国語・算数の思考力はどうしたら身につくのか?

昨日のブログで全国学力・学習状況調査のことを書きました。
 
総論的には、全国の学校・先生方の努力によって学力向上傾向が見られるものの、

  • 改善されたのは基礎知識の面が中心
  • コミュニケーションや表現、論理的思考力などについては課題が残っている

という状況です。
 
では、課題が残った問題というのは、どういう問題だったのでしょう?
 
例えば、誤答が目立った算数の問題がこちら。

小学校・算数B問題

ともみさんの学校では、小学校に入学する前の子ども達を招待して学習発表会を行います。子ども達は、24人来る予定です。学習発表会では、来る予定の子ども達全員に、メダルを作ってわたすことになっています。
1人分のメダルの材料は、次の通りです。
 
1人分のメダルの材料
・80cmのリボン
・円の形にきった厚紙
 
先生は2000cmのリボンと、タテが39cm、横が54cmの長方形の厚紙を用意しています。ともみさん、はるおさん、あかねさんの3人は、リボンと厚紙が足りるかどうかについて考えています。
24人分のメダルの材料として、今あるリボン2000cmで足りるかどうかを、3人はそれぞれ式で考えています。
 
ともみ:80×24=1920
はるお:2000÷80=25
あかね:2000÷24=83.3…
 
ともみ・はるお・あかね:「リボンは足ります。」
 
上の3人の式は、それぞれ何を調べるための式ですか。
下の1から3までの中から1つずつ選んで、それぞれ番号で書きましょう。

選択肢

1 今あるリボンから、1人分のリボンを何本取ることができるか
2 今あるリボンから、1人あたり何cm取ることができるか
3 全員分のリボンを取るのに必要な長さは何cmか

小学校・国語B問題

小学校の国語は文字起こしすると大変なことになりますので、図とPDFでご紹介するに留めます。
kokugo28b-4
※クリックするとPDFが表示されます。

これらの問題を解くのに必要な力って何だろう?

実力テストだからって、面倒な文法問題とか方程式の応用問題というわけではないんですよね。
なんというか「読解力と論理的思考力があればいい」というレベルの問題がほとんどです。
 
多分、このブログ記事をお読みのあなたなら、この問題、何でもなく正答を導けることと思います。
実際、それほど難解なことは問われていません。
 
PISAを意識したものとも言えます。
学校で「5教科」という形で学ぶ学問を、より生活上、仕事上に不可欠な合理的な思考につなぐきっかけ作りとも言えます。
 
ただ「つなぐ」と書きましたが、現実にはつながっていないから解けないわけです。
5教科で学ぶ学問が何かおかしなことになっている可能性があるってこと。
 
算数・数学で具体と抽象を行き来する力が養われていないとか。
国語で、言葉に表される意図を読み取る力が養われていないとか。
数学の証明問題で、論理的な思考展開力が養われていないとか。
自分の知らないこと、「今、分からない」ことに対して、粘り強く調べたり、考えたりする姿勢が養われていないとか。

大人が「簡単」と思えるとしたら、なぜなんだろう?

なぜ大人には簡単に思えるんだろう?
 
多分、普段、文章を読んだり、生活や仕事の中で、状況を数式化し、計算したりといった経験をしているからではないかと想像するわけです。
いや、逆にいえば、そういうことが苦手な人は仕事でも苦労しているでしょうし、ひょっとすると、この問題も解けないのかも知れません。
 
でも、多くの大人は、少なくともこのブログを読んでいらっしゃるあなたには、「この問題の、どこが難しいんだろう?」って思えるはず。
 
私たちが小学生の時からできていたのか?
あるいは、大人になる過程、大人になってからの生活の中でできるようになったのか?
 
ただ、一つ直感的に思うのは、「これは特別な勉強が必要な学力ではない」ということです。

まずもって文章が読めているかどうか

これまで中学・高校生の指導をたくさんしてきましたが、勉強法をどれだけ最適化しても、どうしてもぶつかってしまう壁があります。
大学生や社会人のみなさんへの指導でも同じです。
 
それは「書かれている意図を正しく読み解く」力、読解力です。
これについては、こちらの記事でも書いたとおりなので、ぜひご一読を。

[blogcard url=”https://www.kotonoba.jp/distinations/can-your-child-really-read-sentences/”]

粘り強く考えた経験があるか

もう1つ、これまた大人でも子どもでもぶつかってしまう壁。
問われたことに対して、反応レベルのスピードで「分かりません」と返してしまう思考習慣です。
 
もう30年以上前から教育界では語られていることなんですけどね。
問いと答えの間」の問題。
 
「知っている・知らない」、「直感的に分かる・分からない」を乗り越えよう。
「分かろうとする」思考習慣を手に入れよう。
そんなお話です。

どうしたら、子ども達にこのような力を身に付けさせられるのか?

上に書いたように、何かすごく特別な、例えば難関私立中学・高校の受験勉強のようなトレーニングが必要とはまったく思えません。
 
その年齢にふさわしい語彙を身に付け、丁寧に文章を読み、丁寧に考え抜く習慣さえあれば、自然と身につきそうな内容です。
あるいは、「よく分からない問題」(ここでいう問題というのはテストに限らず、実生活、仕事上で抱える問題を含む)にぶつかったときに、自分の持っている知識と知恵を手がかりとして総動員し、粘り強く考えていく訓練とか。
 
だからこそ、昨日の記事で紹介したような分析結果が出ているわけです。

児童生徒は、自らが設定する課題や教員から設定される課題を理解して授業に取り組むことができている」などの項目で、「その通りだと思う」と回答した学校は、就学援助率にかかわらず各教科で平均正答率が高かった。

また、「熱意を持って勉強している」「授業中の私語が少なく、落ち着いている」と、学習規律の項目で肯定的な回答をした学校の方が、就学援助率にかかわらず各教科の平均正答率が高い傾向にあった。

※以上、出典は「ReseMom(リセマム)

では、それを疎外するものは何なのか?

ということは、なんですよ。
 
こんな当たり前のことを“身につかないように”疎外する要因があふれているってことなんですよ。
どうしたら身につくのか、ではなくって、何がそれを疎外していて、どうしたらそれを避けられるか、なんです。
それを回復するのが、今の教育の至上命題なのかも知れません。
 
いったい、その疎外要因って何でしょうね?
 
勉強をパターン練習かのごとくテストテストテストで追い立てているのは何?
考えることよりも、手っ取り早く「分かりません」で済ませて答えを確認させるのは?
豊かな言葉、的確な思考力を奪っているものは?
そして、小学校時代にどういう過ごし方、どういう勉強のさせ方をしたら、いいのか?
 
本当の意味での学力と受験のための学力を両立させられるような勉強法とは?
 
そんなことを、先生も保護者も真剣に考えましょう!

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この記事を書いた人

フォーカス・リーディング主宰者

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