとの関わり方にフォーカスして話が進みます。
 
現代の“他人に子どもを預けて働く親”の状況を「カッコー・ママ」と呼び、鳥のカッコーが自分の卵をオオヨシキリの巣に産み落とし、子育てをすべて人任せにしていることに喩えています。
 
そして、子育てに積極的に関わらない親、授業参観のマナーが悪い親、テレビに子育てを任せている親、子どもの好奇心からの質問をおざなりに流してしまっている親など、「親」のあり方について厳しく問いただします。
 
これらを他人事として流してしまわず受け止めつつ、自分はどこまで親としての責任を引き受けるのか、親としてのあり方をどのくらい見直すべきか反省したいものです。

第三部 「聴く」ことが勉強の基本

最後は「聴く」をテーマとしつつ、やはり話は多岐に及びます。
 
まず、イスラエルの伝統的な教育との比較から、日本人に「抽象性を鍛える」トレーニングが不足していること、テレビによって想像力を奪われている可能性があることを指摘します。
 
そのほか、学力の大前提として人の話を聴く力(姿勢)を身につけさせることの重要性や、知識ばかりを重視しすぎないことの重要性など、どちらかというと教育の基本の部分が論じられています。
 
これらをどの程度意識して実践できるかは、なかなか難しい問題ですが、親として頭の片隅に置いておき、自分の子育てを点検する材料にしたい内容ばかりです。

私たちの体は、食べたものと、学んだ言葉でできている

このブログでも書いてきたことですが、私たちの体は日々吸収している食べ物と言葉からできています。
 
であれば、「それはどういう効果があるのか?」という検証の前に、少しでもいい食べ物、いい言葉を与えるに超したことはないと思うのです。
 
この外山氏の本は、頭で素直に受け入れがたい主観に過ぎる話も混ざりますが、それでも「いい言葉を吸収する」という部分において、非常に示唆に富む話ばかりです。
 
小学校低学年より下のお子さんをお持ちの親御さんには、ぜひ気軽に読んでもらいたい一冊です。

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