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子どもの学力向上のために親にできること

四方山話・コラム

2015.08.03の日経新聞にこんな記事(お茶の水女子大学教授 耳塚寛明氏による寄稿)がありました。

「SES(社会経済的背景)最下位層の子供が1日に3時間以上勉強して獲得する学力の平均値は、SES最上位層で「まったく勉強しない」子供の学力を有意に下回った。」

※ちなみに最下層の親の平均年収は約347万、最上位層は約918万。

まさに「格差は遺伝する」− そんな言葉がぴったりの調査結果です。

実際、私たちは生物学的遺伝(gene)と文化的遺伝(meme)の2つの遺伝で、親から子へとその資質を受け継いでいきます。

しかし、それは「だからどうしようもない」ことを意味するわけではありません。
むしろ「だからこそ、親としてやるべきことがある」という発想が必要なわけで、それについてつらつらと語ってみたいと思います。

調査・分析結果からの考察など

ちなみにこれは、お茶の水女子大学を中心とする研究チームが2年かけて分析した結果判明した事実。その研究レポートは2014年3月に発表されており、そこに非常に詳細な研究結果が記されています。

そこからかいつまんで、いくつかご紹介すると・・・

親の姿勢と学力の関係

  • 家庭における読書活動、生活習慣に関する働きかけ、親子間のコミュニケーション、親子で行う文化的活動、いずれも学力に一定のプラスの影響力がある中で、特に家庭における読書活動が子どもの学力に最も強い影響力を及ぼすことが明らかになった。
  • 「子どもが決まった時刻に起きるよう(起こすよう)にしている」「子どもを決まった時刻に寝かせるようにしている」「毎日子どもに朝食を食べさせている」家庭の子どもの方が高い学力を示している(特に小学校ではその傾向が強い)。
  • 自分でできることは自分でさせている」「子どものプライバシーを尊重している」「子どものよいところをほめるなどして自信を持たせるようにしている」については、これらに該当する家庭の子どもの方が学力が高い。
  • 「子どもに本や新聞を読むようにすすめている」、「子どもと読んだ本の感想を話し合ったりしている」、「子どもが小さいころ、絵本の読み聞かせをした」、これらの項目に「あてはまる」という家庭ほど子どもの学力が高い。
  • 「普段、子どもの勉強をみている」「計画的に勉強するようにうながしている」「子どもが英語や外国の文化に触れるよう意識している」保護者の子どもほど概ね高学力の傾向が見られる。「子どもに「勉強しなさい」とよく言っている」家庭ほど子どもの学力は低くなる。
  • 子どもと一緒に「美術館や劇場に行く」「博物館や科学館に行く」「図書館に行く」家庭ほど子どもが高学力であることがわかる。
  • 保護者の年齢が 45~49 歳の子どもの学力が(小・中とも)最も高いことが分かる(父親についても、母親についても同じ傾向が見られる)。父親が常勤職員の子どもの学力が最も高いが、母親については明確な関係は見られない。

学力格差をなくすための取り組みについて

  • 「社会経済的背景が Lowest SES で 3 時間以上勉強しているすべての児童生徒の学力が、Highest SES でまったく勉強しないすべての児童生徒の学力を下回っている」ことを意味するわけではない。
  • 家庭背景の不利を児童生徒個人の学習時間でのみ克服することはきわめて難しい。
  • 学力につながる学習時間のポイントは、小 6 時点では「30 分以上」であり、中 3 では「全くしていないかどうか」
  • 「自分で計画を立てて勉強をしている」、「学校の宿題をしている」、「学校の授業の 予習をしている」、「学校の授業の復習をしている」、「苦手な教科の勉強をしている」、「テストで間違えた問題について勉強している」の 6 つの変数のうち(中略)最も普遍的に学力に対してポジティブな効果のある学習方法は、「学校の宿題」であった。
  • 「放課後の補充学習」「習熟の遅いグループに対する少人数指導」「教科の指導に関する小中連携」「家庭学習の教員共通理解」の4つの要因は、児童の SES との交互作用の値がマイナスで統計的に有意。
  • システムとして小中連携や家庭学習に取り組んでいる学校が、家庭背景の不利な子どもの学力を向上させている。
  • 高い効果を上げている学校の共通の特徴
    1.宿題だけでなく、自主学習に取り組ませていた。しかも、毎日提出させチェックしコメントを書き、返却するというサイクルを繰り返すことで、自己評価能力・自己管理能力の内面化を計っている。
    2.管理職を含め、同僚との関係が良好であった。また管理職がリーダーシップを発揮しており実践的な教員研修も重視されていた。
    3.小中連携教育の推進、異学年交流の重視。
    4.言語に関する授業規律や学習規律の徹底。ノート指導、書くこと・話すこと・聞くことの能力向上。
    5.学力・学習調査の積極的な活用。
    6.基礎・基本の定着の重視と少人数指導、少人数学級。

この研究で明確になったことは、ある意味で「当然のこと」であり、感覚的に「そうだろうな」と誰もが思っていたことではないでしょうか。

それでも、親の子どもの学力に与える影響の程度や学校を中心とした教育・学習について、これだけリアルな数字と考察が出されることで、よりリアルにその対策を考えることが可能になりますよね。

学力格差を生む3つの要素

このレポートからはっきりと分かるのは、子どもの学力に与える「親」と「学校(先生)」の影響の大きさです。

過去記事「子どもの勉強、どうすべき?(#1/4)」に書いたとおり、学力につながる要素は大きく3つあると考えられます。

これは別に私がオリジナルで語っていることではなく、学習、スポーツ、音楽などあらゆる領域で昔から語られる話です。
 
学力は時間軸上の「今」という「点」の努力で作られるものではありません。
 
この世に生を受けてから現在に至るまでの時間の積み重なり、つまり「線」でとらえなければなりません。またそれは、本人の時間の積み上げだけでなく、それを支える親や学校といった環境まで含めた「面」の積み重なりの果実と考えるべきものなのです。
 
であれば、スタートラインの条件を規定する「遺伝」が影響を与えないわけはなく、実際、過去記事『遺伝の影響の大きさ』でも紹介しているとおり、近年の研究で、遺伝が学力に非常に大きな影響を与えることが確認されています。
 
蛇足ながら、アメリカで行われた同種の研究調査を紹介している『ヤバい経済学』(第5章「完璧な子育てとは?」)(2007年5月、日本語訳出版)から「学力は生まれと育ちのどちらが強く影響するか」という話を引用しておきます。

「・・・養子を貰ったほうの親たちは、典型的に、子供の生みの親よりも賢く、教育水準が高く、所得も高いことを発見した。でも、そんな育ての親の有利な立場は子供の学校の成績にまで及んでいなかった。・・・養子は学校では比較的成績が悪い。育ての親の影響は遺伝子の力に負けるみたいだ。」
※色強調はブログ主による

 

「遺伝」の影響について、今回のレポートでは一切言及されておらず、あくまで「親の経済状況」だけにフォーカスされています。
ですので、その部分を仮説で補いながら、以下、私なりの考察と提案をしてみたいと思います。

子どもの学力向上のために親は何をしたらいいのか?

1.「親の遺伝子」と正面から向き合う。

子どもの学力のかなりの部分が「親の遺伝子」で決まります。
が、それは遺伝で「学力が決まっている」ということではありません。
学力を伸ばすための、その子にふさわしい学び方(方法やペース)に個性があるということなのです。
 
自分自身が勉強が苦手で、「勉強しなさい!」と言われてできなかった歴史を忘れて、我が子にただ厳しくそれを言い放つだけの親御さんをよく見かけます。
おそらく自身の反省から来る親心でしょうが、それでうまくいった例を私は知りません。
 
自分のこれまでの経験を踏まえて、どうしたら勉強に興味が持てるか、がんばれるか考え、押しつけがましくない形で、子どもの応援に活かしたいところです!

2.「○○をしてやらなきゃ!」というプレッシャーを持たない。

耳塚氏らのレポートを読むと、図書館とか博物館とかに連れて行かなければ…とか、何か具体的な行動を脅迫されているような気がしてしまいますが、そんなことはありません。
 
調査では、親に対して「何をしたか」「どんなことを話しているか」が問われていますが、そこで浮かび上がるのは「子どもの将来について、親がどんな姿勢で関わっているか」という「親のあり方」そのものなのです。
 
先にご紹介した『ヤバい経済学』では次のような米教育省の調査結果が紹介されています。


(試験の点と)相関していない要因は次のとおり。
  家族関係が保たれている。
  最近よりよい界隈に引っ越した。
  その子が生まれてから幼稚園に入るまで母親は仕事に就かなかった。
  ヘッドスタートプログラム(※)に参加した。
   ※米連邦政府の育児支援施策の一つで、幼児への多面的な養育支援
  親はその子をよく美術館へ連れて行く。
  よく親にぶたれる。
  テレビをよく見る。
  ほとんど毎日親が本を読んでくれる。

※注:色強調はブログ主による。
  耳塚氏らのレポートと相反しているように見えるものを強調した。

これを見ると、「何をしてやったか」が学力に直接結びつくわけではないということが分かりますよね。(^^*

3.親の生き方、家庭の文化を整える。

子どもの学力を決めるのは「勉強しなさい」という直接的な言葉ではありません。
「勉強しなさい!」という言葉が学力向上に一切プラスにならないことが、レポートにもはっきり示されています。
 
学力を決めるのは、親から子への直接的な行為でも言葉でもなく、「家庭の文化」だと考えると希望も持てますし、親としての姿勢を正したくなりますよね?
 
「親の年収」も、親の生きる姿勢が反映された数字と考えると分かりやすいかもしれません。
だって、高学歴=高年収でないことは明らかですから。
 
高校教師時代、中学校の進路指導主事時代から思っていたことですが、「親の後ろ姿が一番の進路指導」なんです。
親自身が読書を通じて自分を成長させる姿や仕事に熱意を持って取り組んでいる姿こそが、子どもの学習意欲の源泉になっているんです。

4.小さな頃から長期展望&戦略で支援する。

私は「子どもの学力の心配と対策をするなら幼稚園・保育園時代から!」と常々語っているのですが、今回のレポートでもそれを裏付ける記述が散見されます。
たとえば次の3つ。

  • 学校外教育支出と学力との関係は強く、概ね学校外支出が多い家庭ほど子どもの学力も高いという傾向が見て取れる。
  • 中学生については、学校外教育支出5千円から2万5千円までの学力差は非常に小さい。
  • 学習時間と学力の関連の格差は学年が向上するほど広がっているといえるかもしれない。

小学生の塾・教材への支出と成績の関係には強い相関性が読み取れます。
都心の中学受験に関する塾等を例外として、小学生対象の塾というのは、基本的に学校の勉強の補修科的な存在です。金額は「通っている時間数」に比例しているものと考えていいでしょう。
 
そして年齢が上がるにつれて、その影響力は下がってくる、と。
 
だからこそ「学齢の早い段階で手を打とう!」という話なのです。
 
幼稚園・保育園の段階の「絵本の読み聞かせ」からスタートして、小学校入学段階から宿題をちゃんとこなして「できた!」で終えること。── 小学校の高学年になって、「それまでやってこなかったツケ」を精算させる親子の労力を考えれば、これがどれくらい「割に合う」か想像に難くないはずです。

5.普通の勉強を、普通に暖かくサポートする。

環境・先生という要素としての学校や塾も、もちろん重要です。
学校と塾で伸び悩んでいた生徒が、勉強のやり方を変えただけで突然優秀な成績を収めるようになるなんてことは日常茶飯事です。
 
かといって「右脳開発」のような特殊な教育はまったくお勧めできません。
そういう教育がダメなのではなく、何の役に立つか分からない、イメージだけの特殊な教育を受けさせようという親の姿勢・文化がダメなのです。
【参考記事】⇒『不登校の原因「幼児教育は不登校の原因になる危険性がある」』
  
レポートの中に「宿題」の重要性について言及されています。
また、格差解消に効果を上げている学校の取り組みについての言及もあります。
どちらも、言ってみれば「普通のことを丁寧に指導する」ということ。
学習の大部分を学校教育の中でおこなっているのですから、指導者たる先生が設計した「授業+宿題」に取り組むのが基本であり、結果として無駄がないわけです。
 
問題は、それを子どもがちゃんとこなせるように愛情を持って根気強く関わっていけるかどうかということですね。

6.小学校・中学校に大きな期待を抱かない。責任を転嫁しない。

学校の先生というのは超多忙です。そして、サービス業(公務員)です。
レポートにあるような丁寧な支援体制を、すべての学校で受けられるわけではありません。
 
また、学校の先生は革新的な教育法を研究する人でもありませんし、小学校でも30人以上、中学校の教科指導ともなれば200人以上の生徒を受け持っています。
 
ですので、はっきり言って、学校への過度な期待と責任転嫁は無意味です。
 
逆に親が「学ぶ意欲と文化」を子どもに持たせてやれれば、学校での学び方が変わります。それだけで子どもの学力・成績が変わることは想像に難くありませんよね?
 
中学生で「3時間以上の勉強」をもってしても逆転できない「差」はそこにあると考えるべきでしょう。

補足と提案

このブログ・サイトの大きなテーマにも直結するのですが、レポートの中で、学力に大きな影響を与える要素として「読書」の重要性が明確に示されています。
 
親としてはできれば絵本の読み聞かせ時代から、真剣に取り組みたいところです。
 
ただし、長期にわたる継続的で戦略的な関わりが必要ですし、買い与えるだけでも、「読みなさい」というだけでもダメ。
 
そしてそれをスムーズに「小学校入学後の勉強(宿題)」と「読書習慣」につないでやること。
小学校3〜4年生までなら「まずは読書から」というやり方で十分に学力アップにつなぐことが可能です。
 
ただし「勉強しなさい!」という、子どもに責任転嫁する姿勢を捨てて、子どもの勉強を愛情を持って見守るスタンスを作ること。
そして何より親自身の文化を変えることは言うまでもありませんね!

親の文化を変えるための教科書としてお勧めの本×2冊

親の文化は「言葉」と「態度」にあらわれます。それを変えるのは難しいことではありません。
手始めに「子どもにかける言葉」を変えてみてはいかがでしょうか?
 
4年ほど前に保育園の研修会に来てくださった先生ですが、保護者の皆さんから「具体的に何をしたらいいか分かってよかった!」「明日から子どもへの接し方が激変しそうです!」と大絶賛でした。
 
西角けいこ著『子どもの成績は、お母さんの言葉で9割変わる!』
子どもの成績は、お母さんの言葉で9割変わる!

 
こちらは「日記」「習慣」といったキーワードで教育(自己教育を含めて)を語る今村先生の本。
「習慣」の重要性と、それを子どもに伝えるために親がどう変わらなければならないのか、どういうしつけ方、言葉のかけ方をしたらいいのか、学習に取り組ませる際の注意点は…など具体的なノウハウを学ぶことができます。
 
今村暁著『子どもの成績を決める「習慣教育」』
子どもの成績を決める「習慣教育」

 
こういう「親が、子どもの学力アップのために何ができるか」というノウハウは、書店に出向けば驚くほどたくさん並んでいます。
 
ぜひ、大型書店に出向いていって、問題意識にひっかかる本を数冊手にとってみてください!

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