ヤマダ電機の中国爆買い依存から、内発的発展の価値について考えてみた

 
中国人の爆買いが私たちのお財布を支えてくれているというのは、ある部分、真実なんでしょうね。
 
食品の安全性の問題だとか海賊版の問題だとか尖閣諸島の問題だとか、日本人としてのマイナス感情の要因はたくさんありますが、素直に「ありがとうございます」という気持ちです。
 
さて、そんな「中国人爆買い」に絡んで、今年の春、こんなニュースがありました。

「都心で中国人観光客の『爆買い』を取り込むことに成功しているヨドバシカメラやビックカメラとは対照的に、ヤマダは郊外・地方を中心に成長してきたため、人口減少などで消費力が落ちている地方経済低迷のダメージをもろに受けています」
──現在ビジネス・賢者の智恵
「ヤマダ電機「閉店ラッシュ」が意味するもの 「量販店」が消える日 家電に続いて、スーパーも危ない」より

その結果として、この春(5月25日)全国約1000店舗ある直営店のうち46店を閉めるという発表があったわけです。
 
ヤマダ電機の失敗の要因は様々でしょうが、

  • 時代・社会の流れを読めなかった。
  • 「ヤマダ電機」にいくべき理由=「ならでは、の高付加価値」を付けられなかった。
  • 来店してくれる大切なお客様を大事にするための社員教育をおこたった。

というところは、誰しも共通認識として語るところでしょう。
 
あれから半年。
今度はこのニュースです。

東京駅前で「爆買い」ウエルカム ヤマダ電機開店
「JR東京駅前に、外国人の「爆買い」対応店舗が出来た。
ヤマダ電機は29日、今日30日に東京都千代田区八重洲でオープンする新店舗「Concept LABI TOKYO(コンセプト ラビ トウキョウ)」の内覧会を開いた。地下1階から10階まで、各フロアのコンセプトを「Stage(ステージ)」で表現。地下1階は「Japanese Gift Stage」で、外国人が日本の土産品として購入する商品を約4000点置いた。」
── 日刊スポーツ(2015.10.30)より

このお店がどうなるか、私には予想ができません。
 
ただ、「なんだろう、この節操のなさは?」という違和感を覚えます。
 
この打ち手はヤマダ電機ならではの価値を表現し、ヤマダ電機の未来を自ら創り出すものなのか?という素朴な疑問です。
 
確かに低迷の1つの原因に「爆買いを取り込めなかった」ことがあったかも知れません。しかし、爆買いなんてものは、たまたま入ったラッキーパンチみたいなもの。考えなければならなかったことは、もっといろいろあるはずです。

外的なものへの依存は、不安定さを生む

ビジネスにせよ、個人によせよ、何かを成し遂げる大きな要因を「外部」の何かに依存してしまうと、確かな未来が描けなくなり、常に不安を背負うことになります。
 
高度成長期以降の「地方」が、外の大企業を一生懸命に誘致することで、地域経済を盛り上げようとしたことがありました。
確かに大企業が移転してきたら一時期は潤います。
しかし、企業はあくまで自分の利益のために動く存在。
景気が悪くなれば撤退したり、もっと条件のいいところに移転したりします。
 
そして、地方はそれをとめることができません。
よく「工場閉鎖」のニュースに対して、地方議会が反対決議をするというニュースが紹介されます。
 
喩えていうなら、今まで金を落としてくれた旅行客が「じゃ、事情があるんで帰りますね」といったら、店主が家族会議を開いて「帰るな!」と文句をいうようなもの。
 
完全な筋違いです。
 
第3世界では、海外の企業に依存して同じ目に遭うだけでなく、公害を置き土産にされてしまうという問題が、いろいろな国で起こりました。

力のある人、お店はラッキーパンチをむしろ排除する

有名な話ですが、名店とよばれるところはテレビの取材を断るといいます。
テレビを見てどっと押し寄せる、興味本位の一見さんのために、長らく店を愛してくれているファンに迷惑がかかることを恐れるからだとか。
 
もちろん、そういうラッキーパンチ的な要素を上手に活用して伸びていく企業もあります。
でも、そういうところでも、あくまで「利用する」に過ぎません。
自分の確かな行動の軸と基盤があり、ラッキーパンチ後のマイナスの影響を最小限にし、むしろそれをレバレッジにして飛躍する策を持っているわけです。
 
件のヤマダ電機はいったいどうなんでしょう?
 
今回の八重洲出店は、本当にヤマダ電機の長期展望に沿ったものだったのか?
中国人が来なくなるかも知れない、ちょっと先の未来をどう描き、そこに「依存」しないシステムをどう用意しているんだろう?
 
もし、買う気満々の中国人に対応できる中国語スタッフばかりを配置して、家電製品についての素養を持ったスタッフが手薄になるとしたら?
 
単に「安い」以上の価値を作り出せなかったとしたら?
 
ヤマダ電機の未来は、果たして「中国景気とともにある」のか、「内側にある価値とともにある」のか。
さて、どうなるのでしょうか?

我が子にも「内発的発展」の価値を伝えよう

私はこのニュースを、いつか息子との会話のネタにしようと思っています。
 
「なんで、おばあちゃんちの近所のヤマダ電機はつぶれたんだと思う?」って。
 
そして、他人や外部のものに過度に依存して、自分のやりたいことや未来を描いてしまうのは、実はとても残念なことなんだよって。
 
魅力的に見える「外」のものを追いかけるのではなく、自分の内側にある「本当に大事にしたいこと」を追求することに、人生の価値があるんだよって。
 
経済学の世界では、自らのリソースを生かし切り、自らの理論で発展していこう、そのために外部のリソースを活用しようという発展のあり方を「内発的発展(論)」と呼びます。
 
企業も人も地域も、これを忘れてしまうと、自分が何者かを見失った存在、常に誰かに依存するみっともない存在になってしまいます。
 
自省の念を込めて、息子にしっかりと伝えたいと思います。

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この記事を書いた人

フォーカス・リーディング主宰者

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