「プログラミング20年必修化」は教育に何をもたらすか?

四方山話・コラム

ただでさえ2020年の高大接続改革で
教育界がぐらぐらしている状態ですが、
またしても、政府が何やらやろうとしています。

政府はコンピューターのプログラミング学習を小中学校で2020年から段階的に必修にする方針を固めた。
 ── 日経新聞 2016.04.19朝刊

確かに、世界はITで動いているといっても
過言ではありませんし、世界の経済の中核に
来るのはICTやIoTの技術なのかも知れません。
 
が、それを小中学校に導入する意味、必然性が
どこにあるのか、まったく理解できません。
 
 
九州の某県が「論理思考力を養う」などとうそぶいて
小学校低学年のプログラミング講座を始めました。
これは莫大な予算と時間を使っていますが、その効果は
不明で、とりあえず生徒が「楽しかった」とアンケートに
答えているのが救いというレベルです。
 
※参考 ⇒H27.6.9 武雄市「ICTを活用した教育(2014年度)」第一次検証報告
 
このプログラミング教育で何が身につくのか
まったく不明です。
本当に、将来のIT技術者を多数輩出するという
期待に応えてくれるのかも。
 
 
ちなみに、某県のような「プログラミングで論理思考力を」
というような野望は、基本的に砕け散る運命にあります。
 
それは、文科省も多分、分かっているんですね。
 
だから、某県のような無茶はしないのだろうと思います。
 
それを示す資料がこちら。
 
プログラミング⼈材育成の在り⽅に関する調査研究
 
この7章「基礎的能力の発達に基づく段階的育成方法」に
こんな記述があります。

  • IF-THEN 型の論理構成は9歳10歳まで理解できない。また、論理的思考は、11歳以降でなければ理解するのは難しい
  • 論理的な考え方、抽象的な能力が限られているので、それが備わってからやるべきである。Scratchの主なターゲットは8歳以上である
  • 11,12才以上から、抽象的一般的な形で論理形式的に考えることができるようになる形式的操作期 (operational stage)としている(Jean Piaget44)。
  • フローチャートの学習は小学校 5 年生以上になってからでないと難しい。よほど優秀な場合は小学校4年生でもできる場合もあるが、小学校3年生以下にはまず不可能である。

これを読めば、某県で小学校低学年を対象にしている
プログラミング教育の浅はかさが分かります。
 
というか、小学校時代のプログラミング教育は、
あまり功を奏さないのでは?という予感満載ですよね。
 
それで政府としては、、、

小学校では数行のプログラムで画面上の絵を動かして遊ぶなど楽しむことに重点を置く。

だそうですよ。
 
確かに、小学校時代から(ただし中学年以上)ゲームっぽいものに
親しんでおけば、中学校に入って、それをもう少しロジカルに、
高度な学習にしていけるはず…と考えられなくもありません。
 
 
でも、「パソコンゲームで遊ぶ」のと「パソコンでゲームを作る」のとは
全然違う世界。
 
そこが自然とつながる子どもが何パーセントいるのか?と考えると、
ちょっと頭を抱え込んでしまいます。
 
大きな代償を払って、どんな大きな成果が出せるんだ?って。 
 
このプログラミング教育のために、何かの授業を
削って時間を捻出することになるわけです。
 
2020年といえば、大学入試改革元年になるはずの年。
 
しかも小学校5,6年生の英語教育も正式教科化されます。
 
英語の授業時間をどう捻出しよう?って、すでに
文科省も頭を悩ませている現状に、プログラミング?(苦笑)

文部科学省は、(3月)14日、休み時間や夏休みを活用して必要な時間数を確保する案を明らかにした。
── 日経新聞 2016.03.15

休み時間とか朝読の時間といった「すき間時間」を
かき集めて単位として捻出しようっていう算段を
している現状ですよ・・・
 
しかも、それを支える先生達は?
 
英語の授業もこなさなければならず、
ICT機器を効果的に活用せよといわれ、
さらにプログラミングまで・・・!
 
どう考えても無理。
 
 
今回のプログラミング教育必修化の方向性は、
時代を考えれば分からなくもありません。
 
しかし、それを導入したら、
子ども達にどのようなメリットをもたらし、
それが社会的にどれくらい大きなメリットとなるのか。
それは「捕らぬ狸」ではない確かな皮算用なのか。
 
そこをちゃんと計算して欲しいものですね。
 
そして、もし本気なのであれば、
ひょっとすると、国語・算数・理科・社会・英語という
教科の枠を取り払って、新しい教育のフレームを
再構築していくような流れになっていくのが
筋なのかも知れませんね。
 
さて、2020年という近未来に向けて、
義務教育の世界がどう動いていくのか、
その端っこにいる身として、注意深く、
興味を持って眺めつつ、自分なりの答えを持って
教育活動に取り組んでいきたいと思う次第です。

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