小中学生の塾代は、なぜ高額になるのか?

一昨日(2016.06.29)の日経新聞朝刊に「貧困家庭の子 勉強どう支援」と題して、国の政策として貧困家庭の子どもの教育支援をどうするのかという話題が採り上げられていました。
 
実際、これまでにも紹介してきたとおり、貧困は連鎖します。
経済的な格差が、そのまま教育格差を作り、次の世代の経済的な格差を再生産してしまうんです。

[blogcard url=”https://www.kotonoba.jp/column/against-poverty/”]

小中学校は基本無料ですし、公立高校も相当な割合の家庭が「授業料免除」になっています。
 
ですが、それだけでは「足りない!」のが現実。
 
その足りない部分を補うのが塾。
 
この塾代金が高いわけなんですよね・・・。

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塾代にお金がかかる秘密 その1

塾代にお金がかかる秘密、その1 ── 公的な支援が少ない!
 
実はOECD(経済協力開発機構)の加盟各国の中で、日本の教育支出の低さは2012年までの5年間連続で、安定感漂う最下位。(2015年11月報道)
oecd-edu
 
学力アップを考える上で、やはり「正課の授業」以外の手当が必要になる子どもは確実にいます。
それを公教育の中で何らか手当できればいいのですが、今の公教育のシステムの中でそれをやると、先生達が過重負担で倒れてしまいます。
予算を増やして人を増やすとか、仕組みを整えるとか何かをしないと。でも、文科省は「少人数学級は効果がなさそうだから、教師の数を減らそう!」と強く主張しており、教育に対する財政支出は増えません。
 
結局、公的な教育支援が足りないから、親が身銭を切って子どもを塾に通わせることになっているわけです。
 
北欧諸国では「子どもの教育」にかかる資金のほとんど(90%以上)を公的な負担でまかないます。
それに対して日本は「私費:公費=1:2」です。教育にかけるお金のうち30%以上を自前でまかなっている計算です。
この比率もOECDで最低ランク。もちろん受験制度などの、社会の仕組みも根本的に違うんでしょうけど。

塾代にお金がかかる秘密 その2

勉強をするには塾に行く必要があるという思い込みもありそうです。
 
ちなみにその記事によると、公立中学に通う生徒が学習塾などにかける費用は全国平均で月額約2万円。中学3年生だと約3.2万円だとのこと(文科省の2014年度調査)。
 
「成績を上げたいなら、塾に行かせないと!」なんて、どうして思うんでしょう?
 
ひょっとすると、塾が打ち出すキャンペーンに、まんまと乗せられているのかも知れません。(^^;
 
夏休みになると合宿だの特別講習だの、メニューにバリエーションがあって「どれを選んでいいか分からないから、とりあえず、そこそこ高めのメニューで!」そんなノリもありそうです。
 
塾としては、少しでも単価を上げたいわけですから、一応、お値段の安いメニューを用意しつつも、いろいろ説明して高額な商品をお薦めするに決まっています。

余談ですが、塾の側からすると・・・

学習塾経営者のみなさんと話をしていると、当然のことなのですが「どうしたら客単価を上げられるか」という話になります。
  
低料金をうたって生徒募集をすると、どうしても文句(クレーム)の多い親御さん、塾側の誠意・善意を汲み取ろうとしない親御さん、塾に責任を求めるわりに家庭での学習支援をまったくしようとしない親御さん…が増えてしまうという嘆きもあります。
せっかく「裕福でない家庭にも、よりよい教育を!」という志を持って塾をスタートした先生が、ほどなく「やっぱり値上げしたい…」と心折れる現状があるわけです…。
 
まぁ、そういう嘆きはともかくとして、塾として経営を成り立たせていくにはそれなりの対価は必要です。よほど大規模な集団指導でない限り、文科省調査にある「1ヶ月2万円」よりも高い単価でないと経営が成立しません。そうでなければ、バイトさんがブラックになるってことに…。

経営者が一人で教務と事務をこなす想定ですと、「それなりに個別対応」しようと思えば、在塾生を50人以下に抑える必要があります。絶対的な数値ではありませんが、よほどうまく仕組みを作らない限り、これ以上は無理でしょう。
だとすると、一人平均2万で売り上げがMAX100万。ここから教室の家賃、教材代金、集客費用などを引いていきます。
しかも4月から6月はだいたい生徒が減りますし、中学1-2年生だとその平均2万なんて数字は「夢のまた夢」です。(あくまで中1から中3までの平均が2万ですからね。)
学習指導で夜遅くまでがんばって、下手すると受験前は土日も指導をして…。なかなか大変な稼業でございます。

塾代にお金がかかる秘密 その3

まぁ、塾代にお金がかかる本当の理由は「手を打つのが遅すぎる」ことだと私は思います。えぇ。
 
保育園時代から読書の習慣を付けさせて、小学校に入ってからは宿題を丁寧にする習慣を付けさせる…。
自分なりに工夫して勉強できるように促す…。
 
もし、そんな取り組みをしていれば、受験のための小手先の技術を学ぶのに、そんなにお金を払う必要はなかったはずなんです。
 
そんな話を随分昔にも書きましたっけ。(笑)

[blogcard url=”https://www.kotonoba.jp/column/difference-of-scholastic-ability/”]

病気に喩えるなら、日頃の生活習慣に気を遣っていれば、大きな病気にかかるリスクも低いんですよってこと。病気になって初めて慌てふためくから、医療費にお金がかかるんです。予防医学ですよ。予防医学!
 
実際、投資対効果という意味でいうと、幼児教育が最も高くなることが、アメリカの研究で明らかになっています。

[blogcard url=”http://berd.benesse.jp/berd/center/open/berd/backnumber/2008_16/fea_ootake_01.html”]

興味がある方はこちらの本をどうぞ。

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ちなみに、塾教育を無償化する動きも…

貧困対策には教育が一番ということは、はっきりしています。
 
日経の記事によると、すでに市町村によっては予算を確保して、無料の塾を開くなど対策を取っている公共団体もあるようで、沖縄・南風原町の「結塾」というところが紹介されています。
なんでも、

  • 困窮世帯の子どもの授業料は無料
  • 講師らの人件費や家賃は県と国が負担

だそうですが、「経済的事情で通塾できない世帯も多いとみられ」ているのだとか。
そもそも遠くて通えないということになると、通塾のための交通機関を整備するなどの支援まで必要になります。どこまで国や市町村が負担できるのか、すべきなのか、難しいところです。
 
私塾の中でも、NPO法人として儲け抜きで格安指導(しかも個別)をなさっている塾があります。
 
福岡市ではエデュケーションキューブというNPO団体が運営する個別指導塾。

[blogcard url=”http://studyplace.education-a3.net/”]

ここだと、中学生が120分の授業を週2回受講しても、月謝が9900円と格安です。
こちらは代表者の方の志でもって、この料金設定をしているというすごい教室。
 
それ以外にも、福岡市の助成を受けて塾を運営しているNPOがあるようです。

[blogcard url=”http://www.nishinippon.co.jp/feature/life_topics/article/51419″]

お金をかけずに、いかに勉強をさせるか?

お金をかけずに勉強させる方法も、もちろんいくらでもあります。
 
今の時代、動画教材などを探せばいくらでも格安のものは手に入りますよね。
学研は月額540円。リクルートは月額980円といった具合。
 
そういう教材を使って済ませている子どもも、きっと多いはず。
 
ただ、教材があればいいってわけではなく、一番問題になるのは「教育に対する姿勢」です。
先生の人柄があってこその学習。先生の生き方、先生の哲学、先生の優しさや愛に触れて、子ども達は勉強をするようになるものなんです。
 
あるいは、既製品として作られた教材で、みんなが同じように理解できるわけでもありませんし。「その子のツボ」を見つけてケアする教務力は絶対に必要です。
 
そうなると、やはり「人(先生)」が必要になり、そこを親が務めきれないのだとしたら、やはりお金を出して…ということになってしまいます。
 
 
ということで、お子さんの教育はできる限り早い段階から手を打っていった方が安く上がるものです。
 
そこをスルーしてすでに…という場合には、せめて塾の煽り文句に乗せられないで、格安の教材なども活用しながら、親子二人三脚で乗り越えていきましょう!

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フォーカス・リーディング主宰者

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NPO法人 エデュケーションエーキューブ草場
NPO法人 エデュケーションエーキューブ草場
7 years ago

2点、補足・修正させて下さい。

1点目は、スタディプレイスの価格は私の経営者としての能力不足のため、現在は週2回2時間で120000円とさせて頂いています。HPの更新が滞っていて申し訳ありません。

2点目は、この料金やひとり親世帯等の奨学制度が維持できるのは、残念ながら私の志だけではなく、100名を超える私たちの活動に賛同頂き、寄付で支えて頂いている支援者の皆様のお陰です。

古い情報でご迷惑をおかけしました。

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