福岡県「全県立校に電子黒板」の怪

2016.02.09付けの西日本新聞の朝刊に「全県立校に電子黒板」と題して、こんな記事が掲載されています。

2016年度から3年間で、全119校の県立学校に電子黒板を導入する方針を決めた。パソコン教室に配備済みの学校はあるが、普通教室に設置することで日常的な授業でかつようできるようにする。

なんともまぁ、はた迷惑な決断を、しかも膨大な予算を付けてなさったものです…。
 
この教育委員会の決定に学校現場の先生達や、ICTを授業で使いこなしている先生達の声を一切取り入れていないことは明らかです。
 
単に「流行だから」「なんか良さそうだから」「佐賀県に負けていられない」というレベルの理由と、あるいはどこか熱心な業者さんから空想レベルの魅力あふれるプレゼンがあいまった結果でしょうか。
 
このことは記事中の次の部分によく現れています。

黒板の電子化は、教員が板書したり消したりする時間を大幅に短縮。児童生徒の理解を手助けする映像や音声、参考資料も併用でき、授業の効率化につながるという。

なんでしょうかね。この業者の妄想プレゼンを真に受けたような解説は!(笑)

「教員が板書したり消したりする時間を大幅に短縮」は本当か?

まず、これは真実でもありますが、現実を知らない人が考える妄想です。
 
だって、一瞬で黒板に表示したとしても、生徒がそれを書き写す時間はまったく短縮できません。
また本来、書きながら解説したり、書くことで注意力を喚起したりする作業があるわけですよ。一瞬で表示したら、結局、そこを指し示しながら解説することになるわけです。
 
「大幅に短縮」って、本当に検証したのでしょうかね?
 
むしろ、液晶ディスプレイがもたらす「脳のお休みモード効果」のデメリットの方が大きくなる可能性があります。

※参考記事

[blogcard url=”https://www.kotonoba.jp/blog/denshi-kokuban/”]

「授業の効率化につながる」は本当か?

「児童生徒の理解を手助けする映像や音声、参考資料も併用でき」というのが真実だったとしても、それを毎時間活用することは考えられません。
 
それに何より、その資料を準備するためにどれだけの時間を割くことになると思っているのでしょう?
 
あれ? 業者が作った教材を購入するだけ?
 
授業というのは、同じ教科書を使ったとしても、同じ学校だったとしても、目の前の生徒の反応をリアルタイムのフィードバックとして受け止めながら微妙に変化していくものです。
 
これは黒板に書く内容もそう。書く順番、場所、強調の仕方などなど、すべてがライブなんです。
 
板書計画を作ったとしても、その通りには絶対にならないことを教師であれば誰でも知っています。事前に完成品を準備しようなんて発想にはならないはずです。
 
えっ?毎時間、クラス毎に微調整したらいい?
 
それって「効率化」なんですかね…。労働量は激しく増大しそうです…。
 
机上の空論で「効率化」とか主張されても、現場で苦労している先生は鼻白むだけですよね。(^^;
 
これが思考力を問うべく始まる新学力評価テストに向けての学力向上措置というのですから呆れるばかりです。教育行政に携わる人は、もう少し有識者、現場の先生達の意見を聞いて、効果が上がる方法に予算を投下して欲しいものです!

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フォーカス・リーディング主宰者

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